単葉関数 単葉関数の概要

単葉関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/07 09:56 UTC 版)

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基本的な性質

定理 (単葉正則関数の基本定理)

を複素平面のある連結領域 D で定義された正則関数とし、その微分 で表す。

(1) D で単葉であれば D である。
(2) D の点 であれば、 の近傍 U を、U が単葉になるように選ぶことができる[1]

証明

(1) Dが単葉正則であるが、零点が存在すると仮定して矛盾を導く。

まず、 の零点の内の一つを任意に選んで とする。 の近傍 U を、その閉包 コンパクト となるように選ぶ。

この仮定の下では、 の零点の個数は有限である。なぜなら、零点が無限個存在するとすれば、ボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理により において全ての零点の集合は少なくとも1個の集積点を持つことになり、一致の定理から U となり、 は単葉正則という仮定に反するからである。

U 以外に零点が存在する場合は、閉包がその零点を含まないようにUを選び直す(このような操作は零点が有限個であるから可能である)。

と置けば である。従って における の位数は2以上で、これを とすれば と置くことができる。

上で零点を持たず、また はコンパクトであるため、 を満たす複素数 を任意に選べば、ルーシェの定理から U における の位数を含めた零点の個数はともに となる。

について、 であり、U 以外に零点を持たないので、 U における の零点の位数は1である(重根を持たない)。したがって Uで位数1の相異なる零点を 個持つことになる。

以上から、U で同じ値となる点を複数持つことになり、D で単葉であるという仮定に反する。

(2) と置き、(1) と同様にして、 の近傍 U を、 がコンパクトで、その上では のみが の零点となるように選ぶ。

であるから の1位の零点である。

上で零点を持たず、また はコンパクトであるため、 を満たす複素数 を任意に選べば、ルーシェの定理から U における の零点の全位数は共に1である。

すなわち、 となる点が U においてただ一つ存在する。 と置けば、V 上で および は単葉である。

を複素平面のある領域 D で定義された単葉正則関数とすれば、 は単葉正則な逆写像 を持ち、連鎖律から、

となる。

関連する定理

単葉関数と関連する重要な定理がいくつか知られているが、ここでは次の一例のみを紹介する(この定理はリーマンの写像定理を証明する際に必要となる)。

定理 (単葉正則関数の収束定理)

複素平面のある領域 D で定義された単葉正則関数の列 { fn(z) } ( ) が f (z) に広義一様収束するのであれば、f (z) は D で単葉正則関数かまたは定数となる。

証明

まず、 { fn(z) } が単葉正則関数であっても f (z) が定数となる例として fn(z) = z / n がある。当然 f (z) は定数 0 となる。

次に、 Df (z) が定数でも単葉関数でもないと仮定する。この場合、少なくとも、f (z1) = f (z2) = α となる D 内の異なる2点、z1z2 が存在するはずである。

gn(z) = fn(z) − α、g (z) = f (z) − αと定義すれば、 { gn(z) } は D で定義された単葉関数の列であり、g (z) に広義一様収束する。

z1z2 を含み、その閉包 D に含まれる有界な領域 を選ぶことができる。 は有界な閉集合としてコンパクトであり、 { gn(z) } はg (z) に一様収束する。

上の仮定の下では、g (z) の零点の個数は有限である。なぜなら、零点が無限個存在するとすれば、はコンパクトであるからボルツァーノ=ワイエルシュトラスの定理により全ての零点の集合は少なくとも1個の集積点を持つことになり、一致の定理から g (z) は D で 0 となるが、これは f (z) が定数でないという仮定に反するからである。

の境界 上に g (z) の零点があると都合が悪いので、そのような場合にはの内側に、z1z2 を含み、しかもその境界上に g (z) の零点が来ないように領域を取り、これを改めて とする(このような操作は g (z) の零点が有限個であるから可能である)。

g (z) は に零点を持たず、また はコンパクトであるから、 上の|g (z) | の最小値は正数である。これをεとする。 { gn(z) } はg (z) に一様収束するから、ある N が存在して nN であれば |gn(z) − g (z) | < εとできる。

従って、 n が十分大きな自然数であれば、 上で |g (z) | > |gn (z) − g (z) | とでき、ルーシェの定理により での gn (z) と g (z) の零点の個数は一致するはずであるが、gn (z) は単葉関数であるから零点の個数は高々1であり(上記基本定理から単葉正則関数の微分は 0 にならないのでその零点の位数は1である)、一方 g (z) のそれはz1z2 を含めて2以上であるから矛盾である。従って、 Dg (z) は定数でなければ単葉関数であることになる。




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