所得税法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/23 07:12 UTC 版)
所得分類論
所得分類の機能
所得分類は各所得の金額計算方法の違いによってタックス・シェルター(所得種類の転換によって所得税の軽減、排除を図る措置)の余地を生むことになる。しかし、損益通算の法定順序や制限と結びつくことで費用、損失の彼此流用(タックス・シェルターの1種)を防ぐことができる。
所得分類の根拠
所得税は総合課税の方法をとっている一方で、所得分類という分類所得税的な制度を組み込んでいる。
- 担税力の差異
- 所得は種類によって担税力が異なるという考え方。所得を勤労所得(給与、退職)・資産所得(利子、配当、不動産、山林、譲渡など)、資産勤労結合所得(事業など)に分けた時、源泉の安定性ゆえに資産所得が最も担税力が強く、源泉の不安定性から勤労所得が最も担税力が弱いとする(資産所得重課、勤労所得軽課)。
- この考え方の元には、資産所得は時間の経過と共に何もしなくても確実に収入が入るため、それに加え勤労所得を得ることができる一方で、勤労所得は労働者の健康や生死に左右され、収入を子孫に相続できないという前提があるとされている[7]。
- 経済的利益を所得として構成する包括的所得概念論、純資産増加説と親和性が高い。しかし現実には所得発生の原因に即して柔軟に対応することが求められる。
- 費用控除
- 所得には包括的な費用控除が認められる独立的継続的な営利活動による所得(不動産、事業、山林など)と部分的にしか所得控除が認められない所得がある。
- 源泉徴収、予定納税
- 所得税は利子、配当、給与、退職には所得分類を前提に源泉徴収制度を定めており、源泉徴収可能性が所得分類の中で考慮されている可能性がある[8]。予定納税制度も所得分類を利用している。
- 最適課税論
- 資源分配の効率性の観点から市場に中立的な課税要素として、資本、労働など生産要素の異なる供給弾力性に反比例する課税方法を取るべき(課税によって供給が減る要素への課税を低くするべき)とする考え方。担税力の差異を重視する考えとは逆の結論(資産所得軽課、勤労所得重課)になりやすい。
- 日本の所得税法とは理念が異なるが、現実の税法では北欧の二元的所得税と親和性が高い。
注釈
- ^ 調整所得金額に対する1号税額の割合。
出典
- ^ 谷口勢津夫『税法基本講義』第2版171ページ
- ^ 増井良啓『租税法入門』87ページ
- ^ 所得税法 (明治20年3月23日勅令第5号)は、廃止
- ^ 第48国会衆議院会議録第1号 1965年2月26日
- ^ “第113回国会 衆議院本会議 第8号 (昭和63年9月22日)所得税法等の一部を改正する法律案の大蔵大臣の趣旨説明”. 国会会議録検索システム. 国立国会図書館 (1988年9月22日). 2020年1月31日閲覧。
- ^ 所得税法等の一部を改正する法律(昭和63年12月30日法律第109号)
- ^ 増井91ページ
- ^ 谷口233ページ
- ^ No.2029 確定申告書の提出先(納税地)|国税庁
- ^ No.2532 給与等に係る源泉所得税及び復興特別所得税の納税地|国税庁
- ^ No.2011 課税される所得と非課税所得|国税庁
- ^ 谷口勢津夫『税法基本講義』第2版225 - 230ページ
- ^ No.2220 総合課税制度国税庁
- ^ 谷口272ページ
- ^ a b No.2250 損益通算|所得税|国税庁
- ^ 第7節 損益通算及び損失の繰越控除 - 所得税法(令和2年度版)|税大講本|税務大学校|国税庁
- ^ 谷口304ページ
- ^ 谷口305ページ
- ^ 申告納税者の所得税負担率(平成19年分) 国税庁「平成19年分申告所得税標本調査(税務統計から見た申告所得税の実態)」より
- ^ 国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)
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