第一種過誤と第二種過誤 語源

第一種過誤と第二種過誤

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 04:00 UTC 版)

語源

1928年、著名な統計学者のイェジ・ネイマン(1894年 - 1981年)とエゴン・ピアソン(1895年 - 1980年)は「特定の標本が、ある個体群から無作為に選ばれたと判断できるかどうかの判定」という問題を議論した[5]。そして、Davidは「'無作為な'という形容詞は標本の抽出方法に対するもので、標本そのものにかかるのではない」と指摘した[6]

彼らは「過誤の2つの源泉」を次のように表した:

  • (a) 採択すべき仮説を棄却する過誤
  • (b) 棄却すべき仮説を採択する過誤[7]

1930年、彼らは「過誤の2つの源泉」の概念を次のように練り直した:

…仮説検定では次の2点を常に考慮しなければならない。 (1) 我々は、真の仮説を棄却してしまう可能性を必要に応じて低く抑えることができなければならない。 (2) 偽と思われる仮説が棄却されるような検定でなければならない。 [8]

1933年、彼らはこれらの「問題は、仮説の真偽が確信を持って断言できるような場合には存在しない」と述べた[9]。彼らはまた、「対立仮説群」[10]から特定の仮説を棄却または採用する決定において、過誤が容易に発生するとした。

…(そして)それらの過誤は以下の2種類に分けられる:

  • (I) Ho(すなわち検定対象の仮説)が真であるのに棄却する。
  • (II) 代替の仮説 Hi が真であるのに Ho を採択した[9]

ネイマンとピアソンの共同執筆論文では、Ho が常に「検定対象仮説」を表[11]。添え字は "O" であってゼロではない(「オリジナル」の意)。

同じ論文[12]で、彼らは「2つの過誤の源泉」を第一種の過誤(errors of type I)および第二種の過誤(errors of type II)と呼んでいる[注釈 3]


注釈

  1. ^ ごまかしなどの他の意図的な誤りを除く。より網羅的な説明はAllchin (2001) を参照されたい。
  2. ^ a b 観測値と予測値の誤差の大きさが観測値の大きさとは無関係である。
  3. ^ 英語では、type I および type II という表記が普通であって、type-I や type-II、あるいは type 1 や type 2 とは書かない。
  4. ^ 検出アルゴリズムや検査法を開発する際に、偽陽性と偽陰性のリスクのバランスを考えねばならない。通常、そのアルゴリズムが一致と判断する際の差分のしきい値がある。しきい値が高ければ、偽陰性が増え、偽陽性が減る。
  5. ^ 例えば、Onwuegbuzie & Daniel (2003) では新たに8種類の過誤を定義している。
  6. ^ 1981年のアメリカ科学振興協会会長[1]
  7. ^ なお、ライファはこの回顧の中で「第三種過誤」を間違ってジョン・テューキー(1915年 - 2000年)の作った用語としている。
  8. ^ 偽陽性の発生率は語彙を制限することで減らすことができる。しかし、この作業にはコストがかかる。語彙を決定するには専門家の作業が必要になり、各文書に適切なインデックスを付与するという作業も発生するからである。
  9. ^ このような新生児スクリーニングについて、通常のスクリーニングに比較して偽陽性となる確率が12倍という研究結果がある (Gambrill, 2006. [2])
  10. ^ 偽陽性率が高いため、米国では10年間の間に受診した女性の半数が偽陽性の結果を受け取っている。このため、再検査などに毎年1億ドルかかっている。実際、陽性とされたうちの90%から95%が偽陽性であるという。
  11. ^ 偽陽性率が低いのは、結果を2回チェックしているため。また、2回目ではしきい値を高く設定しており、検査の統計的検定力を低下させているとも言える。

出典

  1. ^ 医歯薬英語辞書
  2. ^ false negativeの意味・使い方. 英辞郎.
  3. ^ a b JIS Z 8101-1:2015 統計 − 用語と記号 − 第1部:確率及び一般統計用語”. 2019年4月28日閲覧。
  4. ^ 川出真清、2011、「仮説検定 望ましい仮説検定とは:第1種のエラーと第2種のエラー」、『コンパクト統計学』初版、8巻、新世社〈コンパクト経済学ライブラリ〉 ISBN 978-4-88384-156-1 p. 165
  5. ^ Neyman and Pearson, 1928/1967, p.1.
  6. ^ David, 1949, p.28.
  7. ^ Neyman and Pearson, 1928/1967, p.31.
  8. ^ Neyman and Pearson, 1930/1967, p.100.
  9. ^ a b Neyman and Pearson, 1933/1967, p.187.
  10. ^ Neyman and Pearson, 1933, p.201.
  11. ^ 例えば Neyman and Pearson, 1933/1967, p.186 参照
  12. ^ Neyman and Pearson, 1933/1967, p.190.
  13. ^ Larry Riddle (2014年1月10日). “Florence Nightingale David”. Biographies of Women Mathematicians. 2015年2月28日閲覧。
  14. ^ David,1947, p.339.
  15. ^ Mosteller, 1948, p.61.
  16. ^ Kaiser, 1966, pp.162-163.
  17. ^ Kimball, 1957, p.134.
  18. ^ Raiffa, 1968, pp.264-265.
  19. ^ Mittoff and Featheringham, 1974, p.383.
  20. ^ Raiffa, 1968, p.264.
  21. ^ Morascuilo and Levin, 1970, p.398.
  22. ^ 心霊/超常現象の偽陽性の証拠例を示しているサイトとして Moorestown Ghost Research がある。





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