「国家」の廃棄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 15:22 UTC 版)
「家族・私有財産・国家の起源」の記事における「「国家」の廃棄」の解説
社会主義革命によって生産手段が共同所有に移管されることによって、資本主義経済のもとで奴隷化されていた労働者階級の自立が進み、搾取階級に対する搾取によって全人民が平等な社会が成立すると階級闘争が終わりを告げ、階級支配の維持という役目を終えた国家は廃止されるとされた。そして、母系制氏族社会がつくりだした民主的な社会が共産制社会となって高次の形で復元されると主張した。エンゲルスは、国家や一夫一婦制、私有財産を自明のものとするヘーゲル的な歴史観に対して、それらが歴史的なもの、すなわちある条件のなかで生成し、またその条件の解消にともなって消滅(変化)するにすぎないとする歴史観を提示した。 「国家は永遠の昔からあったものではない。国家なしにすんでいた社会、国家や国家権力を夢にも知らなかった社会が存在していた。諸階級への社会の分裂と必然的に結びついた一定の経済的発展の段階で、この分裂によって国家が一つの必要事となった。いまやわれわれは、これらの階級の存在がひとつの必要事であることをやめたばかりか、生産の積極的な障害になるように、急ぎ足で近づいている。それらの階級は、以前にそれらが発生したのと同じように、不可避的に滅びるであろう。それとともに国家も不可避的に滅びる。生産者たちの自由で平等な協力関係の基礎の上に生産を新たに組織する社会は、全国家機関を、その場合にしかるべき場所に移しかえる。すなわち、紡ぎ車や青銅の斧と並べて、考古博物館へ。」 国家の歴史はエンゲルスの想定するコースを辿ることはなかった。「国家の廃止」は実現を見ていない。ただし、現代史において国家のあり方の変化は急激に進行した。エンゲルスの想定した方向性からは外れているものの、グローバリゼーションの進展や冷戦終結に伴ってヨーロッパ連合 (EU) という超国家的な連合体が登場し、ヨーロッパ統合が進展した。国家の存在と役割は時代とともに変化を見せている。
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