ラリー 競技車輌(ラリーカー)

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ラリーの解説 > 競技車輌(ラリーカー) 

ラリー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 20:22 UTC 版)

競技車輌(ラリーカー)

MINIのような小型車は古くからラリーで好まれ、テクニカルなコースでは大排気量勢をしばし打ち破った

多くの場合サーキット専用に設計・製造されるフォーミュラカー(F1マシンなど)とは異なり、ラリーカーは自動車メーカーが量産する市販の公道車をベースにして、認められる範囲内で競技用の改造を行なう(ただしWRCのラリー1規定を除く)。メーカーが国際自動車連盟 (FIA) や日本自動車連盟 (JAF) のようなモータースポーツ統括団体に対して申請を行い、ホモロゲーション(公認)を受けたモデルをベース車両にすることができる。公道を走行するので、改造の際はある程度競技国の安全基準を満たす必要があり、競技中もナンバープレートをつけて走行する。

FIAが公認するラリーカー向けの規定はグループAグループRally(旧称グループR)、グループNグループR-GTグループB(現在廃止)などがあり、それぞれベース車の年間生産台数、エンジン形式、排気量、過給器の有無、駆動方式(2WD/4WD)といった細かな条件が指定されている。グループによって改造許容範囲は異なるが、市販車に近い状態に留めて性能とコストを抑えようとすると、高性能4WDスポーツカーを量産できる(=4WD車が多く売れる市場と顧客を持っている)メーカーだけに偏りやすい。そのためトップカテゴリでは、車種やエントリー台数を増やすために改造範囲を広くし、普通の大衆車でも参加できるようにするのが一般的である。WRカースーパー2000グループR5AP4などの規定がこれに相当する。2022年から施行されたWRCトップカテゴリのラリー1規定では、市販車の骨格すら用いる必要が無くなっており、市販車のラインナップや特性に左右されない開発が可能となっている。

現代のトップカテゴリのラリーカーのベース車両は、小回りの良さやコスト、メーカーの招致などを鑑みてCセグメント以下のハッチバック型小型車が採用される。20世紀までは高速域でのハンドリングに優れるクーペセダンがベース車として好まれた時代もあったが、シャシー技術の進歩や全幅の拡大化の許容などもあり、小型車でも高速域で戦えるようになった。近年は乗用車化の著しいクロスオーバーSUVをベース車とする例も増えている。FIA格式のアフリカラリー選手権や、欧州の一部のラリーでは、通常ラリーレイドにしか用いられないサイド・バイ・サイド・ビークル(S×S)が出走可能な場合もある[10]

ルノー・クリオR3の内装

ベースカーからの大きな仕様変更点として、乗員の安全を守るロールケージ、4点式シートベルト、車載消火器などは装備が義務付けられる。ボディの外観はベースカーから大きく変更できないが、ボディ底面を守るアンダーガード、マッドフラップ、リアウィング、夜間走行用のライトポッドなどは公認された部品を装着できる。内装は軽量化のため後部座席や遮音材、エアコンなどを取り外して簡略化している(ただし助手席はナビゲーターの席として必要となる)。ラリーではサイドターンを駆使するため、電動式の普及で市販車に設定されることが少なくなったハンドブレーキバーが現在でも活躍している。また、パンクやクラッシュに備えてスペアタイヤと工具を積む必要がある。このため同タイプのサーキット用のレーシングカーに比べると総重量は重くなる。

時間や距離を表示する計測機器も多数取り付けられており、近年の海外のラリーではGPSで他車との距離やクラッシュ位置の情報も把握できる「セーフティトラッキングシステム」も装着される。

同じくタイムアタックを行う競技のジムカーナに比べると、ラリーカーは安全性と信頼性のために多少重くともきちんとしたボディ補強を施している。また路面の変化やイレギュラー(路面に掻き出された砂利や落ち葉など)に柔軟に対応できる様に、セッティングはジムカーナよりもマイルドにされることが一般的である[11]

エンジンのパワーアップは厳しく規制されており、トップカテゴリではリストリクターを装着して吸気量を制限し、最大馬力を抑える。一方でトルクやエンジン制御(ECU)のチューニングに関しては緩い傾向があり、エンジンの開発はパワー以上にレスポンスやドライバビリティ(運転しやすさ)が重視される。

路面がグラベルかターマックかで、足回りのセッティングや空力パーツは異なる。車高はターマック路面ではサーキット用マシンのように低くする場合もあるが、グラベル路面ではサスペンションストローク量を多く取るため、高めに設定する。


注釈

  1. ^ のちにアルプス山岳部でのタイムアタック形式(SSラリー)に変容するが、往時のスタイルは「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」として現在も開催されている。
  2. ^ TCエリアにはターゲットタイムの1分前まで進入することができない。
  3. ^ 遅着よりも早着の方がペナルティが重いのは、ロードセクションにおける制限速度オーバーを防ぐという理由がある。
  4. ^ あらかじめCPの位置が分かっていると、CPの手前でオンタイムになるよう車速を調節できるため。

出典

  1. ^ ラリーの意味”. コトバンク プログレッシブ英和中辞典(第4版). 朝日新聞社/VOYAGE GROUP. 2017年3月13日閲覧。
  2. ^ a b "HISTORY". スズキWRCチャレンジ
  3. ^ WRC基礎用語辞典「ラリー」 世界ラリー選手権日本語オフィシャルサイト
  4. ^ 『F1と世界のモータースポーツ』138頁。
  5. ^ "ラリージャパンがやってくる!". ニッポンレンタカー. 2014年2月26日閲覧。
  6. ^ 2013国内競技規則 付則 (PDF, ラリー競技開催規定第2条(280頁))
  7. ^ "スペシャルステージラリーの競技規定について (2) ロードセクション". JRCA. 2014年2月25日閲覧。
  8. ^ 『新・実践ラリー入門』36頁。
  9. ^ a b 『新・実践ラリー入門』37頁。
  10. ^ 5. Rally Terra da Auga 2018
  11. ^ AUTO SPORTS 2012年12月13日 三栄書房刊
  12. ^ "ラリーを始めてみませんか". SSER. 2014年2月25日閲覧。
  13. ^ "【動画】ラリークロスの世界戦昇格が決定!". RALLY PLUS NET.(2010年10月9日)2014年2月25日閲覧。





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ラリー」の関連用語

ラリーのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ラリーのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのラリー (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS