シンクロナイズド・トレモロ・ユニット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/16 16:42 UTC 版)
「ビブラート・ユニット」の記事における「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」の解説
主に、フェンダー・ストラトキャスターに取り付けられているビブラート・ユニット。 従来から存在していた「ビグスビー」(後段で説明) などに比べると、音程の変化の幅が非常に大きく、チューニングの狂いも少ない。これはユニット全体の可動幅が大きく、しかも弦を固定するテールピースと弦長を決めるブリッジが一体になっているためである(ビグスビーなどはブリッジが固定されテールピースのみが動く)。 後段で説明するロック式トレモロも、大半はシンクロナイズド・トレモロの発展改良版と言えるもので、主にユニットがかかえる細かい欠点を改善したものが多い。 本来はフローティング状態(ユニットがボディから浮いた状態)が基本だが、ユニット裏面のスプリングを締めることで、ユニットをボディに密着させることも可能。ボディに密着させてアームを取り外せば、ビブラートユニットがないのと同じ状態になり、チューニングの狂いなどビブラートユニットの欠点をほぼ解消できる。フローティング状態にしかセッティングできないビブラートユニットも多い中、これもシンクロナイズド・トレモロの大きな利点と言える。 1960年代後半に登場したジミ・ヘンドリックスが大胆な使用法を発案し、シンクロナイズド・トレモロの人気は一気に高まった。ヘンドリックスのような大胆な用い方をすると、どうしてもチューニング(調弦)が安定しなくなってしまうが、後年開発されたロック式ペグやローラー式ナットにより、こうした問題もある程度改善された。 アームがねじ込み式になっており、アームのねじ山が常に直接ブロックに当たっているためブロックのアーム穴が消耗するという欠点がある。長年使いこまれたブロックはねじ山がすり減り、アームが外れてしまう場合も多い。近年ではアーム穴の淵にクッション加工したものが流通している。 「シンクロナイズド・トレモロ・ユニット」はフェンダー社(フェンダーUSA、フェンダー・ジャパンなど)の商標で、主にストラトキャスターに取り付けられている(それ以外にもフェンダー社製の一部のギターにシンクロナイズド・トレモロが採用されているモデルがある)。フェンダー社製ギター以外に取り付けられたものをシンクロナイズド・トレモロ・ユニットと呼ぶことはないが、後藤ガット社のGE101/102シリーズなど、外見も仕様も全く同一の他社製品も存在する。またギター部品商社のオールパーツ・ジャパンは後藤ガット製の上記製品を「シンクロ・トレモロ・ユニット」と呼んで販売している。 アメリカン・スタンダードなどのモデルにはシンクロナイズド・トレモロを発展させた「アメリカン・スタンダード・トレモロ」が装着されている。シンクロナイズド・トレモロは、ユニット揺動の支点が6本の木ネジになっており、支点の位置が明確に定まらず、摩擦抵抗も大きい。それに対してアメリカン・スタンダード・トレモロは、ユニット揺動の支点が左右2つのアンカーになっており、ユニットとアンカーの接触部が鋭角に成型されているため、支点の位置が明確で摩擦が少なくなっていて、チューニングの安定度も向上している。
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