コーディネイターとナチュラル 戦闘用コーディネイター

コーディネイターとナチュラル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 09:55 UTC 版)

戦闘用コーディネイター

プラント理事国の軍部(後の地球連合軍)が兵器として開発した戦闘に特化した遺伝子調整がなされたコーディネイターである。 初期段階では叢雲劾グゥド・ヴェイア等の脱走者を出しており、また一部にはエルザ・ヴァイス等のように軍部の思惑とは外れた用途で作られた人物もいる。 ただしその作成手法は通常のコーディネイターと同等である事から、完全に遺伝子調整通りのスペックを発揮するスーパーコーディネイターとは違い、付与された戦闘の為の遺伝子調整とは明確に異なるスペック…つまり「遺伝子調整に依らない、生まれつきの才能」[注 8]を発揮する事例も比較的多い。

理事国軍部による戦闘用コーディネイター開発の最終段階となったのが「ソキウス計画」と名付けられた計画であり、それによって生み出された者がブルーコスモス台頭以前に作られたソキウスシリーズである。彼等は高度な戦闘能力と共に、服従遺伝子によって生まれついての心理コントロールが施されているため、「ナチュラルのためになること」を最優先としている。これは「意思レベルでナチュラルの為に働けることが喜びとなる」精神構造という形で表れており、また彼等ソキウス個々人の意思にかかわらずナチュラルに対する行動は心理的に抑制され、一般のナチュラルは無論、ナチュラルに危害を加えたり利益にならない相手でもナチュラルであれば、攻撃や妨害などの行動はできない[25][注 9]。彼等は遺伝子改造された受精卵段階で分割され大量に量産された後、大半が胎児の状態で凍結されており[注 10]、今でもそこから解凍し生産すれば全く同じ遺伝子のソキウスを大量に製造可能である。 戦闘用コーディネイターはザフト設立以前から存在し段階的に開発されソキウス計画まで進展していたが、地球連合とプラントの戦争勃発おいて、コーディネイター勢力が仮想敵となった関係から、戦闘用コーディネーター計画全体の開発、運用が中止。結果、ごく一部を除き、地球連合が保有していたソキウスの大半は、ブルーコスモスに関係のある企業に引き取られる処分が取られ、連合のモビルスーツ開発に従事。それでも彼等は「過酷な実験でもナチュラルの為に働ける」ことを喜びながら消耗していき、最終的にコーディネーターと同レベルに強化したナチュラルであるブーステッドマンやエクステンデットにとって替わられることになる[25]。 ただし彼等の中から更に極僅かな脱走者が生き残り、L4の廃墟コロニー群に秘匿されていた「ソキウスのSEED」を手に入れたことで、CE71年以降ソキウスの数自体は増えており、彼等は存在意義である「ナチュラルの為になる」という存在意義の為に、多数が人類社会に溶け込んでナチュラルの為に働いている。

また彼等とは異なり、「一族」で作られた戦闘用コーディネイターにスーがいる。 その作り方は理事国軍部と比較しても徹底しており、理事国軍部が確立した戦闘用コーディネイターの技術を全て注ぎ込むのみならず、開発段階で多くのコーディネイターの遺伝子サンプルをベースにし、さらに基本的な人間としての機能すら戦闘に不要であれば排除され、本来人間が持たない機能すら肉体強化のために追加する等、人間の範疇を逸脱した、正気の沙汰とは思えないレベルでの遺伝子改造を施されている。 それによって製造された、長い四肢、物理的に撓る腕、内臓が入っているのかわからないほどの細身でありながら、素手で人ほどの大きさの金属製レンチすら拉げさせ、地球上で生身の脚力での跳躍のみを駆使して17mほどの高さのMSのコックピットまで簡単にたどり着くほどの肉体的スペックを付与されている。あまりにも一般的な「人体」の形から逸脱したその姿は、ある種そのバックボーン共々、スーパーコーディネイターとはまた別の意味で「人間を超える」事に成功したコーディネイターの一例とも言える。


注釈

  1. ^ a b もともとは忌避されていた遺伝子操作技術が、エヴィデンス01の発見によって宇宙開発に必要な人間が必要になった事から認められ、コーディネイターが生まれたとする資料もみられる[6]。また、設定担当の森田繁によれば、人類が種として行き詰っていた事と、将来的な後の宇宙進出を踏まえた場合、遺伝子の最適化措置はそれらを技術によって乗り越える手段として認識される機運が高まっていた時にジョージ・グレンと彼の発見したエヴィデンス01が現れ、地球外生命体と接触した際の橋渡し役としてコーディネイターが生まれたとも説明している[7]
  2. ^ 『機動戦士ガンダムSEED』第43話におけるラウ・ル・クルーゼの説明ににおいては、高額な費用さえも躊躇せず、社会的な勝利を目的としてコーディネイターが作出されていった事が示唆されている。
  3. ^ 病への耐性に関する見解は揺れがあり、特殊設定を担当した森田繁は将来的にコーディネイターが地球外生命体とコンタクトした場合を踏まえ、「宇宙への環境に適応するため、未知の病原菌に対する耐性が必要」という見解を示している[2]。一方で、プロデューサーを務めた竹田青滋は貧血を誘引する要素とマラリアへの耐性という正負の側面を持つ鎌状赤血球を例に出しつつ、「遺伝子操作を続ければ多様性を失い、薬物耐性を持った突然変異のウィルスによって全滅する危険性がある」という見解を示している[12]
  4. ^ 『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』、エドモンド・デュクロのセリフによる。
  5. ^ コズミックイラの優生学であるともいわれるデスティニープランについても、プラントのコーディネイターたちからは自分たちに有利な制度であるがゆえに反対意見が少なかったという[14]
  6. ^ そのため、プラントの政治家には適合する遺伝子を持つ人間を被験体として確保し、その臓器を遺伝子病の患者に移植する者も現れている[20]
  7. ^ 『SEED ASTRAY』の著者である千葉智宏は、SEED放映前の初期設定を決める段階での森田繁の「叢雲劾はどのようなキャラか」との質問に「SEED世界で一番強いキャラ」と回答したが、それに対して森田繁は「キラより強いのはありえない」と述べ、その後「単純な強さでは負けたとしても、 絶対に勝てる状況に追い込んでから戦うキャラ」という答えに「傭兵として合格」というお墨付きを貰っている[24]事から単純な肉体的スペックの強さはキラが最高とも取れる。ただし、この後に森田繁は自作であるSEED MSV戦記において、生身でMSを破壊出来るバリー・ホーを登場させている事から、現在の設定上でもスーパーコーディネイターが肉体的最強スペックを担保されているかは不明である
  8. ^ 叢雲劾だと「特殊な空間認識能力」、エルザ・ヴァイスだと「歌唱の才能」、等
  9. ^ ただし、「機動戦士ガンダムSEED VS ASTRAY」に登場するフィーニス・ソキウスは例外として服従遺伝子を組み込まれておらず、ソキウスの前段階として作られたグゥド・ヴェイアは、施された服従遺伝子は不完全である事からナチュラルに危害を加えることが可能
  10. ^ これらは「ソキウスのSEED」と呼ばれる
  11. ^ なおCE55年には既に多くのコーディネイターは宇宙とプラントに生活の場を移している[5]が、CE70年の戦争勃発によってプラント以外の宇宙在住地の大半はプラントの攻撃で破壊もしくは荒廃しており、CE71年時点では居住者の大半は地球に避難し[26]、彼等の元居住地はL4の廃墟コロニー群もしくは地球を取り巻くデブリ海と化しており、CE71年時点ではこれらの戦前における宇宙在住者達の元居住地は「ジャンク屋の周回する『定番ルート』」となっている[27]事が描写されている。
  12. ^ 『機動戦士ガンダムSEED C.E.73 STARGAZER』作中ではブレイク・ザ・ワールド事件に乗じ、両親をナチュラルに殺害された子供3人がジン タイプインサージェントに搭乗しテロを敢行、地球連合軍に掃討されている。作中ではファントムペイン高官の口頭から同様のテロが相次いで発生した事が語られており、その後はテロ組織潜伏の疑惑を持つコーディネイターの難民キャンプが、民間人もろともファントムペインによって攻撃されている。

出典

  1. ^ a b 『電撃データコレクション 機動戦士ガンダムSEED 上巻』メディアワークス、2004年10月15日初版発行、2-3頁、70頁。(ISBN 4-8402-2817-5)
  2. ^ a b c d e 『機動戦士ガンダムSEED コズミック・イラ メカニック&ワールド』双葉社 2012年11月28日初版発行 276-280頁。(ISBN 978-4-575-46469-6)
  3. ^ a b 機動戦士ガンダムSEED 20周年記念オフィシャルブック』株式会社バンダイナムコフィルムワークス 2023年4月28日初版発行 117頁。
  4. ^ 森山和道のサイエントランス 第9回 NEWTYPE、2003年12月号
  5. ^ a b c d e f g h i 『機動戦士ガンダムSEED コズミック・イラ メカニック&ワールド』双葉社、2012年11月28日初版発行、230-233頁。(ISBN 978-4-575-46469-6)
  6. ^ 『ロマンアルバム 機動戦士ガンダムSEED ストライク編』徳間書店、2003年7月、92頁。ISBN 4-19-720226-1
  7. ^ 「ガンダムモデラーのための『SEED』設定大解剖 設定担当:森田繁氏インタビュー」『モデルグラフィックス』2003年8月号、大日本絵画、24-28頁。
  8. ^ a b c d 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2003年9月1日初版発行、142-145頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  9. ^ a b c d 『機動戦士ガンダムSEED コズミック・イラ メカニック&ワールド』双葉社、2012年11月28日初版発行、214-221頁。(ISBN 978-4-575-46469-6)
  10. ^ a b c d e f 『機動戦士ガンダムSEED オフィシャルファイル メカ編vol.1』講談社、2003年2月17日初版発行、28-29頁。(ISBN 4-06-334678-1)
  11. ^ ときた洸一機動戦士ガンダムSEED ASTRAY』第3巻 角川書店 2004年2月 76頁。(ISBN 978-4047136021)
  12. ^ 後藤リウ『機動戦士ガンダムSEED 2 砂漠の虎』角川書店、2003年6月、280-281頁。(ISBN 4-04-429102-0)
  13. ^ a b 『電撃データコレクション 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 上巻』メディアワークス、2007年10月20日初版発行、66-72頁。(ISBN 978-4-8402-4058-1)
  14. ^ 『電撃データコレクション機動戦士ガンダムSEED DESTINY 下巻』メディアワークス、2007年11月15日初版発行、71頁。(ISBN 978-4840240871)
  15. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 2』角川書店、2004年7月1日初版発行、60-61頁。(ISBN 4-04-429703-7)
  16. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2003年9月1日初版発行、43頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  17. ^ 機動戦士ガンダムSEED FESTIVAL 公式パンフレット
  18. ^ 『アニメコミックス 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 9』講談社、2005年9月、193頁。(ISBN 978-4063102116)
  19. ^ 『アニメディア』2005年11月号、学研プラス、9頁。設定担当・森田繁が語る所による。
  20. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY 上巻 真実を求める者』メディアワークス、2006年7月15日初版発行、192-193頁。(ISBN 4-8402-3473-6)
  21. ^ a b c 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED DESTINY ASTRAY 1』角川スニーカー文庫、2005年7月1日初版発行、131-135頁。(ISBN 4-04-471701-X)
  22. ^ a b 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2003年9月1日初版発行、148-150頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  23. ^ 『機動戦士ガンダムSEED MSエンサイクロペディア』一迅社、2008年7月1日初版発行、126頁。(ISBN 978-4-7580-1108-2)
  24. ^ ASTRAYなブログ 2006年3月より。
  25. ^ a b 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2003年9月1日初版発行、192-200頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  26. ^ a b 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 2』角川書店、2003年9月1日初版発行、116頁。(ISBN 4-04-429703-7)
  27. ^ 「unit15 パワーローダー」戸田泰成『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R』第4巻、角川書店、2004年8月、12-14頁(ISBN 978-4047136595)
  28. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2005年7月1日初版発行、158-161頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  29. ^ 「unit18 煌めく凶星『J』」戸田泰成『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R』第4巻、角川書店、2004年8月。(ISBN 978-4047136595)
  30. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 1』角川書店、2003年9月1日初版発行、196-208頁。(ISBN 4-04-429701-0)
  31. ^ 『ハイグレード 1/144 ジン タイプインサージェント』バンダイ、2006年9月、組立説明書。
  32. ^ 千葉智宏『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 2』角川スニーカー文庫、2004年7月1日初版発行、62-64頁。(ISBN 4-04-429703-7)
  33. ^ 後藤リウ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY 1 怒れる瞳』角川書店、2005年3月1日初版発行、27頁。(ISBN 4-04-429108-X)
  34. ^ 「unit17 タイムリミット・ラン」戸田泰成『機動戦士ガンダムSEED ASTRAY R』第4巻、角川書店、2004年8月。(ISBN 978-4047136595)
  35. ^ a b c 『機動戦士ガンダムSEED VS ASTRAY Vol.2』メディアワークス、2011年11月、49頁。(ISBN 978-4048702966)





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