科学的方法 プロセス

科学的方法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/27 08:13 UTC 版)

プロセス

科学的方法のプロセスには、例えば、PDCA(plan-do-check-act cycle)や、武谷三男[40][41] の「三段階論」などがある。

PDCA

PDCA流に考えると、科学的な方法のプロセスは、おおざっぱにいえば「仮説の構築」と「その検証」の延々たる繰り返しとみなせる[15]

「仮説をたて、検証し、次の計画に反映する」思考様式は広く一般化されており、プロジェクトマネジメントにおいては、PDCAサイクルという名前で、一般のプロジェクトの管理に加え、研究開発や国の大型研究プロジェクト等の大局的な管理において基本となる考え方として受け入れられている[42]。見方を変えると、科学的な方法のプロセスは、多重の入れ子構造となったPDCAサイクルと見ることもできる[注釈 6]

科学的方法のプロセスを具体的にしたものの、一例を以下に示す[2][5][43][44][26] [45]。細かい説明は、文献によって異なるが、一般論としては問題発見から結論の公表までのプロセスに以下のような要素が含まれると考えてよい。

  1. 先行研究のリサーチ:何が分かっていないのかを明らかにし、リサーチクエスチョンの抽出や仮説の構築の手がかりを得るために自分の知りたいことを解明するために行う文献調査のこと。必要に応じ、有効な手法や、自分の結果と比較、参照する上で有益なデータがないかを調べる。
  2. 仮説の構築 :先行研究のリサーチ、場合によっては以前の予備実験の結果等を再評価すことでリサーチクエスチョンを明確化し、これを検証可能な命題(仮説)に落とし込む
  3. 実験の計画・準備:仮説の具体的な検証方法、検証計画を立案し、実際の実験の準備を行う。
  4. 予備実験、基礎検討及びその解析:リサーチクエスチョンの抽出や仮説の構築、モデルの構築、オーダーエスティメーション、実験の問題点などの評価、最適条件の探索のために行う実験および評価・解析、理論的検討等。
  5. 解析、整理:実験のデータを、処理、整理することで、仮説との論理的な関係を明確にする。
  6. 実証実験 :仮説がおおむね正しいことがわかった段階で行う、仕上げ的な実験。Nを稼ぐことにより信頼性を上げることや、デモンストレーションを前提とする。
  7. 論文執筆、公表 :研究の結論を、すでに得たデータや、理論的な考察に基づき論理的に立証したうえで、その過程を公知化する。

ここで、リサーチクエスチョンとは、研究全体を貫く「問い」のことである。言い換えれば、「明らかにしたいこと」そのものである。

大学教養課程未満では教育課程では正則的なループを想定した課題が与えられることが多い。つまり(1)-(6)までのループを何度か繰り返したあと、(7)に至る、といった極めてオーソドックスな流れが想定されている。例えば2007年前後に出版されている文部科学省高等学校検定教科書の課題研究の欄や、学部レベルの学生実験の教科書[26]には概ね「(1)-(6)までのループを何度か繰り返したあと、(7)に至ると」ことを勧める記述がある。

プロの研究者のレベルにおいても、一つ一つの行動は、概ね上の要素に還元できる[43]。しかし、プロのレベルは、試行錯誤が迷走する可能性の高いレベルの高いテーマを扱うことが多いことや、いくつかの仮説を並行してテストできるようなスケジュールを組むこと、いくつかの項目を同時並行的に行うが多いため、変則的になってくる。

また、プロの研究者のレベルにおいては、論文では、IMRAD型のように、あたかも「まず先に解答を思いえがき、それからそれをささえる事実をさがし始めた」かのように記載するが、現実には検証よりもむしろ仮説構築に労力を割いている。単なる検証であれば、学生やテクニシャンに任せている場合も多い。

研究者にとっては、仮説構築のプロセスこそ重要であるが、この部分については、統一的な見解はなく、散逸的、専門的(必ずしも全読者に必要とは限らない)であるため、「#現実の研究プロセス」の節において後述する。

武谷三男の「三段階論」

理論物理学者の武谷三男は、科学理論の進展は以下の現象論、実態論、本質論の三段階を経ると考えた[40][41]

  1. 現象論:個々の事象の知識を集める段階。
  2. 実体論:少数の実験結果に対して当てはまりのよい理論を作る段階。
  3. 本質論:統一的な視座から物事を説明する段階。

三段階論は、主に科学の一つの領域の進展を考察したものであるが、現象論的な知識が十分ではなくて直ちにその原因を思惟するとき形而上学に陥るという点においてなど、個々の一研究(一つの論文レベル)についても学ぶところが多い考え方である。







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