郵便
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/25 08:24 UTC 版)
アメリカ合衆国
アメリカでは南北戦争で公用の郵便サービスが無料化されたものの、民間利用者に課された高額料金だけでは経費をまかなえずに莫大な補助金を食った。後に1792年の郵便局法により、連邦レベルでの郵便網充実を構想したほか、法律に基づいて連邦議会自らが郵便ルートを開拓した。なお、僻地の開拓費用は利用頻度の高い北東部の各州に転嫁・分散された。立法から1828年までに連邦議会は閉じたものを除くおよそ2300のルートを開拓したほか、1840年までに一つの郵便局がうけもつ住民の数はおよそ千人まで引き下げられた。これらの政策により、アメリカの郵便局数はイギリスの2倍、フランスの5倍ほどにもなった。またこのような郵便制度を通して新聞がアメリカ国内に普及し、1790年には50万部(住民5人に1人が読める)だったアメリカの新聞発行部数は、1840年には3900万部と一気に増加した(住民1人あたり2.7部)。しかし、新聞はアメリカの郵便物の95%(1832年のデータ)を占めたものの、郵便制度における歳入は全体の15%に過ぎず、アメリカの郵便と新聞は南北戦争以降、基本的に政治の道具となっている[23]。
世界恐慌のときは民間銀行の倒産が相次ぐ中、郵便貯金へ資金が流れた。郵便貯金の預金残高は1931年6月には3億5千万ドルだったが、1933年6月には12億ドルとなった。民間金融機関の総預金額に占める郵便貯金の割合は0.3%から3%に達した[24]。
1970年3月18日、ニューヨーク州の郵便配達人(約5万人)が賃上げを要求し、初めてストライキを実行。1日当たり約3,500万通の郵便物が滞留した。公務員のストライキは違法であり、最高1年以下の禁固または1000ドル以下の罰金を受ける可能性があったが、ストライキはニュージャージー州、コネチカット州にも広がりを見せた。当時は支払い決済を小切手の郵送で済ませることも可能な時代であり、社会を混乱させた[25]。
アメリカの郵便事業は現在、公共企業体であるThe United States Postal Service(アメリカ合衆国郵便公社)が行っている。ただし、あくまでも郵便だけを扱い、貯金事務や簡易保険事務などは行っていない。基本サービスとしては次の3種類を行っている。
- Express Mail
- 3種類の中で最も速い速達。集配翌日の正午 - 15時までに受取人に配達することを依頼人に保証しており、時間内に届かなかった場合は依頼人に料金が返却されることとなっている。また、無料で$100までの保険を付加することも可能。これはその速達性から、依頼主との信用関係を確保するためである。Express Mail Flat-Rate Envelopeという専用封筒で送ると、重量に関係なく一律$13.65の料金で送ることができる。封筒は無料で、各郵便局に置かれている。その他、インターネットで依頼封書・小包が現在どこにあるかを確認することができる。
- First-Class Mail
- アメリカ国内であれば1日から3日以内で配送される。機密性の高い文書(請求書の書類や法定文書など)に利用される。U.S.P.Sの定型はがきの大きさであれば、料金は23セント。それより大型のものであれば、封書の料金(37セント)となる。ただし長方形以外の変形封書は追加料金がかかる。
- Priority Mail
- アメリカ国内であれば3日以内で配送される。ただし荷物には大きさの制限があり、縦・横・高さの合計が180インチ(約45cm)以下で、重さは70ポンド(約32kg)までのものとしている。これもPriority Mail Flat-Rate Envelopeという専用封筒を利用すると、送り先や重量に関係なく一律$3.85で送ることができる。U.S.P.Sのウェブサイト[26]でプリントアウトした宛名レーベルを使用すると、無料で配達確認サービス(Delivery Confirmation)が付加される。
U.S.P.S.は他にも次のサービスも提供している。
- Parcel Post
- 小包の配送サービスで、日本郵政のゆうパックに相当。アメリカ国内であれば2日から9日で配達される。縦・横・高さの合計が130インチ(約330cm)、重量70ポンド(約32kg)の大きさまでの制限がある。
- Media Mail
- 本やCD、DVD、ビデオテープなどの配送サービス。アメリカ国内であれば8日ほどで配達される。料金はParcel Postよりも安価。
アメリカではされる確実性が高いことから、バスケットボール選手のカール・マローンは確実に得点する(ゴールに配達する)という意味で「the Mailman(郵便配達員)」と呼ばれていた。
注釈
出典
- ^ “郵便(ゆうびん)の意味”. goo国語辞書. 2019年11月24日閲覧。
- ^ a b 広辞苑第六版「郵便」
- ^ a b c d e f g h 星名定雄 2006 第7章 中世ヨーロッパの成立と飛脚の台頭
- ^ 星名定雄 2006, pp. 227–228 第8章
- ^ 阿部謹也『中世の窓から』朝日新聞社 1981年、164-165頁。
- ^ 阿部謹也『中世の窓から』朝日新聞社 1981年、168-169頁。
- ^ 北岡敬『そこが知りたい【事始め】の物語』雄鶏社、1995年4月。ISBN 4-277-88095-9。
- ^ Leopold Joseph, The Evolution of German Banking, London, Charles & Edwin Layton, 1913, chapter 3.
- ^ Isabella Löhr, Roland Wenzlhuemer, The Nation State and Beyond: Governing Globalization Processes in the Nineteenth and Early Twentieth Centuries, Springer Science & Business Media, 2012, p.56.
- ^ Schweizerische Nationalbank, Archiv Bern, Abmachungen mit der BIZ, Archivschachtel Nr.112.
- ^ McKittrick Collection, Movements of Gold Sight Accounts for Postal Transactions 1941-44 by Roger Auboin vom 1.10.44.
- ^ タイムズ 1980年6月18日
- ^ “信書便事業者一覧”. 総務省 (2013年). 2013年8月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 逓信省 1921.
- ^ 郵便為替規則(大政官府告書明治7年第90号)、明治八年(1875年)一月二日ヨリ駅逓寮二於テ郵便為替規則ノ通リ三拾圓以下少額ノ為替方法施行候
- ^ 逓信事業史 2 逓信省編
- ^ “郵便法の一部を改正する法律(昭和41年6月8日法律第81号)”. 国立国会図書館 日本法令索引. 2021年2月14日閲覧。
- ^ “郵便法の一部を改正する法律・御署名原本”. 国立公文書館 デジタルアーカイブ. 2021年2月14日閲覧。
- ^ a b “昭和48年版 通信白書「郵便物の種類体系と制度の合理化」”. 郵政省 (1974年3月). 2020年3月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月24日閲覧。
- ^ 堀内恵彦 (1967年5月25日). “地質ニュース 1967年5月号 No.153” (pdf). 切手を集める人のために(8). 工業技術院 地質調査所. p. 46. 2021年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月20日閲覧。
- ^ “はがきや手紙などの普通郵便 きょうから土曜日の配達取りやめ”. 日本放送協会(NHK) (2021年10月2日). 2021年10月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月2日閲覧。
- ^ “2021年10月から郵便物(手紙・はがき)・ゆうメールのサービスを一部変更します。”. 日本郵便. 2021年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月2日閲覧。
- ^ Daniel R. Headrick, When Information Came of Age: Technologies of Knowledge in the Age of Reason and Revolution, 1700-1850, Oxford University Press, 2000, chapter.6. Communicating Information - Postal and Telegraphic Systems
- ^ 山田伸二『大恐慌に学べ』東京出版、1996年9月、29頁。ISBN 4-924-64459-5。
- ^ 史上初の郵便スト ウォール街では飛脚便『朝日新聞』1970年(昭和45年)3月20日夕刊 3版 11面
- ^ U.S.P.Sのウェブサイト
- ^ dpwn.de
郵便と同じ種類の言葉
- >> 「郵便」を含む用語の索引
- 郵便のページへのリンク