金子真人
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経歴
1968年に早稲田大学教育学部数学科を卒業後[2]、設計製図機械を製造する武藤工業に入社[3]。当初は希望と異なる営業部に配属されたが、入社初年度から全国支店のセールスコンペでベスト10に入るなど優秀な営業成績を挙げる[3]。しかし単調な営業の仕事に嫌気が差し、間もなく辞表を提出したが、専務直々に慰留されてコンピュータ開発部門への転属が叶った[3]。当時の武藤工業の製図機械はアナログによるものだったが、コンピュータによる自動製図機械の開発にも乗り出しており、金子も技術者としてこれに携わり、造船・地図作成用の自動製図機の商品化に成功した[3]。
その後、金子は販売した製図機の技術指導のため全国の取引先を回っていたが、機械(ハードウェア)をより効率的に運用できるソフトウェアを求める取引先に対し、会社は「ソフトウェアはサービス」であるとして、そうした要求を軽視しており、金子はその姿勢に疑問を抱き始める。そうした最中の1975年、晴海で行われたビジネス展示会を訪れた金子は、アメリカ合衆国の企業が出展した集積回路製図用のCAD/CAMシステムの精巧さに驚愕する。金子は自社でもシステム開発に乗り出すよう訴えたが容れられず、独立してソフトウェア開発の会社を興すという考えに至った[3]。そして1976年11月、志を同じくした社内の部下4人と共に武藤工業を退社[3][2]。同年12月17日、神奈川県横浜市に「図形処理技術研究所」を創業した[3][2]。この社名はハードウェアとしてのコンピュータではなく、処理技術、つまりソフトウェアを開発する企業であるという明確な意図が込められていた[3]。
ソフトウェアは成長の端緒についたばかりの新興産業であり、その先行きは極めて不透明であったことから、引き抜いた社員については家庭を守る責任のない独身者を選んだという[3]。当初の社屋は神奈川県横浜市磯子区に見出した塗装店の2階にあった[3]。金子は社員らと中古の印刷機で刷ったホチキス留めの事業説明書を携えて会社回りを続けたが、CAD/CAMシステムについての社会的認知は乏しく、最初の半年ほどは全く相手にされなかった[4]。武藤工業で築いた人脈も「武藤工業の金子真人」ではなくなったことで役に立たなかったという[4]。
400にも上る会社から断られ続けた末、電子回路の焼き付け原版を製造する中堅企業・進映社よりはじめての発注を取り付け、半年後に納入。この「CR-1000」は日本国内で製造された最初のCAD/CAMシステムであった[4]。そして進映社を通じて、図形処理技術研究所の名はエレクトロニクス系企業の間で徐々に広まっていった[4]。それでも当時は多くの企業にとって「聞いたこともない会社」であり、両者の接触は、企業が信用調査を依頼した興信所からの面接要求という地点からの出発であった[4]。金子は松下電器産業、ソニーといったエレクトロニクス先進企業の技術者に接触して「CR-1000」についての意見を求め、汲み取ったアドバイスを基に、1978年6月に改良版「CR-2000」を発売。このシステムはケンウッドをはじめ、意見を求めた松下、ソニーにも採用されたことで大きな注目を集め、図形処理技術研究所の経営基盤確立に大いに貢献、10年以上に渡り主力商品であり続けた[4]。
1980年頃からは「CR-2000」を擁してアメリカ進出を図り、製品開発に使用していたプロッターを生産するカルコンプ日本支社長の勝部迅也を営業本部長として迎え入れる。そして勝部を通じてヒューレット・パッカード (HP) との業務提携を取り付け、アメリカでの販路を開拓した[5]。1983年にはより積極的な販路拡大に取り組むため、現地法人「ズケン・アメリカ」を設立。1985年には日本でも商号を「図研」に改めた[3]。1988年には、アメリカで広く普及していたオペレーティングシステム (OS)・UNIXを用い、移植性の高いプログラミング言語・C言語で開発した「CR-3000」でIBMとのOEM契約(相手方ブランドによるソフトウェア販売)を勝ち取った[5]。
その後も図研は順調に成長を続け、1991年10月、株式公開し東証二部上場を果たす。このとき金子は約400人の社員に50株ずつを無償で贈与した[6]。さらに1994年9月には東証一部上場企業となった[7]。
2004年、ハワイのマウイ島にあるゴルフ場を1250万ドルで購入し、4000万ドルをかけて改装し、愛馬の名前を冠した「キングカメハメハ・ゴルフ・クラブ」をオープン(開業は2006年)[8]。
2020年4月1日、図研の社長を退任し、代表取締役会長に就任。
注釈
出典
- ^ 『週刊東洋経済』2016年3月12日号、p.82
- ^ a b c 島田 (2007) p.65
- ^ a b c d e f g h i j k 鶴蒔 (1994) pp. 54-67
- ^ a b c d e f 鶴蒔 (1994) pp. 67-79
- ^ a b 鶴蒔 (1994) pp. 112-121
- ^ 鶴蒔(1994)pp.207-209
- ^ 鶴蒔(1994)p.249
- ^ Maui course tees it up for the wealthy/Pacific Business News
- ^ “サトノダイヤモンド、ダービー制覇ならず! 投資 経済ニュースの新基準”. 東洋経済オンライン (2016年5月29日). 2017年8月31日閲覧。
- ^ 江面(2017)p.265
- ^ a b c 『優駿』2004年7月号、pp.17-18
- ^ 内海裕介 (2015年11月2日). “金子真人氏「8大競走」完全制覇!”. ZAKZAK(夕刊フジ). 2016年6月3日閲覧。
- ^ 『追悼ディープインパクト』p.87
- ^ “【札幌記念】ソダシの金子真人オーナーはJRA重賞100勝達成 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2021年8月22日閲覧。
- ^ “ブラックホーク JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ a b “クロフネ JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ a b “トゥザヴィクトリー JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ “ユートピア JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ a b “キングカメハメハ JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ a b c “ディープインパクト JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
- ^ a b c “カネヒキリ JBISサーチ”. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2020年12月14日閲覧。
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- ^ “ブラックタキシード”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “シルヴァコクピット”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
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- ^ “ホットシークレット”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
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- ^ “ブルーイレヴン”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “サイレントディール”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ロッキーアピール”. JBISサーチ. 2021年1月25日閲覧。
- ^ “ブラックタイド”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ホオキパウェーブ”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ピカレスクコート”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ユキチャン”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ムードインディゴ”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “フォゲッタブル”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “メテオロロジスト”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ボレアス”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ピイラニハイウェイ”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ストローハット”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “カミノタサハラ”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “デニムアンドルビー”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “パッションダンス”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “ウリウリ”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “フルーキー”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “マウントロブソン”. JBISサーチ. 2016年6月3日閲覧。
- ^ “シャケトラ”. JBISサーチ. 2017年6月28日閲覧。
- ^ ボッケリーニJBISサーチ、2023年6月3日閲覧
- ^ “フリームファクシ”. JBISサーチ. 2023年2月5日閲覧。
- ^ 『優駿』2007年5月号、p.90
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