尾流雲とは? わかりやすく解説

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びりゅう‐うん〔ビリウ‐〕【尾流雲】

読み方:びりゅううん

副変種の一。巻積雲高積雲高層雲積雲積乱雲乱層雲層積雲の7種の雲級現れ、名称は雲から垂れ下がる尾のように見えることに由来する雲粒どうしが結合してできた雨粒が、地上落ちてくる途中で蒸発して発生する降水現象見なされる場合もある。


尾流雲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/28 14:46 UTC 版)

尾流雲
高積雲の尾流雲
略記号 vir
副変種 尾流雲
特徴 柱状、雲から下に伸びる
降水の有無 あり(地上には達しない)
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乱層雲の尾流雲

尾流雲(びりゅううん、ラテン語学術名:virga、略号:vir)とは、の分類において部分的に特徴のある雲(副変種)の1つ。雲から降水が落下しているが途中で蒸発昇華し先端が地表に到達していないもの。降水条(こうすいじょう, fall streaks)とも言う[1][2][3][4][注 1]。地上に達すれば降水雲となる[5]

尾流雲の垂れさがるすじは、垂直なものもあるが、多くは斜めになっていて、途中で曲がったものもある[1][3][6][7]。すじが曲がるのは、主に雨粒の蒸発(氷晶の昇華)により粒径が小さくなり終端速度が遅くなるためと考えられる。鉛直のウインドシア(上下での風向風速の急変)によるものもある[4]

十種雲形(類、基本形)のうち、主に巻積雲高積雲高層雲乱層雲層積雲積雲積乱雲に見られる[1][8]。高層雲や乱層雲では、ほとんどに尾流雲がみられる[8]。層積雲ではかなりの低温下で稀にみられる[9]

高層雲の下部と尾流雲は区別が難しいことがあり、雪が一様に降るときに顕著になる[10]。巻積雲では小さな尾流雲がみられ、塔状雲房状雲によくみられる[11]。高積雲では多くの雲種に尾流雲がみられ、特に房状高積雲は広がり消えていく過程で氷晶でできた白い尾流雲をつくり、やがて巻雲へと変化することがある[11]。また、薄い雲では尾流雲が発生したのち雲が消えてしまうことがある[7]

部分的に特徴のある雲(副変種)の1つcavumはしばしば尾流雲を伴う[12]

尾流雲の場合は、地上で降水が観測されなくても、上空を飛行する航空機などは降水を受ける可能性がある。

尾流雲は、降水雲と同様に、が見られることがある。

特定の条件下では、尾流雲で起こる水滴の蒸発が「乾いたダウンバースト(ドライ・ダウンバースト)」を引き起こすことがある[4]。湿度の低い乾燥した大気の上に湿った大気があって降水(尾流雲)のあるとき、蒸発する水滴が大気から熱を奪い下降気流が発生する。地上のレーダーでは高い高度の尾流雲を観測できない場合があり、航空の安全を脅かすことがあるため注意しなければならないとされる。アメリカ中西部など強い乾燥がある地域では、急激な下降気流によって空気が圧縮されて逆に温度が上がるヒートバースト(Heat burst)も観測されており、猛烈な突風を発生させることが知られている。

ラテン語"virga"は棒、笏、杖、枝などを意味する[7][13]

気象庁長官の吉武素二によれば、"virga"の訳語が「尾流雲」となったのは以下の経緯による。終戦直後に測候課長であった吉武が国際雲図帳の翻訳に際してvirgaの訳語が必要になり、ビルガ→ビリュウ→尾流雲と連想し、「尾流雲」という訳語が観測法改訂委員会により認められたので、中央気象台昭和25年1月に発刊した『地上気象観測法』(暫定版)において初めて使用された[7][14]

注釈

  1. ^ 降水雲も降水条と呼ぶ[5]

出典

  1. ^ a b c Virga”. International Cloud Atlas(国際雲図帳. WMO(世界気象機関) (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  2. ^ Hydrometeors > Falling particles (precipitation)”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  3. ^ a b 田中達也、『雲・空』〈ヤマケイポケットガイド 25〉、山と溪谷社、2001年 ISBN 978-4-635-06235-0 p.142.「尾流雲」,p.143.「降水雲」
  4. ^ a b c virga” (英語). Glossary of Meteorology. American Meteorological Society(アメリカ気象学会) (2015年4月14日). 2018年8月22日閲覧。
  5. ^ a b Praecipitatio”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  6. ^ 雲を見よう!空の不思議を知ろう -雲と空の観察と学習ガイドブック-” (pdf). 地学編(14). 石川県教育センター. p. 15 (2007年). 2023年2月28日閲覧。
  7. ^ a b c d No.40 雲のしっぽ”. お天気豆知識. バイオウェザーサービス (2004年5月). 2018年7月22日閲覧。
  8. ^ a b Tabular guide: Genus Table 12. Guide for the identification of the genera of clouds”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  9. ^ Stratocumulus (Sc) > Supplementary features and accessory clouds”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  10. ^ Altostratus (As) > Explanatory remarks”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  11. ^ a b Cirrocumulus (Cc) > Supplementary features and accessory clouds”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  12. ^ Cavum”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  13. ^ Appendix 1 - Etymology of latin names of clouds”. International Cloud Atlas. WMO (2017年). 2023年2月28日閲覧。
  14. ^ 水野量「『尾流雲 』の由来を知る吉武素二元気象庁長官からの手紙」(pdf)『天気』第42巻第1号、日本気象学会、1995年1月、16頁、2018年7月22日閲覧 



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