ブリュッヒャー (装甲巡洋艦) 防御

ブリュッヒャー (装甲巡洋艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/29 04:55 UTC 版)

防御

本艦の装甲はクルップ鋼製で、舷側装甲は末端部80mm、中央部は180mmに達する重厚な水線部装甲を持っていた。砲塔防御も前盾が180mmあった。水平甲板も70mmあった。しかし、カタログデータには優れるが、防御様式は旧来の装甲巡洋艦と変わらず、舷側の主砲塔2基の真下に副砲の弾薬庫が隣り合う問題があり、後にドッガー・バンク沖海戦において主甲板に34.3cm砲弾2発を被弾した際に、70mmの主甲板を容易く貫いた砲弾は、1発は21cm砲の真下に並べられた21cm砲弾と15cm砲弾を誘爆させ、もう1発は機関区に突入してボイラー室と操舵室を破壊して本艦の喪失の一因となった。間接防御として船体は13室に分かれており、二重底となっていた。

機関

本艦の機関構成は海軍型石炭専焼水管缶18基で本艦のボイラー室はシャルンホルスト級から引き続き横隔壁により5室に分かれており、4基+4基+4基+4基+2基の配置となっており、煙突は1番煙突がボイラー8基、2番煙突が10基を担当していた。本艦が喪失したドッガー・バンク沖海戦において10時37分に1番煙突側の3番ボイラー室への34.3cm砲弾の被弾により高圧蒸気を送る配管に損傷を受け、1番・2番ボイラー室からの蒸気供給を受けられなくなって速力が23ノットから17ノットまで低下した。

推進機関は直立型3段膨張式4気筒レシプロ機関3基を組み合わせた3軸推進でスクリュープロペラの直径は外側の物が5.6mで中央軸は5.3mで異なっていた。要求性能は24.5ノットであったが公試において最大出力38,323馬力で最大速力25.4ノットを発揮し、設計を上回った。燃料は石炭で、2,510トンを満載して12ノットで6,600海里の航続性能があった。本艦の建造時期には列強各国は大型艦に蒸気タービンを採用していたが、機関開発能力の遅れから本艦はレシプロ機関のままとされた。レシプロ機関は航続性能を良好にするが、高速運転の維持に限界があり、後の本艦の喪失の一因となった。

艦歴

ドッガー・バンク沖海戦でイギリス艦隊からの集中砲火を受けて横転沈没するブリュッヒャー。舷側には今まさに飛び込もうとする水兵たちが群がっている。

ブリュッヒャーは1907年2月21日にキール工廠で起工し、1909年10月1日に竣工した。当初はバルト海艦隊に所属したが、北海艦隊に移動した。1914年11月3日にフランツ・フォン・ヒッパー提督が率いる巡洋戦艦ザイドリッツ」「モルトケ」「フォン・デア・タン」と共に本艦はイギリスグレート・ヤーマスへの襲撃に参加した。(ヤーマス襲撃

次いで、1915年1月24日にイギリス海軍の小艦隊がドッガー・バンク付近に現れたことを察知したドイツ海軍は高海艦隊を出動させて迎撃させた。この戦いでは「フォン・デア・タン」が修理のため戦列から離れており、代わりに新型の「デアフリンガー」が加わって「ザイドリッツ」「モルトケ」「デアフリンガー」「ブリュッヒャー」の順となった。これに軽巡洋艦4隻と駆逐艦19隻からなる第二偵察艦隊とともに出撃した。(ドッガー・バンク海戦

この海戦において老朽化による速力低下で本艦はドイツ艦隊の最後尾に位置していたため、初期段階で後方から接近してくるイギリス駆逐艦隊を迎撃できた。速力に勝るイギリス艦隊は急速に接近してきており、最後尾にいた本艦が、旗艦「ライオン」、次に「タイガー」「プリンセス・ロイヤル」から砲撃の目安として射撃目標にされた。9時9分に34.3cm砲弾1発の命中弾があったが、致命傷にはならなかった。この時、本艦は「ライオン」の1番砲塔の上部に21cm砲弾1発を命中させて一時的に主砲塔を故障させた。

その後、交戦距離が縮まったことで本格的な砲戦となって本艦を狙う敵は「プリンセス・ロイヤル」と遅れて戦場に到着した「ニュージーランド」の2隻となった。この後に34.3cm砲弾2発を立てつづけに被弾して機関半減・操舵不能に陥った本艦は左に曲がるしか出来なくなり、次第にイギリス艦隊に近づいてしまった。その後、イギリス艦隊の命令伝達の不備により巡洋戦艦4隻から本艦は集中砲火を受け、最終的にイギリス軽巡洋艦「アリシューザ」からの雷撃により12時13分に横転し、数分後に沈没した。乗員1,026名のうち生存者は艦長含む234名だった。







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