M3軽戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 00:59 UTC 版)
バリエーション
M3軽戦車には以下のようなバリエーションがある。
- M3A1
- 周囲視認用のペリスコープを装備し、車長用キューポラを廃止して左右2つのハッチ(これは小さすぎるとして評判が良くない)にすることで全高が低くなった。このD58101型砲塔は動力旋回式となり、より新型のD58133型砲塔以降は砲塔バスケットを採用することで砲の指向が早くなり、目標追従性が向上、砲手を兼ねていた戦車長は、装填手を兼ねるように役割が変更されている。しかしイギリス軍では、戦闘時に副操縦手兼前方機銃手が砲手となり、戦車長はその後ろ(キューポラ下)に下がり、狭い砲塔に3人も入ったためバスケットはむしろ邪魔であった。このためバスケット無しの新型砲塔を載せ車体も溶接組み立てとなったM3(イギリス軍での通称・スチュアート・ハイブリッド)が、M3A1の生産開始以降もしばらく併行して作られ続けた。なお、戦闘室前面左右に固定装備されていた7.62 mm 機関銃は最初から廃止されていた。
- 1941年8月に開発が始まり、生産は1942年5月にスタート、生産終了の1943年2月までにガソリンエンジン型4,410輌とディーゼルエンジン型211輌が完成した。イギリス軍での名称はガソリンエンジン型が「スチュアートIII」、ディーゼルエンジン型が「スチュアートIV」。
- M3A2
- M3A1の車体を溶接構造とした試作車。量産はされなかった。
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性能諸元 | |
---|---|
全長 | 5.01 m |
車体長 | 上に同じ |
全幅 | 2.55 m |
全高 | 2.57 m |
重量 | 14.5 t |
速度 | 49.9 km/h |
行動距離 | 217 km |
主砲 | 53.5口径 M6 37 mm 戦車砲(砲弾174発) |
副武装 | M1919A4 7.62 mm 機銃×3(銃弾7,500発) |
装甲 |
砲塔 防盾51.4mm 前面38.1mm 側・後面31.8mm 上面12.7mm 車体 前面上部25.4mm 前面下部44.4mm 側面25.4mm 上面12.7mm 後面25.4mm 底面前部12.7mm 底面後部10.1mm |
エンジン |
コンチネンタル W-670-9A 空冷星型7気筒ガソリン 262 馬力/2,400 rpm |
乗員 | 4 名 |
- M3A3
- 1942年8月に制式化され、同年12月より生産が始められM3軽戦車の最終生産型。同年3月からすでに生産が開始にされていたM5軽戦車の影響を受けている。
- 車体は完全に溶接構造となり、1枚構成となった前面装甲板には約20度の傾斜がつけられ、スマートになった。面積が大きくなった車体前面装甲は側面同様の厚さ25.4mmに減少したが、傾斜が付けられているため以前の垂直に切り立った38.1mm装甲に近い防御力であった。また車体側面装甲はM5では垂直に立っているが、M3A3では傾斜している。
- 軽量化のためまた、操縦席は前に移動し、車体容積が増加した。これに伴い37 mm 砲弾の携行数は103発から174発に増え、さらに燃料タンクが2個追加され、航続距離が113 km から217 km へ増加した。
- また、エンジンにはエア・クリーナが装着された。それ以前のイギリス軍向けM3同様に足周りにはサンドシールドが装着され、砲塔も形状が変更された。
- 生産終了の1943年10月までに3,427輌が完成したが、M5を採用したアメリカ軍では使用されず、全て外国(イギリス連邦軍、自由フランス軍、中国国民党軍など)へ供与された。イギリス軍での名称は「スチュアートV」。
- M5
- M3軽戦車にキャデラック社製の4ストロークV型8気筒液冷ガソリンエンジン 2基を搭載し、車体構造を単純化、正面装甲を傾斜した一枚板にするなどした発展型。1942年2月に制式化され、1942年3月から1942年12月まで、2,074両が生産された。イギリス軍での名称は「スチュアートVI」。
- 詳細は「M5軽戦車」を参照
- M5A1
- M5軽戦車にM3A3の新型砲塔を搭載するなどした改良型。1943年1月から1944年6月まで、6,810両が生産された。イギリス軍での名称は、M5と同じで「スチュアートVI」。
- 詳細は「M5軽戦車」を参照
派生型
※M5軽戦車の派生型については、M5軽戦車#バリエーションを参照。
- M3スチュアート改造 18ポンド自走砲
- 1942年の北アフリカで、イギリス軍が、アメリカから供与されたM3スチュアートの砲塔を取り除いて、18ポンド砲を防盾ごと据え付けた、即製自走砲。
- T18 HMC
- M3の車台上に大型の天井付きの鋳造製固定戦闘室を設け、M1A1 75mm榴弾砲を搭載した自走榴弾砲の試作車。
- 軟鉄製の戦闘室を持つ試作車2輌が製作されたが、背の高い戦闘室とフロントヘビーが原因で、アバディーン性能試験場での試験で満足する結果を出せず、旋回砲塔を持つM8 75mm自走榴弾砲の制式化により、1942年4月に開発中止となった。
- 詳細は「T18自走榴弾砲」を参照
- T56 GMC
- M3A3の車台上に3インチ(76.2mm)高射砲M1918を搭載した戦車駆逐車(対戦車自走砲)。試作のみ。砲の前面に防盾がある。エンジンを車体前方に移動し、車体後方に砲を搭載した。
- T57 GMC
- M3A3の車台上に3インチ(76.2mm)高射砲M1918を搭載した戦車駆逐車(対戦車自走砲)。
- 試作のみ。エンジンを車体前方に移動し、車体後方に砲を搭載した。T56のエンジンが重量に対し出力不足のため、M3中戦車と同じコンチネンタル R-975系に換装し、重量軽減のために砲の前面の防盾を撤去した。
- T56とT57はどちらもアバディーン性能試験場での試験で満足する結果を出せず、1943年2月に開発中止となった。
- M3A3 w/PaK40
- ユーゴスラビアのパルチザンが、対独戦に運用した車両で、アメリカから供与されたM3A3 スチュアートに、ドイツから鹵獲したPaK40を搭載した。
- ベルナルディーニ X1A
- 1970年代にブラジルで開発された改造型で、M3A1/A3の車体に新型砲塔を搭載し、主砲としてDEFA F1 90㎜砲を装備したもの[1]。
- 1975年から78年にかけて80両が生産され、少なくとも1990年代後半頃まで運用されていた[1]。
-
T18 HMC
-
T56 GMC
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T57 GMC
-
ベルナルディーニ X1A
- ^ a b http://www.tanks-encyclopedia.com/coldwar/Brazil/Bernardini-X1A.php
- ^ Hunnicutt, R. P. Stuart, A History of the American Light Tank; Volume 1. 1992; Presidio Press. ISBN 0-89141-462-2.
- ^ Hunnicutt (Stuart) p. 396
- ^ 「激闘戦車戦」 p.212~215
- ^ 「戦車隊よもやま物語」 p.244
- ^ Paraguay keeping M3 Stuart, M4 Sherman tanks in service by Erwan de Cherisey, Paris - IHS Jane's Defence Weekly, 29 December 2015
- ^ UTP実行委員会著『帝国陸軍陸戦兵器ガイド 1972-1945』 新紀元社刊[要ページ番号]
固有名詞の分類
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