ストラヴィンスキーのコメント
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 21:11 UTC 版)
「弦楽のためのレクイエム」の記事における「ストラヴィンスキーのコメント」の解説
『ペトルーシュカ』や『春の祭典』などの作品で知られるロシア出身(来日当時はアメリカ国籍)の作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーが1959年に来日した際、『弦楽のためのレクイエム』の録音を聴いて次のようにコメントした。 この音楽は実にきびしい。全くきびしい。このような、きびしい音楽が、あんな、ひどく小柄な男から、生まれるとは。 ストラヴィンスキーが日本の作曲家の作品を知るため、日本の音楽界に詳しかったヒューエル・タークイやハロルド・クルサーズと共に様々な作品のテープやスコアにあたっていたときの発言である。 このとき、ストラヴィンスキーは福島和夫によるアルト・フルートとピアノのための作品『エカーグラ』に対して「これはいい曲だ。実にいい曲だ。」と賛辞を送ったのだが、これが『弦楽のためのレクイエム』へのコメントと混同され「ストラヴィンスキーが武満の『弦楽のためのレクイエム』を激賞した」と誇張されて伝わった。このことは結果的に武満に対する世間の評価を一転させることになり、翌1960年に行われた第1回東京現代音楽祭においては、再演された『弦楽のためのレクイエム』がドイツ大使賞を受賞した。 また、ストラヴィンスキーのコメントは1971年にヨーロッパで武満が特集された際にも引用され、「ストラヴィンスキーに認められた」と作曲家として紹介されることになるのである。 一方、アメリカでは、ちょうどストラヴィンスキーの来日前後より、タークイと親交があった指揮者ソア・ジョンソン (英語版)が演奏会で『弦楽のためのレクイエム』を頻繁に取り上げており、1960年代には小澤征爾も積極的に取り上げるようになった。タークイは『音楽芸術』1963年1月号に掲載された「特集/現代日本作曲家論」の中で次のように述べている。 『弦楽のためのレクイエム』は東京のあらゆるオーケストラによって演奏されており、東京以外でも数多く演奏されている。それはヨーロッパやアメリカでも演奏されているし、日本の作曲家の最初の後世に残る〈古典〉の一つと考えられよう。 実演ばかりでなく、1960年代には、岩城宏之指揮によるNHK交響楽団(1961年)、若杉弘指揮による読売日本交響楽団(1966年)、小澤征爾指揮によるトロント交響楽団(1969年)などによる録音も行われている。
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