海底軍艦 (映画)
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製作
東宝プロデューサーの田中友幸は、原作の映画化は少年のころからの夢であったと述べている[56][注釈 11]。田中は、宇宙を舞台にした続編を構想しており、後に『惑星大戦争』で実現させた[56]。田中は本作品に登場する「神宮司八郎」の名を気に入り、自らのペンネームにもしている。
脚本の関沢新一は、「『海底軍艦』は子供のころに読んで、とにかく“ロマン”というイメージがあった。現代の設定に置き換えるに当たり、このロマンをどう描くか考えた」とコメントしている[58]。やはり原作どおりの「ロシアが敵役」などの設定は時代的に無理ということから敵を架空のムウ帝国と設定し、自身が戦時中に伝え聞いた、南方前線での寄せ集めの機材による戦闘機建造の体験をベースに、骨太のストーリーを構築している[58]。
関沢は、海軍の軍人は普段油まみれでヨレヨレの格好でも礼装用の白い水兵服を残していたという実体験から本作品にもそのイメージを取り入れたが、実際の作品では終始礼服を着たままになっていたことが残念であったと述べている[58]。
ムウ帝国皇帝役の小林哲子は、小林が出演していた映画『恐怖の時間』の撮影現場を見た本多猪四郎により起用された[59]。本多は、ひと目見て皇帝役の成功を確信したといい、実際に撮影では小林自ら化粧を考えるなど熱心に取り組み、役に対する考えがしっかりしていたと評している[37]。
監督の本多猪四郎は、自身の従軍経験から戦時中の思想を残した神宮司の心情は理解できるものの、その主張をつきつめていけばムウ帝国と同じになってしまうため、神宮司の立場から描くことはできなかったと述べている[37]。また、脚本では轟天号の発進時にムウ帝国へ出撃することで真琴らを見殺しにする可能性を議論する場面が存在したが、本多はこれをカットしてストレートに出撃する場面とし、神宮司と楠見を対立させるならばもっと踏み込んだ描写にしなければ観客は納得しなかっただろうと述べている[37]。
特撮
前年からこの年にかけ、東宝では本作品以外にも『太平洋の翼』『青島要塞爆撃命令』『マタンゴ』と特撮の比重の大きな作品が続けざまに組まれており、円谷英二だけが全ての特撮現場を任じていた円谷組特撮班の撮影スケジュールは、過密状態となっていた。さらに本作品は、頓挫した作品の代替として製作されたため、当時の東宝特撮の正月映画としては本作品の特殊撮影のスケジュールは約2か月[注釈 12]と、やや短めである[注釈 13][出典 25]。
円谷は過密な撮影スケジュールを鑑み、戦時中に円谷門下だった川上景司をB班監督に起用することで対応している[出典 26]。川上は円谷と決別して松竹映画に引き抜かれていったという過去を持つが[39]、円谷はまったく意に介せず、翌年には円谷特技プロダクションのスタッフに招いたため、その度量の広さは関係者の語り草となった。さらに前年に特殊技術課に配属されたばかりの中野昭慶がC班を担当した[39][13]。
水中シーンの撮影には、青く塗ったセットを海底に見立て、カメラの前に水槽を置いて撮影する疑似海底と呼ばれる手法が用いられた[61]。セット内にはスモークを焚いており、海中の光を演出するためパラフィンを用いて波の揺らめきを表現している[61]。
丸の内崩壊シーンの冒頭にマンホールの蓋が蒸気で吹き飛ぶカットでは、マンホールの蓋を軽いウエハースで作って撮影した。陥没シーンは、セットを組んだ台座の支えを一気に引き抜いて大規模な破壊を描写している[出典 27]。美術助手の井上泰幸は、同シーンのセットは自身が携わった東宝作品の中で最大のものであったと述懐している[62]。
ムウ潜航艇の怪光線により爆破される船舶は、ミニチュアの数カ所に仕掛けた爆薬を一度に爆破することで、一撃で船全体が爆発したかのように見せて破壊力の大きさを表現している[7]。
ラストシーンの海上爆発は、カメラを上下逆にして水槽に絵の具を落とすことで表現しているが[出典 28]、従来の作品よりも絵の具の量を多く使っており、水面に反射することで立体的に描写している[7]。特撮班カメラマンの富岡素敬は、ゴジラより撮影が難しかったと述懐している[61]。
人工衛星のカットには、『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』の宇宙ステーションの映像が流用されている。
注釈
- ^ a b c d ノンクレジット
- ^ 資料によっては、「6,500t」と記述している[24]。
- ^ 書籍『動画王特別編集ゴジラ大図鑑』では、名称をムウ戦闘服と記述している[19]。
- ^ 資料によっては、伊東刑事と表記している[6][41]。
- ^ 東宝公式サイト映画資料室では、天野三郎一等兵曹と表記している[6]。
- ^ 当時の東宝の宣伝用プレスリリースには、藤中尉役を南道郎名義のものがある。また宣伝用ポスターでは、藤中尉役が空欄のものがある。
- ^ 書籍『東宝特撮映画全史』では、光国海運社員と記述している[40]。
- ^ 書籍『東宝特撮映画大全集』では、轟天建武隊軍曹と記述している[14]。
- ^ 書籍『特撮円谷組 ゴジラと、東宝特撮にかけた青春』では、役職を「メカデザイン」と記述している[11]。
- ^ 轟天号やムウ帝国人の衣装デザイン画が残されている[55][39]。
- ^ ライターの浦山珠夫も、原作は田中や円谷、本多ら明治生まれ大正育ちの人々の少年時代の原点であったのだろうと評している[57]。
- ^ 資料によっては、「50日程度」と記述している[13]。当時の平均は3か月。
- ^ 本編撮影は従来通り約1か月。
出典
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出典(リンク)
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