アシロ目とは? わかりやすく解説

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アシロ目

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/06 07:30 UTC 版)

アシロ目
ソコボウズSpectrunculus grandis
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
亜綱 : 新鰭亜綱 Neopterygii
上目 : 側棘鰭上目 Paracanthopterygii
: アシロ目 Ophidiiformes

アシロ目(Ophidiiformes)は、硬骨魚類の分類群の一つ。2亜目5科で構成され、100属380種以上が所属する大きなグループである。サンゴ礁域から海溝の深部に至るまで、幅広い分布域をもつ。一部に淡水魚汽水魚も含む。

概要

アシロ目の魚類はほとんどが海水魚であるが、フサイタチウオ科の一部は淡水域に生息する。深海に生息する種類が多く、アシロ科に所属するヨミノアシロは世界最深地点(水深8,370m)で確認された魚類である。

体型は細長く、タラ類に似て尾部が伸長している。腹鰭は喉の位置にあり、鰭としての形態は不明瞭で1-2本の軟条からなる。背鰭と臀鰭の基底は長く、尾鰭とつながっていることが多い。長い鰭と体をくねらせるようにして、海底近くを遊泳する底生魚である。吻部の両側に二対の鼻孔を持つ。

アシロ亜目は卵生であるが、フサイタチウオ亜目の魚類は卵胎生で、雄は交接器を有する。

分類

アシロ目はアシロ亜目とフサイタチウオ亜目の2亜目からなり、アシロ科・カクレウオ科・フサイタチウオ科・ソコオクメウオ科・ニセイタチウオ科の5科、100属が設置される[1]。少なくとも385種が含まれるが、多数の未記載種の存在が知られており、分類はさらに拡大するとみられる。

アシロ亜目

アシロ亜目 Ophidioidei にはアシロ科およびカクレウオ科が含まれ、およそ55属253種が所属する。卵生で、雄は交接器を持たない点でフサイタチウオ亜目とは区別される。背鰭・臀鰭と連続した尾鰭を持つ。カクレウオ科は浅い海域に生息するが、アシロ科には深海魚が多い。

アシロ科

イタチウオ Brotula multibarbata(イタチウオ属)。アシロ科の中では数少ない浅海魚で、食用にされる
ソコボウズ Spectrunculus grandis(ハダカイタチウオ属)。世界最深部の魚類の1種。海溝付近の海底で生活し、7,000m以深からの採集記録がある[2]

アシロ科 Ophidiidae は4亜科48属222種を含み、アシロ目で最大のグループとなっている。背鰭の鰭条の長さは臀鰭と同じか、あるいはさらに長い。肛門と臀鰭の起始部は胸鰭よりも後方にある。ほぼ全ての属が深海で底生生活を送る。食用魚として利用される大型種は南半球に多い[3]

  • イタチウオ亜科 Brotulinae 1属5種。吻(口先)と顎にヒゲがある。
    • イタチウオ属 Brotula
  • Brotulotaeninae 亜科 1属4種。ヒゲはない。
    • Brotulotaenia
  • アシロ亜科 Ophidiinae 8属54種。ヒゲはなく、腹鰭の位置は極端に前寄りである。キングクリップGenypterus blacodes)は輸入食用魚として知られる。
    • アシロ属 Ophidion
    • 他7属(Genypterus など)
  • シオイタチウオ亜科 Neobythitinae 38属159種。腹鰭を欠く種類がある。沿岸から超深海帯まで、分布域は広範囲にわたる。本亜科は単系統ではない。
    • イトヒキイタチウオ属 Homostolus
    • ウミドジョウ属 Sirembo
    • オザワアシロ属 Bathyonus
    • クマイタチウオ属 Monomitopus
    • クロウミドジョウ属 Luciobrotula
    • シオイタチウオ属 Neobythites
    • シロチョウマン属 Glyptophidium
    • タライタチウオ属 Porogadus
    • ハゴロモアシロ属 Mastigopterus
    • ハダカイタチウオ属 Spectrunculus
    • ハナトゲアシロ属 Acanthonus
    • ハリダシアシロ属 Xyelacyba
    • ヒメイタチウオ属 Pycnocraspedum
    • フクメンイタチウオ属 Bassozetus
    • フリソデアシロ属 Eretmichthys
    • モモイタチウオ属 Dicrolene
    • ヨミノアシロ属 Abyssobrotula
    • ヨロイイタチウオ属 Hoplobrotula
    • リュウジンアシロ属 Alcockia
    • 他19属

カクレウオ科

オニカクレウオPyramodon ventralis(オニカクレウオ属)。他生物との共生はせず、自由生活を送る
Echiodon rendahli(クマノカクレウオ属)の幼魚。カクレウオ科魚類の幼魚は特徴的な形態をとる

カクレウオ科 Carapidae は7属31種からなる。幼生は背鰭の第1棘が長く伸びた独特の形態をしている。背鰭の鰭条は臀鰭のそれよりも短い。肛門と臀鰭の起始部は体の前方、普通は胸鰭よりも前にある。鰓は大きく開き、鰓蓋骨にはトゲがない。本科魚類の多くはナマコ貝類の体内に隠れ住む習性を持つ。幼生期は2期に分けられ、第1期には浮遊生活を送るが、第2期には背鰭・体長がともに短くなり、この時期に他生物との共生を開始するとみられている。

  • オニカクレウオ亜科 Pyramodontinae 2属5種。胸鰭は頭部とほぼ同じ長さ。
    • オニカクレウオ属 Pyramodon
    • Snyderidia
  • カクレウオ亜科 Carapinae 5属26種。胸鰭の長さは頭部よりずっと短い。腹鰭を欠く。
    • カクレウオ属 Encheliophis
    • クマノカクレウオ属 Echiodon
    • シロカクレウオ属 Carapus
    • シンジュカクレウオ属 Onuxodon
    • ソコカクレウオ属 Eurypleuron

フサイタチウオ亜目

フサイタチウオ亜目 Bythitoidei はフサイタチウオ科、ソコオクメウオ科およびニセイタチウオ科を含み、およそ45属130種以上から構成される。卵胎生で、雄は属・種ごとに形態の異なる交接器を持ち、分類に利用されている。尾鰭は背鰭・臀鰭と連続するか、あるいは独立している。

フサイタチウオ科

オオソコイタチウオ属の1種(Cataetyx messieri)。尾鰭は背鰭・臀鰭と連続する
Bidenichthys consobrinus(フサイタチウオ科)。尾鰭は独立して存在

フサイタチウオ科 Bythitidae は37属107種を含む。尾鰭の連続性に基づき、2亜科(BythitinaeおよびBrosmophycinae)に細分されることもある。鱗と浮き袋をもち、鰓蓋骨には鋭いトゲがある。サンゴ礁から深海まで幅広く分布し、約5種が淡水・汽水域に生息する。浅海に生息する種類は一般に小型・夜行性であり、未記載種が多数存在するため今後分類が拡大する可能性がある[3]Lucifuga 属には6種の盲目魚が含まれ、鍾乳洞などに生息している。

  • オオソコイタチウオ属 Cataetyx
  • サラサイタチウオ属 Saccogaster
  • サンゴイタチウオ属 Brotulina
  • セダカイタチウオ属 Oligopus
  • ネッタイイタチウオ属 Brosmophyciops
  • フサイタチウオ属 Abythites
  • ボライタチウオ属 Diplacanthopoma
  • リュウキュウイタチウオ属 Dinematichthys
  • 他29属(DiancistrusOgilbiaなど)

ソコオクメウオ科

ソコオクメウオ属の1種(Barathronus bicolor)。ソコオクメウオ科の魚類は退化的な目が特徴である

ソコオクメウオ科 Aphyonidae は6属22種を含む。眼は退化的で、鱗と浮き袋がない。鰓蓋骨のトゲはないか、あるいは小さい。ほとんどの種類は700m以深に生息する。

  • ソコオクメウオ属 Barathronus
  • 他5属(AphyonusMeteoriaNybelinellaParasciadonusSciadonus

ニセイタチウオ科

ニセイタチウオ科 Parabrotulidae は2属3種を含む。ウナギのように細長く、腹鰭を持たない。本科の分類学上の位置に関しては議論があり、アシロ目に含めないとする見解もある[4]

  • Leucobrotula
  • Parabrotula

参考文献

  1. ^ Nelson JS (2006). Fishes of the world (4th edn). New York: John Wiley and Sons 
  2. ^ 『深海生物図鑑』 pp.244-247
  3. ^ a b 『日本の海水魚』 pp.121-123
  4. ^ Nielsen JG et al (1999). FAO species catalogue. Vol.18. Ophidiiform fishes of the world (Order Ophidiiformes) 

外部リンク


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