雪 気象観測

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/28 02:37 UTC 版)

気象観測

気象学では数時間雪が続いても降水量が1 mmに達しない場合を小雪と呼ぶ。ただし、北日本日本海側の地方では小雪という表現は用いず、そのまま雪と呼ぶ場合もある[6]。また、弱い雪といった場合には、降水量が1 cm/h未満であるものも指す[6]

一方、降雪と同時に強が吹いている状態を吹雪という。また、積雪のあるところでは、降雪がなくても雪が強風により舞い上がりこれを地吹雪という。地吹雪を伴うような寒冷な強風をブリザード(Blizzard)という。吹雪やブリザードは視界を悪化させ、交通や生活に支障をもたらす。

雪強し

雪強しの天気記号(日本式)

が強く降っている状態を指す。天気記号気象通報以外で用いられることはあまりない。

日本式の天気記号では、雪の天気記号「」の右下に、「ツヨシ」の頭文字「ツ」を片仮名で入れる。この記号は1988年に新たに追加されたもので、雷強しと並んで最も新しい日本式天気記号である。

にわか雪

雪と環境

白で表されている積雪地帯のうち、広大なものが氷雪砂漠である。黄色で囲ってある部分は一般に言う「砂漠」、すなわち、高温砂漠。
積雪地域の季節変化(NASA Blue Marble
雪の保護色で合わせる生態は雪原に生きる動物の大きな特徴の一つである。そこには、白に紛れて生き延びようとする被食者と白に紛れて獲物に忍び寄ろうとする捕食者の関係が常にある。

雪と気候

現在の平均的気候では雪は一般的に、北極および南極の両極を中心とした高緯度の地域、また中低緯度の高地で見られる。赤道をはさんだ低緯度地域を中心として、雪が降らない地域も存在する。例えば日本では、沖縄県で気象庁の公式観測により雪を記録したのは3例のみであり、1977年2月17日と2016年1月24日の久米島、および2016年1月24日の名護市で、いずれもであった[18]

降雪や積雪の様子を暖かいところから寒いところへ順に見ていくと、降雪がない地域、降雪のみがあり積雪がない地域、積雪がある地域へと遷移するのがふつうである。積雪のある地域はさらに暖かいところから順に、根雪の無い地域、根雪のある地域、雪線万年雪のある地域、氷河のある地域へと遷移する。山岳や高緯度地域では、こうした遷移の分布が雪線や森林限界に関係している。雪線と森林限界の間には、積雪期以外でも凍上などが生じて周氷河地形がみられることが知られている。

ケッペンの気候区分においては、最暖月平均気温が0 ℃未満の地域を氷雪気候といい、この地域では概ね年間を通して地表は積雪、氷河、氷床に覆われ、ほぼ年間を通して雪が降る。氷河や万年雪はふつう、冬季の積雪が新雪として堆積する一方、夏季に降った雪や氷河本体が部分的に融解して流出し、その収支がバランスしている。これが崩れ、積雪が上回ると氷河が前進し、融解が上回ると氷河が後退する。

雪をもたらす気象現象を規模別に見ていく。総観スケールでは温帯低気圧やそれに付随する前線寒冷低気圧(寒冷渦)、北極前線・南極前線寒帯前線に伴う擾乱などが雪を伴った天気をもたらすことがある。メソスケールのうちメソαスケールでは、極低気圧のほか、北陸地方などに局地的大雪をもたらす日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)などが知られている[19]

雪の時期にやってくる冬の嵐(winter storm)は発達した低気圧によりもたらされ、大雪暴風吹雪低温などが冬特有の災害をもたらす。

また、アメリカカナダでは五大湖の風下にあたる地域で、大陸の寒気が暖かい湖水の上に南下してきて雪雲が発達する湖水効果雪 (lake-effect snow) が知られている。発達した積乱雲により大雪となり、ときにを伴う。雪による豪雪地帯はスノーベルト (snowbelt) と呼ばれている。同じような現象は冬季に日本海の風下になる日本海側や、ヨーロッパの沿岸部でも見られる[20][21]

日本では、前述の通り本州日本海側の各地では夏季よりも冬季の方が降水量が多く冬季の降水の多くが分布し、気候区分の種類によって区域に差はあるが日本海側気候とする。北海道は雪の期間が長く根雪が広く分布する。これらの地域で、積雪による生活や産業への支障が大きな地方自治体に対して、除雪支援や財政措置などを行う豪雪地帯が指定されている。北海道・北東北の全域、南東北から中国地方の日本海側および中央高地の一部が指定地域となっている。一方、本州・四国九州の太平洋側は日本海側に比べると雪が少ないことで知られる。関東から九州にかけての南岸平野部では、南岸低気圧の通過に伴って雪が降ることが多い。これに類似するものとして、アメリカ合衆国北東部カナダ大西洋岸のノーイースターがある。

自然環境

雪が融けてゆく際に窪地になった所などでは、吹き溜まりの雪がいつまでも消えずに残る場合があり、このような場所を雪田(せつでん、: snowbedsnow patch, etc.)と言う。雪田に形成される植物群集(植物生物群集)は、群集生態学を始めとする生物学生態学などの分野その他では雪田群落と言う(cf. 植生#植物群落)。また、山岳用語としては、高山の稜線付近に夏まで融けずに残る雪を意味し、稜線上の山小屋には貴重な水源となっている。

地形

  • 雪食地形(せっしょくちけい) - 頻度高く発生する雪崩などが山肌を削り取ることによって形成される地形[22][23]
  • 氷雪地帯 - 雪や氷で地表が覆われている地域。
  • 氷雪砂漠 - 南極大陸の氷雪砂漠 (Antarctic desert. 大陸中央部の氷原地帯)は総面積約1382万9430km²で、低温砂漠 (cool desert) を含む最広義の砂漠としては世界最大である(cf. 砂漠領域の一覧英語版)。
  • 雪原
  • 雪渓
  • 雪田
  • 雪庇

雪の利用と影響

利用

スキー場の一例

日本では雪を利用して生活や産業に生かすことを特に「利雪」と呼ぶ。

日本国内の豪雪地帯日本海側気候に当たる地域を中心として雪を様々に活用するケースが増え、「雪は邪魔者」と考えていた地域の住民が「雪は、実は貴重な資源だった」と印象を変える契機になっている[24]

雪害

雪による災害を総称して雪害という。一口に雪によるものといっても、積雪によるもの、積雪が圧縮され形成される氷の層によるもの、風を伴った降雪(吹雪)や巻き上げられる積雪(地吹雪)によるもの、気温0℃前後で湿った雪が厚い雪の層を作る着雪によるもの、積雪の塊が崩落する雪崩によるもの、積雪が融解する融雪によるものなどに分けられる。また雪と直接関連はしていないがしばしば同時に発生する低温やそれに伴う凍結も複合的に災害の要因の1つとなる。

雪害の影響

富山県立山黒部アルペンルート 立山高原道路 雪の大谷
  • 積雪による荷重の影響
    建物や建築設備では積雪や降雪の荷重により機能に影響が出ることがある[27]
    積雪が継続すると、家屋の屋根に積もる積雪が重くなり家屋を押しつぶすことがある。積雪による倒壊は家屋に限らず、屋根を持つ建造物に広く起こりうる。また、屋根の雪おろしの際の転落や道路の除雪の際の事故など雪の時期特有の事故も発生する。季節外れの雪はビニールハウスの倒壊や農作物への障害などをもたらすことがある。また、森林では積雪や着雪に加えて霧氷が重りとなって枝が折れたり幹ごと倒れたりすることがある。果樹園庭園では雪吊を行い、降雪期の折損を防止する。
  • 積雪による閉塞の影響
    建物では積雪により建物の開口部が閉塞がされると建物からの出入りなどに支障が出る[27]。また、建物では避難路などが積雪で閉塞されることがあるほか、エネルギー搬入路(LPG庫や給油口など)が積雪で閉塞されると建物内のエネルギー供給に支障が出る[27]。なお、寒さを防ぐために家屋を密閉したり、厚い積雪により空気より重い排気が滞留する環境にあると、暖房炊事などの火気使用に伴う排気が充満し、健康被害をもたらすことがある。
    交通機関では積雪が道路線路を覆うことにより交通障害が発生する。気温0℃以下の低温では圧雪や路面凍結(アイスバーン・ミラーバーン)よって路面の滑りやすさが極端に増す。
  • 吹雪による影響(交通障害)
    吹雪や地吹雪は視程(見通し)を悪化させて交通障害を引き起こすほか、吹き溜まりを発生させることがある。
  • 着雪による影響
    気温0℃前後では着雪も起きやすくなり、電線に付着して送電網通信に障害を引き起こすほか、鉄道では架線、車両の集電装置制輪子に付着して交通障害を悪化させる。
  • 落雪による影響
  • 雪崩による影響
    雪崩に襲われると厚い雪に人や建物、農地、森林などが埋没し被害をもたらす。
  • 融雪による影響
    主に冬から春にかけての時期には、融雪に伴う洪水が発生することがある。
  • その他の影響
    積雪の多い地域では、積雪が水力発電の障害になっている場合がある。これは、雪であるがゆえに水の流れが滞り、ダム湖に流れ込む水量が必然的に少なくなるからであり、一例として北海道では、夏より冬のほうが電力需要が高いにもかかわらず、冬季の水量が不足する[* 4]

対策

富山県五箇山に残る合掌造り民家
屋根の急勾配が積もった雪を滑り落ちやすくし、雪(および含んだ雨水)による荷重を軽減すべく設計されている。



注釈

  1. ^ 例えば、イヌクティトゥット語版ウィキペディアでは「雪」の項目は「ᐊᐳᑦ/aput」=「雪(一般的用法)」というタイトルが付けられている。
  2. ^ 大気中における雪片の融解現象に関する研究 気象研究所技術報告第8号、1984年3月。2章p.19-p.20に輪島、松本、日光各地のデータに基づく相対湿度と地上気温を軸にとった雨雪判別図が、同章p.15に回帰分析によって得られた近似式が掲載されている。上に挙げた二式はともに松本のもの。
  3. ^ 雪祭りは、現代では北海道の札幌市および旭川市長野県飯山市新潟県十日町市などで開催される。日本以外の地域の場合、「冬祭り」「氷祭り」「雪祭り」はあまり区別されていない。
  4. ^ 経済産業省北海道経済産業局『平成26年度北海道電力需給実績(確報)』「【表-1】総需要電力量(用途別・月別) (PDF) 」「【表-3】総発電電力量(事業用+自家用)実績 (PDF) 」(2016年6月14日)によれば、北海道の総需要電力量は、2014年(平成26年)8月は2,906,419千 kWhであるのに対して、2015年(平成27年)1月は3,776,733千 kWhであり、夏より冬のほうが電力需要が多いことが分かる。また、2014年8月の北海道の水力発電電力量は641,890千 kWhであるのに対し、2015年1月は319,457千 kWhであり、夏より冬のほうが水力発電電力量が少ないことが分かる。
  5. ^ ある主要な季語について別表現と位置付けされる季語を、親子の関係になぞらえて、親季語に対する「子季語」という。「傍題」ともいうが、傍題は本来「季題」の対義語である。なお、子季語の季節と分類は親季語に準ずる。

出典

  1. ^ a b 雪の研究室 - 北海道雪たんけん館”. 北海道雪たんけん館. 2014年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月6日閲覧。
  2. ^ a b 気象庁(1998年)『気象観測の手引き]』
  3. ^ 天気記号表”. 過去の気象データ検索 利用される方へ. 気象庁. 2012年12月2日閲覧。
  4. ^ 天気図の記号って何種類あるのですか? それと、どんなのがあるのですか?”. はれるんライブラリー 質問一覧. 気象庁. 2012年12月2日閲覧。 天気図記号の例 (PDF)”. 2012年12月2日閲覧。
  5. ^ snow grains AMS Glossaly
  6. ^ a b c d e f 気象庁 予報用語 降水
  7. ^ アスピリンスノーとは”. 北海道方言辞書. Weblio 辞書. 2017年7月11日閲覧。
  8. ^ 王子製紙 (1938年). “紙業提要”. Google Books. 2013年9月23日閲覧。 [要ページ番号]
  9. ^ アメリカ・ニューヨーク州で観測された雪結晶 (PDF)”. 菊地 勝弘. 2019年2月9日閲覧。
  10. ^ 菊地 勝弘, 亀田 貴雄, 樋口 敬二, 山下 晃「中緯度と極域での観測に基づいた新しい雪結晶の分類 -グローバル分類-」『雪氷』第74巻第3号、2012年5月、 223-241頁。
  11. ^ 小倉 2016, pp. 96-97.
  12. ^ 藤原滋水、青木輝夫「氷の色・雪の色 (PDF) 」 『天気』第40巻第3号、日本気象学会、1993年3月、 1-2頁、2012年12月3日閲覧。
  13. ^ 黄砂問題検討会中間報告書”. 大気環境・自動車対策 黄砂問題検討会報告書集. 環境省 (2004年9月). 2012年12月3日閲覧。 [要文献特定詳細情報]
  14. ^ Russia probes smelly orange snow』BBC News, 2007年2月2日
  15. ^ 第二部大気と海の科学 3-6 空気中の水蒸気 山賀進
  16. ^ 〜こんにちは!気象庁です!平成21年1月号〜[リンク切れ] 気象庁
  17. ^ 最新気象学のキホンがよ〜くわかる本[要ページ番号]
  18. ^ 雨や雪について”. よくある質問集. 気象庁. 2016年2月23日閲覧。
  19. ^ 播磨屋敏生、松尾敬世、永田雅、藤吉康志「1992年度日本気象学会秋季大会スペシャル・セッション「雪」の報告 (PDF) 」 『天気』第40巻第6号、日本気象学会、1993年6月、 pp.417-420、2012年12月3日閲覧。
  20. ^ Buffalo Lake Effect Page”. National Weather Service(アメリカ国立気象局 (2012年3月2日). 2012年12月24日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2012年12月3日閲覧。
  21. ^ Jeff Haby. “Lake effect forecasting”. theweatherprediction.com. 2012年12月3日閲覧。
  22. ^ “(風のまにまに 南会津雑記:4)只見のブナ原生林 自然首都の誇り 岡村健/福島県”. 朝日新聞デジタル(asahi.com) (朝日新聞社). (2008年5月23日). http://www.asahi.com/shimbun/nie/tenkai/kankyo4d.html 2012年5月26日閲覧。 
  23. ^ 岩槻邦男 (2003年5月26日). “世界自然遺産候補地に関する検討会について (PDF)”. (公式ウェブサイト). 世界自然遺産候補地に関する検討会. 2012年5月26日閲覧。
  24. ^ “(4)地域の暮らしと環境を活かした事例 新潟県安塚町 ~雪の活用と田舎体験~”. 平成15年度国土交通白書 (国土交通省総合政策局). (2004年7月). http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h15/hakusho/h16/html/F1012140.html 2019年2月6日閲覧。 
  25. ^ 『近畿農政局』の『農村振興』の『農業・農村の整備』の『管内国営事業(務)所のご案内』の『国営新湖北農業水利事業』の『湖北平野の自然』”. 2010年12月7日閲覧。
  26. ^ a b 越後上布 雪国で育まれた伝統の布”. 国際交流サービス協会. 2020年12月13日閲覧。
  27. ^ a b c 東北地方多雪・寒冷地設備設計要領”. 国土交通省東北地方整備局. 2017年9月9日閲覧。
  28. ^ a b 「雪」(ゆき)晩冬”. 季語と歳時記-きごさい歳時記. 季語と歳時記の会 (2011年3月14日). 2018年2月22日閲覧。
  29. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 日外アソシエーツ『季語・季題辞典』
  30. ^ 大澤水牛 (2012年). “雪(ゆき)”. 水牛歳時記. NPO法人双牛舎. 2018年2月22日閲覧。
  31. ^ a b c 日本大百科全書:ニッポニカ』「季語」
  32. ^ a b c d e f g 大辞林
  33. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 大辞泉
  34. ^ 大辞林 第三版 2481頁。
  35. ^ 大辞林 第三版 2726頁。
  36. ^ 『北越雪譜』鈴木牧之編撰〈岩波文庫〉、1996年。 [要文献特定詳細情報]
  37. ^ 火星では夜に激しい雪が降る、研究成果”. ナショナル ジオグラフィック 日本語版. 2020年12月13日閲覧。






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