防衛機制 臨床における防衛

防衛機制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/26 19:42 UTC 版)

臨床における防衛

転移

転移(transference)とは、幼児期に存在した重要な人物への感情を、現今の目の前にいる治療者人物(医師やカウンセラーなど)に向ける(転じて移す)事 [6]。この概念は精神分析における臨床現象として特に区別される。この現象には同一視と投影、置き換えと退行などが同時に複数発生する。

転移は次の二種類に分別される[6]

  • 陽性転移 - 好意、親しみ、甘え、依存、信頼、愛情、性的感情、尊敬、理想化など [6]
  • 陰性転移 - 敵意、嫌悪、馴染みにくさ、腹立ち、不振、軽蔑、恐怖など [6]

たとえば患者-治療者関係において、以下のようなやりとりがある[6]

  • 「眠れないんです、薬くださいよう」(陽性転移) - 患者は治療者に「やさしい母親」を期待している(理想化
  • 「眠れないぞ、薬くれ!」(陰性転移) - 患者は治療者を格下げしている(脱価値化

逆転移

逆転移(counter transference)とは、治療者が患者に対して抱く無意識の心の動きのこと。例えば、クライアントが診察に訪れる機会を楽しみに感じてしまう。この時点では、既に意識化されている。治療者は逆転移を足がかりにして、自身の中に想起する感情を自己点検し、コントロールする必要がある。

たとえば患者-治療者関係において、以下のようなやりとりがある[6]

  • 患者「眠れないんです、睡眠薬ください!」
    • 「仕方ないわね、今回だけからね」(陽性逆転移)- 治療者は患者を子供としてあやし、自立を阻害している。
    • 「ダメです!薬ばかりに頼っては!」(陰性逆転移)- 治療者は患者を子供のように叱り、関係を壊している。



  1. ^ 自己への向き換え(turning against the self)とは、相手に向けている感情を、自分自身に向き換えること。攻撃とは逆で、本当は相手が悪いと思っている人が、それを意識できずに自分自身を責め、抑うつ的になる場合などは典型例である。
  2. ^ 逆転(inversion)とは、感情や欲望を反対のものに変化させること。愛情を憎しみに変える、サディズム傾向をマゾヒズム傾向に変えるなど。受けたダメージを加工し、受け入れやすくする。
  1. ^ Schacter, Daniel L. (2011). Psychology Second Edition. 41 Madison Avenue, New York, NY 10010: Worth Publishers. pp. 482–483. ISBN 978-1-4292-3719-2. 
  2. ^ "Freud Theories and Concepts (Topics) AROPA. 2013. Retrieved on 05 October 2013
  3. ^ Utah Psych. "Defense Mechanisms" 2010. Retrieved on 05 October 2013.
  4. ^ archive of: www.3-S.us What is a self-schema?”. Info.med.yale.edu. 2013年2月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月5日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai B.J.Kaplan; V.A.Sadock 『カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開』 (3版) メディカルサイエンスインターナショナル、2016年5月31日、Chapt.4。ISBN 978-4895928526 
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 吉松和哉; 小泉典章; 川野雅資 『精神看護学I』 (6版) ヌーヴェルヒロカワ、2010年、Chapt.1.3。ISBN 978-4-86174-064-0 


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