鉛に安定同位体が1つも存在しない可能性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 07:52 UTC 版)
「鉛の同位体」の記事における「鉛に安定同位体が1つも存在しない可能性」の解説
鉛よりも1つ陽子の数が多いビスマスの同位体のうち209Biは、長い間安定核種だと考えられていたものの、実際には半減期1.9×1019年の長い寿命を持つ放射性核種であったことが確認され、これによってビスマスは1つも安定核種を持たない元素であることが明らかとなった。それと同様に、まだ一般には安定核種であると説明されることの多い、204Pb、206Pb、207Pb、208Pbの4つも、実は全て長い寿命を持った放射性核種ではないかという可能性が指摘されている。まず、204Pbは、1.4×1017年以上の半減期を持った放射性核種だと見られていて、α崩壊を起こして200Hgになって安定すると考えられてきている。さらに、206Pbは、実はウラン系列(ラジウム系列)の最終生成物ではなく、あくまでウラン系列に属する途中の生成物であって、実際はα崩壊して202Hgになって初めて安定するのではないかとの指摘がある。同様に、207Pbはアクチニウム系列の最終生成物ではなく、あくまでアクチニウム系列に属する途中の生成物であって、実際はα崩壊して半減期約46日強の203Hgとなり、これがβ崩壊して203Tlとなって初めて安定するのではないかとの指摘がある。同じく、208Pbはトリウム系列の最終生成物ではなく、あくまでトリウム系列に属する途中の生成物であって、実際は2×1019年以上の半減期を持った放射性核種だと見られていて、これはα崩壊して204Hgになって初めて安定すると考えられてきている。これらが全て正しいとすると、実は鉛も1つも安定同位体を持たない元素だということになり、既知の元素の中で最も陽子の数の多い安定な元素の座を譲ることとなる。ここまでの内容については、今後の研究が待たれる部分である。 なお、この他の鉛の同位体は一般にも全て放射性同位体であると認識されている。比較的半減期の長い(寿命の長い)核種としては、次のような核種がある。 205Pb - 半減期約1510万年。電子捕獲によって205Tlに変化して安定する。 202Pb - 半減期約52500年。主に電子捕獲によって202Tlに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。ただし、1%程度はα崩壊によって198Hgに変化して安定する。 210Pb - 半減期約22.6年。主にβ崩壊によって210Biに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。ただし、ごくごく一部はα崩壊によって206Hgに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 203Pb - 半減期約51.87時間。電子捕獲によって203Tlに変化して安定する。 200Pb - 半減期約21.5時間。陽電子を放出して200Tlに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 212Pb - 半減期約10.64時間。β崩壊によって212Biに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 201Pb - 半減期約9.33時間。陽電子を放出して201Tlに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 209Pb - 半減期約3.25時間。β崩壊によって209Biに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 198Pb - 半減期約2.4時間。陽電子を放出して198Tlに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 199Pb - 半減期約90分で、陽電子を放出して199Tlに変化し、さらに崩壊を続けてゆく。 残りの核種は全て半減期が1時間以内である。
※この「鉛に安定同位体が1つも存在しない可能性」の解説は、「鉛の同位体」の解説の一部です。
「鉛に安定同位体が1つも存在しない可能性」を含む「鉛の同位体」の記事については、「鉛の同位体」の概要を参照ください。
- 鉛に安定同位体が1つも存在しない可能性のページへのリンク