水生類人猿説とは? わかりやすく解説

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アクア説

(水生類人猿説 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/13 17:04 UTC 版)

アクア説(アクアせつ、: Aquatic Ape Hypothesis: AAH or Aquatic Ape Theory: AAT)とは、ヒトチンパンジーなどの類人猿と共通の祖先から分岐して進化する過程で、一時期「半水生活」に適応したことによって直立二足歩行、薄い体毛、厚い皮下脂肪、意識的に呼吸をコントロールする能力など、チンパンジーやゴリラなどの他の霊長類には見られない特徴を獲得した、とする仮説である。水生類人猿説(すいせいるいじんえんせつ)とも呼ばれる[1]


注釈

  1. ^ ただし、現在発見されている中では最古の人類化石と考えられるトゥーマイ猿人(TM 266-01-060-1)は、当時はチャド湖畔(すなわち水辺)であったチャドで発見されている。また、アクア説には当時の人類が海ではなく内陸の淡水に適応したとする修正説もある[要出典]
  2. ^ 原著タイトル“The Descent of Woman”はチャールズ・ダーウィン1871年の著作『人間の由来(原題en: The Descent of Man, and Selection in Relation to Sex)』をもじったもの[9]。1970年代の第二波フェミニズムen:Women's liberation movement)の思潮の中で、人類の進化史における女性の存在意義に光を当てた点に特徴があった[10][6]。同書は2003年時点で25カ国語に翻訳されている[6]。日本語訳は2種類ある。原著初版の訳が『女の由来』二見書房、1972年(中山善之 訳)。原著改訂版の訳が『女の由来 : もう一つの人類進化論』どうぶつ社、1997年刊(望月弘子 訳)。
  3. ^ 原著フルタイトルは“The aquatic ape : a theory of human evolution”(直訳:水生類人猿 : 人類進化の理論)、日本語訳は『人は海辺で進化した : 人類進化の新理論』どうぶつ社、1998年刊(望月弘子 訳)。序文はアリスター・ハーディが寄せている[11]。英国の古脊椎動物学者でサイエンスライターのダレン・ナイシュは、アクア説は特にこの本で有名になったと記している[3]
  4. ^ 日本語訳は『人類の起源論争 : アクア説はなぜ異端なのか?』どうぶつ社、1999年刊(望月弘子 訳)。本書は本文に出典注が付され、巻末に対応した出典リスト(文献表)がある。
  5. ^ 1960年にアリスター・ハーディが『ニュー・サイエンティスト』誌に発表した論文は、モーガンの単行本『人は海辺で進化した(The Aquatic Ape)』(どうぶつ社)の「補章I 三つの論文」に日本語全訳がある[18]。またその後、ハーディがアクア説を論じた2編も同章に抄訳が収められている[19]

出典

  1. ^ a b c d e Strauss 2015.
  2. ^ a b c d 河合 2001.
  3. ^ a b c d Darren 2012.
  4. ^ DNA人類進化学 ~ 3.ヒトがサルと分かれた日”. 遺伝学電子博物館. 国立遺伝学研究所. 2024年1月26日閲覧。 “このように小さな誤差しか現れないのは、ミトコンドリアDNAの全塩基配列を決定し分析ができたからである。これにより、ヒトとチンパンジーは約490万年前に分岐したと結論してさしつかえないだろう。” ※宝来聰『DNA人類進化学』岩波書店〈岩波科学ライブラリー〉、1997年より転載。
  5. ^ Darren 2012, “Despite a huge number of recent fossil hominid discoveries, fossil evidence that might support the AAH has not appeared.”.
  6. ^ a b c d e f g h i j Brooks 2003.
  7. ^ ホモ・サピエンスが繁栄し、ネアンデルタール人が絶滅した「意外な理由」 : 橘玲、人類学者・篠田謙一対談(前編)”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. p. 2 (2022年7月25日). 2024年1月26日閲覧。
  8. ^ 江村謙太郎 (2017年5月22日). “〜インターネットオーディエンス測定〜 「インターネット博覧会(インパク)」のアクセス状況”. VR Digest plus. 株式会社ビデオリサーチ. 2024年1月25日閲覧。 “埼玉県が運営する「人類博物館-500万年進化の旅(jinrui.net)」(3.7万人)”
  9. ^ モーガン 1998, p. 194, 訳者あとがき.
  10. ^ a b c d e Hitt, Carolyn (2019年1月10日). “Hidden Heroines: Could Elaine Morgan win statue vote?” (英語). BBC News. BBC. 2024年1月25日閲覧。
  11. ^ モーガン 1998, pp. 7–10, 序.
  12. ^ 江村裕文「言語の起源に関する一考察(1)」『異文化〈論文編〉』第16巻、法政大学国際文化学部、2015年4月、10-12頁、CRID 1390853649760807424doi:10.15002/00010750ISSN 1349-3256 
  13. ^ モーガン 1998, p. 184, 補章I 三つの論文 : 資料3(アリスター・ハーディが1977年にオックスフォード大学科学協会発行の雑誌『ジーナス (Zenith)』第15巻第1号に発表した「われわれは“ホモ・アクアティクス”だったか (Was there a Homo aquaticus?)」の抄録).
  14. ^ デイヴィッド・アッテンボロー | 著者ページ”. 東洋経済オンライン. 東洋経済新報社. 2024年1月25日閲覧。 “英国を代表する自然史ドキュメンタリーの制作者。BBCの画期的なシリーズを世に送り出し、世界的な自然史ドキュメンタリーの作り手として確固たる名声を博した。”
  15. ^ Westenhöfer 1942.
  16. ^ a b モーガン 1999, p. 20.
  17. ^ 片山一道『身体が語る人間の歴史 人類学の冒険』筑摩書房、2016年、140頁。ISBN 978-4-480-68971-9 
  18. ^ モーガン 1998, pp. 164–176.
  19. ^ モーガン 1998, pp. 176–187.
  20. ^ パンツを脱いだサル”. 現代書館ウェブサイト. 株式会社現代書館. 2024年1月26日閲覧。 “本書は水生類人猿説を採り、なぜ遠征したのか、から始まり、、”
  21. ^ 岡ノ谷一夫『言葉はなぜ生まれたのか』文藝春秋、2010年7月、23頁。ISBN 978-4-16-372640-3
  22. ^ ビヨルン・クルテン 著、瀬戸口烈司, 瀬戸口美恵子 訳『霊長類ヒト科のルーツ』青土社、1995年5月[要ページ番号]ISBN 4-7917-5374-7
  23. ^ シャロン・モレアム 著、谷野真千子 訳『迷惑な進化 : 病気の遺伝子はどこから来たのか』NHK出版、2007年8月、241頁。ISBN 978-4-14-081256-3


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