カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/29 02:33 UTC 版)
作品
ナポレオン戦争とそれに続く時代には、あえて禁止されていた伝統的な民族衣装に身をつつんだ人物を描くなど、ドイツにおけるナショナリズムの形成にも寄与したが、ややもすれば過剰ともなりかねない愛国主義的姿勢や作品にうかがわれる神秘主義的傾向に対しては政治的な理由で批判を浴びる事もあり、ゲーテのように冷静に距離を置いた同時代人もいる。
作品は、自然の風景、それも高みや遥か彼方を見据えるもの、廃墟になった僧院、墓地、古代の巨石墓、槲の木などがよくモチーフとして取り上げられる。無人の荒涼とした風景を題材とした、宗教的崇高さと静寂感に満ちた作品が多い。人が描かれるときは、その人も作品に描かれた風景を鑑賞者と共に見つめるため、背後からしか描かれないのが常である。例外的に幼児のみがこちらを向いて描かれる。また、『氷の海』のように、自然の冷酷さと死のイメージを重ね合わせた作品も多い。主要な作品は、ドレスデン美術館とベルリンのナショナル・ギャラリー(ムゼウムスインゼル)で見ることができる。
元々は、セピアインクによるペン画(線画)を描いていた。脳卒中で倒れた後は、油彩からは一歩引いて再びペン画を中心に画業を行っていた。
なお、フリードリヒの作品は、昭和初期から主にドイツ文学者たちによって日本に紹介されている。また、ドイツ留学の経験のある日本画の東山魁夷の作品には、フリードリヒからの影響が見られる。
文献
- フォン・アイネム『ドイツ近代絵画史』神林恒道・武藤三千夫訳、岩崎美術社、1985年
- 『ドイツ・ロマン派画集』藤縄千艸編 「ドイツ・ロマン派全集 別巻」国書刊行会、1985年
- ヘルベルト・フォン・アイネム『風景画家フリードリヒ』藤縄千艸訳、高科書店、1991年
- ゲルトルート・フィーゲ『カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ』松下ゆう子訳、Parco出版、1994年
- 仲間裕子『C.D.フリードリヒ 〈画家のアトリエからの眺め〉―視覚と思考の近代』三元社、2007年
- 小笠原洋子『フリードリヒへの旅』角川叢書、2009年
主な作品
- 蜘蛛の巣を持つ女(1803年)
- 山脈の十字架(1805年)
- エルベ渓谷の眺め(1807年)
- 古代の英雄の墓(1812年)
- 港の眺望(1815-1816年)
- 雲海の上の旅人(1818年)
- リューゲン島の白亜岩(1818年)
- 朝日の中の婦人(1818-1820年)
- 月を眺める二人の男(1819-1820年)
- 氷の海(1823-1824年)
- 月を想う男と女(1830-35年)
固有名詞の分類
19世紀の美術家 |
岡本秋暉 浦上春琴 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ エイリッフ・ペーテシェン 中林竹洞 |
ドイツの画家 |
フリッツ・フォン・ウーデ アブラハム・ミグノン カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ ハンス・バルドゥング ハンス・ホルバイン |
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