温帯低気圧 シャピロ・ケイサー・モデル

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温帯低気圧

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/31 04:46 UTC 版)

シャピロ・ケイサー・モデル

ノルウェー学派のモデルは地上観測から構築されたモデルであるため、高層観測や気象衛星による観測が発達してくるといろいろな面で問題が指摘されるようになった。閉塞前線は実際に観測された例も少なく、実在性が疑われていた。気象衛星からの観測データもノルウェー学派が提唱するような空気の流れだけでは、説明しにくい点が指摘された。そこで1980年代にアメリカを中心に温帯低気圧の詳細な観測が行なわれ、その結果の集大成として1990年にメルヴィン・シャピロとダニエル・ケイサーによって提案されたのがシャピロ・ケイサー・モデルである。

ノルウェー学派モデルとの違い

ノルウェー学派モデルでは温暖前線と寒冷前線は低気圧の中心で連続していたが、シャピロ・ケイサー・モデルでは低気圧の発達がはじまると温暖前線と寒冷前線が分離する。これを前線の断裂という。

温暖前線は低気圧の発達が進むにつれて低気圧の中心の北側を通って南西側に伸びていく。この低気圧の西側に伸びた温暖前線を後屈温暖前線という。寒冷前線は低気圧の中心の南側から南西へと伸びる。ちょうどこの形がTボーンステーキの骨の部分のようであるからTボーン前線という。ノルウェー学派モデルでは後屈温暖前線の部分は閉塞前線と解釈される。低気圧の中心の位置がノルウェー学派モデルでは閉塞前線の末端である(T字の横棒の左端)であるのに対し、シャピロ・ケイサー・モデルではT字の交点付近であるという違いがある。

さらに発達が進むと低気圧の渦にそって後屈温暖前線が低気圧の中心に巻き込まれていく。寒冷前線はそのまま南東に移動していく。ノルウェー学派モデルではこの時期の低気圧の中心は寒気団内の渦であるが、シャピロ・ケイサー・モデルでは寒気団内に切り離された暖気塊の渦であるという違いがある。

どちらのモデルが正しいのか

シャピロ・ケイサー・モデルが提案された後にさらに多くの低気圧が観測され、また計算機によるシミュレーション実験が行われた結果、ノルウェー学派モデルに近い低気圧も存在することが確認されている。そのため、ノルウェー学派モデルとシャピロ・ケイサー・モデルはどちらが正しいというようなものではなく、違いのある2種類の温帯低気圧像を示したものと解釈されている。








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