銃身遊動遅延式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 01:17 UTC 版)
弾丸が銃身を通過する際に内部で生じる力(ライフル回転の作用や弾頭通過の作用)を、銃身に設けたラグ等とカムやレバー等の働きにより遊底に伝え、遊底の後退速度を低下させる方式である。 これらの銃身に加わる作用は、薬莢と遊底の後退運動に比べて小さいが、遊底と嵌合するカムやレバーにより力を増大させ、銃腔内の圧力が安全域に低下するまで、遊底の開放を遅延させている。なお、遊底を人力で後退させる際には、銃身から遊底に力は掛らず、後退を抑制する動きは起きないようになっている。 ショートリコイル方式のロータリーバレル機構と似た構造だが、ディレードブローバックでは遊底を機械的に閉鎖する機構は持たず、弾薬の発火直後から薬莢と遊底が後退を始め、その作動原理は異なったものとなっている。 Savage 1907やMAB PA-15では、ライフリングと同方向に傾斜したカム溝が遊底内部に彫られ、これが銃身の突起部と嵌合しており、遊底の前後動に合わせて銃身は回転する構造となっている。弾丸には、ライフリング(例として右回転の場合)により回転(右)が与えられるが、この作用として銃身には逆回転(左)の動きが生じる。発射ガスの圧力を受けた薬莢と遊底は、銃身を回転(右)させながら後退しようとするが、銃身はこれに反して回転(左)しようとするため、カム溝を介して遊底の後退が阻害され、遊底の後退速度は低下する。弾丸が銃口を離れると銃身に加わる作用はなくなり、遊底は銃身を回転(右)させながら後退する。 後発のFN Five-seveNでは、弾丸が銃身と摩擦しながら前進する際に生じる摩擦(抜弾抵抗)によって、銃身に加わる前方への作用を利用している点が異なるが、銃身が前進しようとしている状態では、遊底の後退が阻害される構造となっている点で同じである。 採用例: Savage 1907, MAB PA-15, FN Five-seveN 独特な構造を持つSavage 1907は1920年代までポピュラーな自動拳銃だった。 MAB PA-15はM1911系に似た外観だが、その作動機構は全くの別物である。 高い貫徹力で有名になったFN Five-seveNだが、内部構造もかなりユニークである。
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