北投石の成分分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 07:11 UTC 版)
1908年3月、東京帝国大学理学部(当時は東京帝国大学理科大学と呼ばれた)の垪和為昌は神保小虎教授から北投石の成分分析を依頼された。この分析を当時化学科の1年生だった飯盛里安、柿内三郎、靑木芳彦の3名の学生に命じた。この際、垪和はこの鉱物にウランを含んでいないか綿密に調査するように指示を与えた。飯盛によると、ラジウムを含む鉱物に通常含まれる親核種のウランが検出されなかった。方法を変えて再三再四試みたが、それでもウランは検出されなかった。これについて垪和は「この鉱物は水成鉱物であるからラジウムだけが偶然ウランから離れて沈積したものであろう」と見解を述べた。斎藤信房はこれは今日から見ても卓見であろう、と述べている。この分析値は日本鉱物誌第二版に掲載された。飯盛はこの分析によって放射化学に興味を持ち、以後放射化学への道に進むことになった。 北投石中のラジウム含有量は1929年に吉村恂が測定した。結果は北投温泉産のものは1.73×10-7% 玉川温泉産のものは1.22×10-7% であった。飯盛によると、この鉱物が放射平衡にあるウラン鉱物であると仮定すると北投温泉産のものはウランをUO3として約0.61%含むはずであり、平衡に達していなければさらに多くのウランを含むはずなので、化学分析で十分に検出可能である。しかるに垪和の予想に反してウランが検出されなかったので、垪和は慎重を期して3人の学生に分析を命じてその平均値を採用し、日本鉱物誌に掲載した。下表は日本鉱物誌第2版 (1916年) に掲載された飯盛らによる北投石(北投温泉産)の分析結果。この分析結果は、のちの研究者たちに高く評価されている。 成分組成%SO3 30.81 PbO 21.96 BaO 32.04 SrO 0.93 CaO 0.51 Al2O3 0.88 Fe2O3 3.93 MgO 1.04 Na2O 0.53 K2O 0 P2O5 0.01 SiO2 1.27 F 存在 H2O 2.53 合計 99.44
※この「北投石の成分分析」の解説は、「北投石」の解説の一部です。
「北投石の成分分析」を含む「北投石」の記事については、「北投石」の概要を参照ください。
- 北投石の成分分析のページへのリンク