境界解体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/18 17:29 UTC 版)
「スリップストリーム (文学)」の記事における「境界解体」の解説
たとえば、フィリップ・K・ディックやヴォネガットの作品はSFと純文学の境界解体という面がある。『火星のタイムスリップ』のマンフレッドや『スローターハウス5』の時間旅行者ビリーは予知能力を持っているという設定だが、ここでの予知能力は「鋭敏さ」のメタファーと読める。前者の場合はタイトルの「火星」も「タイムスリップ」もメタファーであり、直喩で置き換えるなら「火星植民地のような場所(=たとえば、伝統の薄いアメリカ社会)におけるタイムスリップのような心理状態(=アンテ・フェストゥムと呼ばれる分裂病的な先取り的時間感覚)」と読むこともできる。また、オースターのニューヨーク三部作は探偵小説と純文学の境界解体と捉えられる。探偵が人を探すのだが、その人とは自己の投影であり、結局「自分探し」なのではないか、と読める。これらのように、SFや探偵小説などの非主流小説のガジェットを借りつつ、純文学的な思想表現を試みる、というのが(非主流と主流の)境界解体と言われるゆえんである。
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