危機管理 6つの段階

危機管理

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 20:47 UTC 版)

6つの段階

通常は以下の6段階より構成される。

  1. 予防:危機発生を予防する
  2. 把握:危機事態や状況を把握・認識する
  3. 評価
    • 損失評価:危機によって生じる損失・被害を評価する
    • 対策評価:危機対策にかかるコストなどを評価する
  4. 検討:具体的な危機対策の行動方針と行動計画を案出・検討する
  5. 発動:具体的な行動計画を発令・指示する
  6. 再評価
    • 危機内再評価:危機発生中において、行動計画に基づいて実施されている点・または実施されていない点について効果の評価を随時行い、行動計画に必要な修正を加える。
    • 事後再評価:危機終息後に危機対策の効果の評価を行い、危機事態の再発防止や危機事態対策の向上を図る[3]

歴史

ドイツが第一次世界大戦での敗戦で莫大な賠償金の支払いを迫られたときのRisikopolitikという用語が、やがて、英語圏でのRisk managementとなって、1929年の世界恐慌時には保険業界での危機事態を中心に使用された。

日本
1950年代には日本へも経済概念としてのリスクマネジメント(Risk management)がアメリカ合衆国から導入され、その後、1970年代には広く日本語の「危機管理」と訳されて、経済危機以外にも防災や防犯のための用語として用いられるようになった。
1980年代以降は、日本での危機管理は、英語圏でのRisk managementと同様に国家間の安全保障といった政治用語や軍事用語として定着した[3]。また、日本国内では、大企業を中心に、このころから徐々に企業内部での非日常的な危機事態への対処の必要性から危機管理が求められるようになった。その一環としての対応計画(Contingency plan)が平時から作られるようになり、西暦2000年問題では中小企業まで危機管理が求められた。
中国
2021年、河南省鄭州市の洪水被害時に、複数の有志によってネット上で『救命文档』が作成され被災者の情報、支援を受けられる場所などの情報が刻々とアップデートされた[4]

クライシスマネジメントとリスクマネジメント

日本語ではクライシスマネジメント(Crisis management)とリスクマネジメント(Risk management)の2つは「危機管理」として一本化されて扱われていることが多い。確かに両者の概念には重なる部分もあるが、以下の違いがある。

クライシスマネジメント
危機事態の発生後の対処方法に関する点が概念の中心である。
リスクマネジメント
危機事態の発生を予防するためのリスクの分析方法等が概念の中心である[3]

これとは別に、不可抗力的な天災や大規模災害への対応にあたり被害の最小化を検討するイマ―ジェンシー・マネージメント(emergecy management)も危機管理として訳されることがある[5]。これに対してクライシスマネジメントは、「人災」の際たるものである国際危機に対して利害調整をどのように行うかに焦点がおかれている。


  1. ^ 木村汎『国際危機学』(世界思想社2002年)参照。
  2. ^ 近藤敦・玉井良尚・宮脇昇「ゲーミング&シミュレーションの開発を通じた国際公共政策の理解と学習」『政策科学』23巻4号、2016年, 229-245頁
  3. ^ a b c 高井三郎著 『現代軍事用語』 アリアドネ企画 2006年9月10日第1版発行 ISBN 4384040954
  4. ^ No.130 救命文档&踩雷_中国国際放送局”. japanese.cri.cn. 中国国際放送局. 2022年8月22日閲覧。
  5. ^ 「危機管理」『国際政治事典』弘文堂、228頁


「危機管理」の続きの解説一覧




危機管理と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「危機管理」の関連用語

危機管理のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



危機管理のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの危機管理 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS