熱的散逸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/30 21:08 UTC 版)
熱的散逸は、熱エネルギーに起因する分子の速度が十分に大きい場合に発生する。熱的散逸は分子レベルで発生するジーンズ散逸から、大量の大気の流出が発生するハイドロダイナミックエスケープまで、全てのスケールで発生する。 大気の熱的散逸の様子を表す指標として、エスケープパラメータ (英: escape parameter) というものがあり、以下のように定義される。 λ = G M m r k B T {\displaystyle \lambda ={\frac {GMm}{rk_{\rm {B}}T}}} . ここで、 λ {\displaystyle \lambda } はエスケープパラメータ、 G {\displaystyle G} は万有引力定数、 M {\displaystyle M} は惑星質量、 m {\displaystyle m} は大気分子の平均質量、 r {\displaystyle r} は惑星中心からの距離 (地表の場合は惑星半径に相当する)、 k B {\displaystyle k_{\rm {B}}} はボルツマン定数、 T {\displaystyle T} は大気の温度である。これは、惑星からの脱出速度 2 G M / r {\displaystyle {\sqrt {2GM/r}}} と気体分子運動の典型的な速度 2 k B T {\displaystyle {\sqrt {2k_{\rm {B}}T}}} の比から定義でき、重力エネルギーと分子の熱運動エネルギーの比と言える。エスケープパラメータは大気が惑星にどれだけ強く束縛されているかを示す指標であり、値が大きいほど強く束縛されている、つまり大気散逸を起こしにくいことを意味する。例として、地球の大気下層でのエスケープパラメータは λ ∼ 700 {\displaystyle \lambda \sim 700} である。また、惑星の中心を原点とする球座標における大気のスケールハイト H {\displaystyle H} は H = r 2 k B T G M m {\displaystyle H={\frac {r^{2}k_{\rm {B}}T}{GMm}}} と表されるため、これを用いるとエスケープパラメータは λ = r H {\displaystyle \lambda ={\frac {r}{H}}} と書け、惑星半径と惑星大気のスケールハイトの比を表すことになる。
※この「熱的散逸」の解説は、「大気散逸」の解説の一部です。
「熱的散逸」を含む「大気散逸」の記事については、「大気散逸」の概要を参照ください。
- 熱的散逸のページへのリンク