綿ふき病とは? わかりやすく解説

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綿ふき病

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/07 00:02 UTC 版)

綿ふき病(わたふきびょう)とは、1957年昭和32年)、岡山県英田郡美作町(現美作市)に所在する田尻病院において、近隣在住の女性(当時43歳)の皮膚膿瘍切開創から天然綿らしきものが排出されるのが確認され、これを原因不明の奇病、疾患であると捉えた出来事である[2][3][4]


注釈

  1. ^ 資料によっては田尻診療所と表記されたものもある。
  2. ^ 現在地である美作市明見から東方向へ約3キロほどの場所。
  3. ^ 農婦の本名は「野○文○」ママ。本名が記載された2つの文献記載中の名字と名前、いずれも2文字目が伏字である[15][16]。本記事では実名のイニシャル表記とした。
  4. ^ 渉猟した資料等からは子供の性別、人数は不明である。
  5. ^ 「しこり」のこと。
  6. ^ この開業医の具体名は渉猟した資料中には無く詳細は不明である。
  7. ^ 相部屋から個室への移動時期は不明。
  8. ^ 田尻医院でのデータのみ。1966年(昭和41年)の阪大微研附属病院と岡山大学附属病院入院時のデータは含まない。
  9. ^ 出典に提示した『田尻/1966年』と『増田/1988年』とでは膿瘍切開回数に齟齬がある。本記事ではより新しい『増田/1988年』(主治医である田尻本人から直接増田へ提供されたデータでもある。)に記載されたデータを使用する。なお、排尿回数については『田尻/1966年』以外のデータが存在しないため、『田尻/1966年』記載のデータを使用した。
  10. ^ 田尻医院でのデータのみ。1966年(昭和41年)の阪大微研附属病院と岡山大学附属病院入院時のデータは含まない。
  11. ^ 本図では割愛したが、N農婦の最後の膿瘍切開は、約1年後の1966年5月14日に田尻医師によって行われた左下腿部の切開である[42]
  12. ^ 出典での赤木の記述では腎部(じんぶ)。
  13. ^ 糞便中には綿毛は見られない[48]
  14. ^ 長年にわたって本症例を調査してきた増田陸郎[50]1988年(昭和63年)9月に発表した『日本医事新報』第3359号において、本症例について学術論文らしい体裁を整えているのは、『日本医事新報』第1869号に田尻保が記載した「多量の綿を産出する奇異な慢性肉芽性炎例について」のみであったと指摘している[51]
  15. ^ 倉敷市に所在する現、岡山大学資源植物科学研究所[77]
  16. ^ 出典の記述ではプラズマ(protoplasm)と表現されているが、誤解が生じるのでここでは原形質と表記する。
  17. ^ 日本病理学会誌への当該記載の所属先は「岡山大学医学部砂田外科教室(砂田輝武教授)」である旨が記載されている[83]
  18. ^ 出典『小林/1977年』によれば松岡の所属は横浜医科大学とあるが、新制大学移行に伴う再編により本発表と前後する1961年(昭和36年)に横浜市立大学に合流(現同大学医学部医学科)となったため、本記事では横浜市立大学と表記する。
  19. ^ 綿ふき病を否定する側が著した文献資料の中で、N農婦と直接相対し創口の観察等を行った上で書かれた文献資料は、この健田恭一による『綿ふき病見聞記 いわゆる"綿ふき病"への疑問』および同人による『日本医事新報』の同年4月17日号(№2138)、同年8月28日号(№2157)のみである。これ以外の否定的文献資料の著者はN農婦を直接診察していない。
  20. ^ 健田による綿ふき病を否定する所説は、同年の『日本医事新報』の同年4月17日号(№2138)、同年8月28日号(№2157)にも記載されているが『自然Nature』での記載内容と重なるため本記事では割愛した。
  21. ^ 各コメントの末尾に示した出典の記載内容から、一部改変のうえ引用した。
  22. ^ 大阪大学微生物病研究所附属病院は大阪大学微生物病研究所とともに、N農婦が検査入院した翌年の1967年(昭和42年)に吹田市の大阪大学吹田キャンパスへ移転。その後1993年平成5年)に大阪大学医学部附属病院と統合・合併している[127]
  23. ^ 『医中誌』とは特定非営利活動法人 医学中央雑誌刊行会が運営する、日本国内の医学関連分野の文献を収集した有料のオンラインデータベース。基本的に医療関係者が症例検索などで使用する。医学中央雑誌刊行会 2021年4月1日閲覧。
  24. ^ 國松の原著ではモルジェロンズ病表記ゆれによる)。
  25. ^ 二国も当初は「医学界の複雑さにおそれをなしてこの問題に関係する気持ちは全くなかったのであるママ」と述べている[145]
  26. ^ 日本のかつての地方行政区分であった令制国のひとつ美作国のこと。今日の岡山県北東部。
  27. ^ N農婦と田尻医師の没年は渉猟した範囲では確認できないが、N農婦は1914年大正3年)2月生まれなので存命ならば100歳を超えている。田尻医師は2009年平成21年)8月発行の岡山医学会誌の病院紹介「田尻病院」の中で故人[12]と表記されている。

出典

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