カモの生態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 22:21 UTC 版)
このカモは保護されるまでの間、石神井川を飛び立ってから5分後には、すでに不忍池で羽を休めている姿が見られた。矢傷を負ったカモですら川と池を自由に行き来していることから、都内や近隣の県のカモは、かなり自由にこれらの水辺を往来しているものと見られた。また、矢の刺さったままのカモを明らかに周囲のカモたちが避けていることから、カモにとっては鳴き声以外にも、動作や行動が重要なコミュニケーション手段となっており、矢の刺さった姿はほかのカモたちに異様な印象を与えているものと考えられた。当時の上野動物園東園の飼育係長を務めていた小宮輝之は、「矢の刺さった目立つ姿のカモが連日報道されることで、カモの生態としてこうした新しい発見をすることができた」と語っている。2001年(平成13年)の石神井川流域連絡会の会議要旨にも、矢ガモ事件を通じて石神井川のカモの行動が判明した旨が記載されている。 保護後の動物病院での検査によれば、カモに刺さっていた矢は、偶然にも心臓や肺などの臓器や重要な血管などを傷つけずに胴を貫通しており、致命傷に至らなかったことが判明した。鳥類は比較的体温が高く、雑菌が増殖しにくいことから、傷口が化膿せず済んだようであった。また矢が、筋肉を大きく傷つける狩猟用のものではなく、競技用の矢であったことも幸いした。とはいえ、刺さった位置が少しでもずれていれば、致命傷になった可能性は充分と見られた。野性動物救護獣医医師会理事の馬場国敏は、「保護されなければ1か月以内に確実に死亡していた」と分析している。 矢のほか、体内には2発の散弾も発見されたが、矢と同じく急所を逸れており、偶然に偶然が重なって生存に繋がったものと見られた。また、摘出手術をした場合は、回復が遅れて野生に返ることへの支障となる恐れがあったこと、鉛中毒もほとんど心配なかったため、あえてそのまま残された。
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