自殺関与・同意殺人罪 錯誤の問題

自殺関与・同意殺人罪

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/28 05:07 UTC 版)

錯誤の問題

被害者が自殺を決心する過程や、殺害に対して同意を与える決心をする過程で錯誤があった場合にどのように扱うかが問題となる。 心中を持ちかけ、後から追死すると騙して自殺させた場合について、自殺の決意は「真意に添わない重大な瑕疵ある意思」であり、自殺者の自由な意思決定に基づくものではないとして、殺人罪の成立を認めた判例がある(最判昭和33年11月21日刑集12巻15号3519頁)。 この判例は、追死するという事が本質的に重大な事実であり、それに対する錯誤があるので自殺の決意は真意に基づくものではないと述べるが、学説の中には死という結果それ自体に対しては錯誤がないから、重大な瑕疵があるとは言えず、自殺教唆罪が成立すると述べるものもある。

座間9人殺害事件では、弁護人は被害者は自殺願望があるとして同意殺人罪の成立を主張したが、裁判所は「『死にたい』という発言は殺害の同意には当たらない」として強盗殺人などの成立を認め死刑判決を下している。

着手時期

同意殺人罪の着手時期については、殺人罪と同じである。自殺関与罪については、自殺の実行行為開始時であるという説と、自殺を教唆・幇助した時であるという説が対立している。両者の違いは、自殺関与が処罰される根拠の違いとリンクしている。

自殺関与を共犯と理解するなら、通説的見解である共犯従属性説により、正犯が実行に着手しないと共犯も成立しないのであるから、自殺関与罪の着手時期は自殺の実行開始時であると説明できる。一方、自殺関与を独立した犯罪と理解するなら、その犯罪行為の実行時、即ち自殺を教唆・幇助した時であると説明できる。

両説の違いは、自殺を教唆・幇助された者が、決心しながら翻意して実行しなかった時に生ずる。前者なら犯罪不成立だが、後者なら自殺教唆・幇助の未遂罪が成立する事になる。

関連項目


注釈

  1. ^ 簡単に言うと「自殺しろ」など言って人を自殺させようとすること
  2. ^ (自殺のための道具や場所、知識などを提供すること)
  3. ^ 嘱託者と被害者は同一である。

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