レコーディング・エンジニア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/06 07:51 UTC 版)
概略
レコーディング・エンジニアの第一の責務は、レコーディングにおいて歌や演奏を的確によりよい音で録音することにある。エンジニアという専門職が必要とされるのはスタジオとコントロール・ルーム内にミキシング・コンソールや各種エフェクター等の電気または電子的音響機器が数多く介在し、それらハードウェアをエンジニアリングするからであり、音楽の知識・素養、機材の使い方だけではなく、最低限の電気工学や音響工学などの専門知識も必要とされる。
そして、エンジニアは録音音源となる歌手や楽器と最も近い立場にいることから、音楽家、音楽プロデューサー、ディレクターらが求める音質及び音楽性を把握し、信頼関係を構築し円滑なコミュニケーションをとる能力も必要とされる。特にミキシングはエンジニアの個性や感性が最も顕著に表れる作業であり、この善し悪しでエンジニアが選定されることが多い。
音楽への関わり方は人によりけりであるが、あくまでもミキシングなどのエンジニアリングに特化した活動をする人もいれば、歌手や音楽家にディレクション的アドバイスを送ったり、より積極的にプロデュースを兼ねた参加方法で音楽に関わる人もいる [注 2] 。また、オリジナル版を完成させたミキシング・エンジニアとは別の自由な立場で音源を作り替えたりするリミックスを手がける事もあり、その分野で活躍しているエンジニアの事は「リミキサー」または「リミキシング・エンジニア」と呼称されている。
稀な例だが、アラン・パーソンズやリー・ペリーなどのようにスタジオのエンジニア出身でありながら、作曲・プロデュース・編曲・演奏などもこなし、音楽家として活動している人も存在する。逆に、元々プロデューサー、音楽家、歌手などであってもエンジニアリングを学び、レコーディング、ミキシングのエンジニアリングをこなす人も存在する。大瀧詠一やトム・ショルツなどは音楽家でありながらエンジニアの役割を担っている [注 3]。
レコーディング作業においてレコーディング・エンジニアの補佐的作業やマルチトラック・レコーダーの操作などを受け持つフリーランスまたはスタジオなどに所属する「アシスタント・エンジニア」または「セカンド・エンジニア」も音楽制作業務に関わる分類分けとしては、レコーディング・エンジニアとして分類される。
注釈
- ^ 単に「エンジニア」または「ミキサー」と呼ばれることもある。
- ^ エンジニアの立場に飽き足らず、エンジニアリングと兼務してプロデューサーやディレクターとして活躍の場を広げる人もいる。
- ^ 従来は稀な例であったが、近年では安価で高音質なDAWなどのデジタル録音機器が普及したことで、低予算のプロジェクトではアーティストやアレンジャーなどがエンジニアリングを兼務することも多くなっている。エレクトロニカのような音楽と音響が一体化したDJ分野でも同様である。
- ^ 詳しくは録音を参照。
- ^ 詳しくはミキシングを参照。
- ^ 詳しくはマスタリングおよびマスタリング・エンジニアを参照。
- ^ これは様々なハードウェアで構成されているミキシング・コンソール及びその他周辺機器の電気的知識や操作方法を熟知していなくても、DAWインターフェース内に展開されるソフトウェア上のミキシング・コンソール操作は可能になる状況から、一般的なスタジオでのレコーディング・エンジニアリング経験が無くともレコーディングやミキシングがDAW上で容易に行えるようになってきたという背景もある。
- ^ 数少ない例としては、日本では杉本一家(JVCケンウッド・クリエイティブメディア。マスタリングと兼業)など。
出典
- ^ “大学における実践的な技術者教育のあり方に関する協力者会議(第3回)検討課題(案)”. 文部科学省 (2009年12月7日). 2018年10月5日閲覧。
- ^ “第5回 米国 エンジニアとテクニシャン”. 連載:[海外]グローバル体験. 一般財団法人 アーネスト育成財団. 2018年10月8日閲覧。
レコーディング・エンジニアと同じ種類の言葉
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