見せかけの建築形態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 18:29 UTC 版)
「システィーナ礼拝堂天井画」の記事における「見せかけの建築形態」の解説
描かれた建築形態の第一の要素は、現実の建築形態を縁取っている、描かれた装飾帯であり、石製の蛇腹のように見える。この装飾帯には、2つのモティーフが繰り返し表されるが、こうした装飾法はローマの古典様式建築においては共通のものだった。当礼拝堂で用いられているモティーフの1つは樫の実であり、これは教皇ユリウス2世の出自であるデッラ・ローヴェレ家のシンボルである。もう1つのモティーフは帆立貝の殻で、これは聖母マリアのシンボルの1つである。この礼拝堂は聖母マリアに奉献されたものであった。 ミケランジェロが描いた建築デザインの1つは、幅広いトラベルティーノ大理石の梁である。この梁は天井を横断して左右壁のペンデンティヴの間をつないでいるように見える。描かれた10本の梁によって、天井は幅広い画面と細い画面とが交互に並ぶように区切られている。 スパンドレルの上方、天井面が水平に近くなる部分には、前面に大きく突き出して見えるコーニスが天井全体を囲むように描かれ、天井画の主要部分の外枠となっている。これらの見かけ上の建築要素は各人物像がそれぞれ明確に区切られたスペースに位置するための枠組みを形成している。こうした描かれた建築要素に組み入れられているのは、多くの小像で、これらは純粋に装飾的目的で描かれたものと思われる。梁とコーニスの交叉部の下には、大理石製風に描かれた各2体のプットーがおり、スパンドレルの頂部には石造に見える羊頭装飾がある。その左右には一対のブックエンドのような人物像が梁の陰に隠れるように描かれ、スパンドレルの下には預言者と巫女の銘板を捧げ持つ着衣と裸体のプットーが思い思いのポーズで立つ。 コーニスの上、9つの場面からなる天井画のうち、5つの小画面の両端には、円形の楯が表される。これら10個の楯は、20体の人物像によっても支えられている。これらの青年裸体像(イニューディ)は、嵌めこみ文様のある台座上に座し、見せかけのコーニスの上にしっかりと足を乗せ、建築構造の一部としてではなく、あたかも実在の人物のように描かれている。
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