ハプティクス 将来の応用

ハプティクス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/26 06:11 UTC 版)

将来の応用

ハプティクスは今後、人間とテクノロジーの様々な領域での相互作用に関わっていくと考えられる。21世紀初頭の現在は、ホログラムや遠隔のオブジェクトとの触覚による相互作用に熟達することが研究の中心であり、それが成功すればゲーム・映画・製造業・医療をはじめとする様々な産業での応用が生まれる[要出典]。医療業界では仮想手術や遠隔手術が可能になれば、医療の幅が広がる。衣料の小売業界では、インターネット経由で衣服に触ることができれば、インターネット販売の可能性が広がる[31]。ハプティクスが将来発展すれば、従来は現実的でなかった新産業が生まれるかもしれない。

ホログラフィーとの相互作用

東京大学の篠田裕之の研究チームでは、ホログラフィーの投影に触覚フィードバックを加える研究を行っており、2008年に発表した。このフィードバックによってユーザーはホログラムで投影された物体に触っているかのような感覚を得ることができる。この研究では超音波音響放射圧英語版を使って触感を生み出している[20]。ハプティクスはホログラム自体には影響せず、単に触覚を加えるだけである。2008年の時点では、この技術はまだ製品化できていないが、産業界からの反応もある[32]。この技術はユーザーが特殊なグローブなどを装着する必要がなく、通常の姿でそのまま使えるという利点がある[32]

将来の医療への応用

医療の分野では、遠隔手術への応用の研究が進んでいる。現場の看護スタッフがマシンをセットアップし、患者の準備をし、外科医は手術室には行かずに手術するという形になる。それによって専門医の治療を受ける可能性が広がり、専門の外科医がどこにいても働けるようにする。ハプティクスは遠隔手術の際に外科医に触覚フィードバックを提供する。

2003年、スタンフォード大学の研究者らが訓練目的で手術のシミュレーション技術を開発した。手術のシミュレーションにより、外科医や外科の学生がより多くトレーニングできるようになる。ハプティクスは手術のシミュレーションでリアルな触感を生み出すのに使われる。遠隔手術でもシミュレーションでも、リアルな触感がなければメスを入れるのも困難である。計算機科学と外科の教授である J. Kenneth Salisbury Jr. が率いるチームは、手術のシミュレーションのためにリアルな内臓を創りだすことを目標としているが Salisbury はそれが容易ではないと語っている[31]。この研究の背景には、旅客機のパイロットが実際に旅客を乗せる前にフライトシミュレータで訓練するように、外科医も実際に誰かの身体を切る前に訓練できるようにすべきだ、という考え方がある[31]

ランセットに掲載されたボストン大学の論文によれば、靴の内底がノイズのように無作為に振動するようにすると、年齢に従って衰えていくバランス制御が改善するという[33]


  1. ^ Gabriel Robles-De-La-Torre. “International Society for Haptics: Haptic technology, an animated explanation”. Isfh.org. 2010年2月26日閲覧。
  2. ^ Robles-De-La-Torre G. Virtual Reality: Touch / Haptics. In Goldstein B (Ed.), "Sage Encyclopedia of Perception". Sage Publications, Thousand Oaks CA (2009). (PDF)”. 2010年2月26日閲覧。
  3. ^ https://www.google.com/patents?id=uMMtAAAAEBAJ&pg=PA1&lpg=PA1&dq=tactile+telephone+patent+thomas+shannon&source=bl&ots=gLutl2_hTx&sig=MxVX294trpCSeLNghCseRrZtc8A&hl=en&sa=X&ei=3M0sUP-IDOGvyQGXvoCgDg&sqi=2&pjf=1&ved=0CDEQ6AEwAA#v=onepage&q=tactile%20telephone%20patent%20thomas%20shannon&f=false
  4. ^ Rob, Ashwell (2011年12月8日). “Haptic controller chips offer low latency”. EE Times Asia. http://www.eetasia.com/ART_8800648990_480500_NP_3765a2c2.HTM 2012年10月5日閲覧。 
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  6. ^ Moto-Cross at the Killer List of Videogames
  7. ^ Fonz at the Killer List of Videogames
  8. ^ Mark J. P. Wolf (2008), The video game explosion: a history from PONG to Playstation and beyond, p. 39, ABC-CLIO, ISBN 0-313-33868-X
  9. ^ TX-1 at the Killer List of Videogames
  10. ^ 「SideWinder Force Feedback Pro」体感レポート ゲームソフトインプレッション, PC Watch, Impress
  11. ^ Wood, Tina (2007年4月5日). “Introducing the Novint Falcon | Tina Wood | Channel 10”. On10.net. 2010年2月26日閲覧。
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  13. ^ COOL LEAFキーボード第2弾、10月日本発売決定!
  14. ^ Apple、まったく新しいMacBookを発表” (日本語). Apple Newsroom (日本). 2022年2月26日閲覧。 “この新しいトラックパッドは感圧センサーを内蔵し、どこをクリックしても触覚機能フィードバックにより、すぐれた反応と統一された感覚をもたらします。このフィードバックの感覚は、各クリックを設定するときに感圧の度合いを変更することでカスタマイズすることもできます。”
  15. ^ Apple、13インチMacBook Pro RetinaディスプレイモデルとMacBook Airをアップデート” (日本語). Apple Newsroom (日本). 2022年2月26日閲覧。
  16. ^ 新「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」レビュー--13インチ、「Force Touch」トラックパッド搭載
  17. ^ 新「MacBook」の第一印象--刷新されたキーボードやトラックパッドを試してみた
  18. ^ レノボ、薄軽ノートPC「YOGA Slim」にTiger Lakeモデル - 966gのCarbon含む2機種” (日本語). マイナビニュース (2020年12月1日). 2022年2月26日閲覧。 “タッチパッドにはクリックする部分が存在しない代わりに、ハプティクス(触覚)技術によるクリック感を実現している”
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  20. ^ a b Touchable Hologram Becomes Reality (w/ Video)”. Physorg.com (2009年8月6日). 2010年2月26日閲覧。
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  25. ^ Shadow Robot Company: The Hand Overview”. Shadowrobot.com. 2010年2月26日閲覧。
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  28. ^ FreeForm Systems”. Sensable. 2010年2月26日閲覧。
  29. ^ Laurent Mignonneau and Christa Sommerer
  30. ^ Stahl Stenslie Homepage
  31. ^ a b c Haptic technology simulates the sense of touch — via computer”. News-service. stanford.edu (2003年4月2日). 2010年2月26日閲覧。
  32. ^ a b Technology | Ultrasound to give feel to games”. BBC News (2008年9月2日). 2010年2月26日閲覧。
  33. ^ Attila A Priplata, James B Niemi, Jason D Harry, Lewis A Lipsitz, James J Collins. "Vibrating insoles and balance control in elderly people" The Lancet, Vol 362, October 4, 2003.


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