やかん 電気ケトル

やかん

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/11 00:41 UTC 版)

電気ケトル

電気ケトル(ジャグ型)
電気ケトルの内部に堆積した水垢(石灰鱗)

電気ケトル(: electric kettle, electric jug)は電気的に湯を沸かすケトルである。円筒形の背の高い本体側面に取っ手と注ぎ口が付き、容器内側の底面はそのまま電熱器となっている。電気コードがつながった電源ベース上部に本体を置き通電させるものが多い[注釈 2]。満水時でマグカップ数杯分程度の水を数分で沸騰できるものが多い。

最初の電気ケトルは1891年にアメリカのカーペンター・エレクトリック社により開発された[6]。1922年にヒーターを水タンク内に配置する方式がイギリスのブルピット・アンド・サンズ英語版(スワン)社の技術者アーサー・レスリー・ラージによって発明[7]、1955年に自動加熱終了するものがイギリスのラッセルホブス社によって発明、1986年にコードレス式がフランスのグループセブ(ティファール)社によって発明された。こうしたコードレス式の電気ケトルは欧米での先行普及の後、2000年代より日本での普及が始まった[8]。当初はティファールが市場を独占していたが、2010年ごろより象印パナソニックなどの国内企業も参入した。

日本国外では、電源電圧が高いためすぐに湯が沸き、湯を必要に応じ沸かして使い切るのが普通であり、そもそも台所の定位置で使うものであったが、日本では沸かすのに時間がかかり、従来の電気ポットのように湯を溜めたまま和室の床に置くなどの使い方により、子供が誤って転倒させた際に湯がこぼれて熱傷を負う事故が多発した[8]。その後、日本製品の多くは倒させても湯がこぼれない仕様のものに置き換わっている。

日本国内では、二重構造で保温するもの[9]、沸騰後1時間だけ電気的に保温するもの[10]が作られるようになっている。

電気ポットとの違い

電気ポットとの違いは、

  • 長時間の保温ができないので、湯が必要となるたびに給水・沸騰させる使い方である。電源電圧の低い日本では、使用者は沸騰するまで長めに待つ必要がある。
  • 電気的な保温をしないので消費電力が少ない[11]
  • 電気ポットの多くはボタンを押して湯を出すのに対し、電気ケトルは柄を持って容器を傾け湯を注ぐ。

等がある。

高出力

電気ケトルは、その機能を実現させるための、水を熱源に当ててお湯を沸かす構造そのものは単純だが、700Wから1400Wという高出力(日本国外では2.2kWから3kWの商品が主流)である。日本国内では、電子レンジ、冷暖房機、ヘアドライヤーと並んで、容量不足の時にブレーカーが落ちる原因となる家電製品である。高出力にすることで、湯が沸くまでの待ち時間を減らしている。電気ケトルに使用可能な200Vコンセントが無い家庭では、電圧の関係で1.5kW(100V15A)の製品を使用するので、海外で一般的な2.2kWや3kWの製品と比べると湯が沸くまでに時間がかかる[12]


注釈

  1. ^ ただし、1995年PL法が施行されてからは、突沸等による火傷や吹きこぼれ等によるストーブの損傷を抑制する観点から、説明書およびストーブ本体に「ストーブの上で使用しないこと」の旨が記載されるようになった。
  2. ^ 電源コード接点を本体側面に差し込むタイプ、磁石を使って電源コード接点を本体側面に接続するタイプも以前は多かった。これらのタイプは、コンセントから離れた場所に本体を移動させる際に、電源ベースを使うタイプでは不要な、電源コードを本体から外す操作が必要である。

出典

  1. ^ 社団法人全国調理師養成施設協会編『改訂調理用語辞典 カラー版』 1999年、1201頁
  2. ^ 雑貨工業品品質表示規程”. 消費者庁. 2013年5月23日閲覧。
  3. ^ a b 「日本人の知恵、漢方」”. 城西大学水田記念図書館. 2020年2月23日閲覧。
  4. ^ 堀江皓. “南部鉄瓶雑学”. 2020年2月27日閲覧。
  5. ^ 消費者物価指数、品目見直し 除外…携帯型オーディオ 追加…タブレット端末:朝日新聞デジタル
  6. ^ Kettle – 1891”. Magnet Academy. National High Magnetic Field Laboratory. 2023年9月16日閲覧。
  7. ^ Austin Court: Engineering exhibits: The Atrium”. IET Birmingham. The Institution of Engineering and Technology. 2023年9月16日閲覧。
  8. ^ a b “後絶たないやけど事故 ティファール電気ケトル”. 中日新聞 (中日新聞社). (2013年6月6日). オリジナルの2013年6月15日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130615120733/http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013060602000003.html 2013年6月14日閲覧。 
  9. ^ 沸騰までの時間が業界最速の蒸気レス電気ケトル”. 家電Watch. インプレス (2014年9月18日). 2017年11月13日閲覧。
  10. ^ 電気ケトル(CK-CH08型) 新発売”. ニュースリリース. 象印 (2016年10月13日). 2017年11月13日閲覧。
  11. ^ 平湯宗人、中原大輝「電気ポットと電気ケトルの使い方と比較」『平成26年度 電気・情報関係学会九州支部連合大会論文集』、電気・情報関係学会、2014年9月16日、303頁、doi:10.11527/jceeek.2014.0_3032017年11月12日閲覧 
  12. ^ 100Vと200Vの電気ケトル比較”. SuperTechsan. YouTube (2017年2月26日). 2017年11月21日閲覧。


「やかん」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「やかん」の関連用語

やかんのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



やかんのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのやかん (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS