アラインメント (言語学) その他のアラインメントの類型

アラインメント (言語学)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/06 09:51 UTC 版)

その他のアラインメントの類型

活格型

活格言語と呼ばれる言語では、一部の自動詞の項を他動詞のAとして、またその他の自動詞の項を他動詞のOとして扱う(Sa=A;So=O)。例えばグルジア語では、"Mariamma imğera"「マリアムが歌う」では "Mariamma c'erili dac'era"「マリアムが手紙を書いた」の他動詞主語と共通の格語尾-maが使われるが、"Mariami iq'o Tbilisši revolutsiamde"「マリアムは革命までトビリシにいた」では他動詞目的語の格語尾-iが使われる。このように自動詞の用法は場合によって異なる。この分類は意味的な違いに基づくが、具体的には言語によって異なる。固定されている言語もあるが、意志・制御あるいは話者の共感によって選べるような言語も存在する。

フィリピン型

オーストロネシア語族のうち、タガログ語セブアノ語などのフィリピンの諸言語を始めとして、台湾ボルネオ島バリ島マダガスカルミクロネシアなどの地域に分布する「フィリピン型」と呼ばれる言語では、S/A/Pという項の種類と格配列のデフォルトの対応関係が存在しない。例えば次のセブアノ語の文(a)は自動詞文で、S項 bata には ang という標識がある。一方(b)と(c)は他動詞文であるが、(b)ではA項 bataang が付き、(c)ではO項 libroang が付いている(例文は柴谷 2003:33)。

(8)  a.  Ni-dagan  ang  bata. 
AF-走る  F  子供 
「子供は走った」
(8)  b.  Ni-basa  ang  bata  sa  libro. 
AF-読む  F  子供  NF  本 
「子供は本を読んだ」
(5)  c.  Gi-basa  sa  bata  ang  libro. 
OF-読む  NF  子供  F  本 
「その本はその子供が読んだ」

この(b)と(c)の違いは「能動態」「受動態」と呼ばれることもあるが、対格言語の能動態・受動態とは異なる。むしろのどの成分を主題とするかによる違いで、「行為者焦点」「目標焦点」という呼び名が正確である(ゆえにこれらの言語を主題卓越言語と見る説もある)。このようにフィリピン型言語では他動詞構文が唯一でないために、格配列は一つに決まらない。どちらの格配列でも2つの格が用いられる。例えばタガログ語の場合、行為者焦点動詞の行為者と目標焦点動詞の目標は同じ形態であり、行為者焦点動詞の被行為者と目標焦点動詞の行為者もまた同じ形態(属格)である。このほかに「場所焦点」や「受益者焦点」などがあるが、これらは基本的な形式ではないとの考えもある。

階層型


注釈

  1. ^ この記事において、典型的な他動詞とは「殺す」や「破壊する」など動作主により意志的に行われて対象にはっきりとした状態変化をもたらす行為を表すものを指す。
  2. ^ 「=」はその前後を同じように扱うことを、「/」はその前後を区別することを示す。

出典

  1. ^ a b 角田 2009.
  2. ^ a b Comrie 1989.
  3. ^ Comrie 2011.


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