病理科 病理科の概要

病理科

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/09 14:31 UTC 版)

  • 医政局や病理学会の努力にもかかわらず、「病理診断科」を標榜している病院は、国立大学附属病院・関連施設では約19%にとどまっているという[2]。日本病理学会は「診療機関における「病理診断科」の名称使用のお願い」[3]を平成25年に公表した。

概説

臨床病理科、臨床検査科、臨床研究科、病理診断科、検査部、病理部、病院病理部などの名称も使われている。以前は、看護部や薬剤部と一緒に診療支援系部門に包括されていることもあったが、診療系部門に再編され始めている。

  • 地域医療において病理診断・臨床検査(病理専門医、臨床検査専門医)を掲げる医療施設ができ、主治医からだけではなく専門医からも説明を受けることが可能ならば地域住民にとっては心強い。数は少ないものの病理診断科を標榜する診療所開設の届出が始まった。

臨床検査科という場合は臨床検査(検体検査、病理検査、生理検査、画像診断など)を行う検査室を指していることが多い。規模が大きい医療施設等では臨床検査専門医が専従している場合もある。

病理診断科という場合は病理標本作製・細胞診検査(細胞検査士によるスクリーニング)等の病理学的検査と病理診断細胞診断を実施する部門のことが多い。病理診断科に所属する病理医・病理専門医の主要業務のひとつは病理診断である。病理診断は病気や病変部の確定的診断であり、その結果により治療が選択され、患者の健康・生命等に直接関係する。そのため病理診断は絶対的医行為であると考えられている。がん診療拠点病院等では病院入り口にある標榜診療科の一覧に病理診断科をみることができる。病理医に期待されているのがファースト・オピニオンセカンドオピニオンへの対応である。たとえば「がんと診断されたが、自分のがん細胞はどういうものか病理医からも説明を受けたい」、「これから治療を受けるが、その前に一度、顕微鏡でがん細胞を見ておきたい」などの要望に対応することである。日本病理学会ホームページに「診療標榜科名「病理診断科」の実現を受けて(一般の皆様へ)」の記事が掲載されている[4]。病理診断科の主要業務である病理診断、細胞診断(検査)の約3割が大学関連および病理学会認定・登録施設で行われているに過ぎない[5]病理診断科のない医療施設では、病理材料が外部施設へ検体検査として外注され作製された病理標本の病理学的検査報告書に基づいて、臨床医が病理判断している。

日本における病理科の背景

医師が勤務する部門でありながら、病院内に設置されている病理科が診療科として位置づけられてこなかった。たとえば、1996年の医道審議会では病理科標榜に関して「患者を直接診療する科ではない」として、病理科の標榜は「保留」とされた[6]。若手医師にとって病理を専門領域として選択しにくかったといえる。

2008年4月からは病理診断科や臨床病理科が標榜診療科となった。医療機関の医療機能情報等がインターネットで公開され、また医療機能評価がなされるようになり、医療機能における、病理診断科の役割が見直されている。医療機関内での病理診断科の存在が評価されるようになったが、病理診断科がない医療機関での病理診断機能・臨床病理機能についてはあまり議論されていないようである[7]

病理学的検査は、臨床検査技師等に関する法律で、登録衛生検査所が受託できるとされていたために、病理診断細胞診断を含みながらも診療報酬点数上の「病理学的検査」として衛生検査所で受託されていた。病理材料の多くが安価に外部委託されていることは一般的には知られていない。医療機関内病理診断科での病理診断は3割であり、残り7割は検体検査として外注される。検査センターからは病理所見の記された病理学的検査報告書が届くので、報告書に基づき、病変について臨床医が判断する。

2次医療圏での病理診断科不足

日本医師会の報告[8]病理診断科の不足が示された。診療科別の最低必要な医師数(現状との比較)では、病理診断科は3.77であり、医師不足についてマスコミがしばしば取り上げる婦人科の2.91よりも病理医の不足は深刻であるという。この数値は「最低必要医師数倍率=必要医師数÷(常勤医師数+非常勤医師の常勤換算数)」であり、値が大きいほどその診療科の医師が不足していることを示している。

  • 病理学的検査が長らく検体検査として医療関連サービスに含まれ医療機関外に外注されてきた。医療関連サービスについては、市場メカニズムによる品質向上や低価格化等が期待されている。検査センターでは受託した病理材料について標本を作製している。
  • 検査センターで作製した病理標本については病理医が所見を記載するが、検査センターは医療機関ではないので、報告内容は病理医の意見または助言であり病理診断ではない。また検査センターは営利企業も多く、医療機関ではないので、患者診療録はなく、保険証情報もないので診療報酬評価しようにも評価ができない。
  • 作製された病理標本が医療機関にはないので、医療機関での修練している病理専門医が見ることができない状態が続いている。2次医療圏の病理材料について作製された病理標本を、地域の病理医が若手病理医とともに、医療機関で診断する体制が必要であり、その医療機関が病理診断科ということができる。病理診断を医療機関内で行うことが、病理診断科不足が解消につながるのである。
  • 病理医診断科不足は病理学的検査外注に連動しており、作製された病理標本の診断を病理診断科医療機関で行えるような体制がなければ、病理診断科は増えないことを日本医師会に伝えることも日本病理学会の責務と思われる。

  1. ^ 平成20年2月27日官報 号外第36号 政令第36号 11-12頁
  2. ^ http://pathology.or.jp/news/pdf/meishou-130331.pdf
  3. ^ http://pathology.or.jp/news/whats/meishou-130331.html 診療機関における「病理診断科」の名称使用のお願い
  4. ^ http://pathology.or.jp/news/rijichou/shinryouhyouboukamei080512.html 日本病理学会「診療標榜科名「病理診断科」の実現を受けて(一般の皆様へ)」の記事
  5. ^ 病理と臨床 2006 Vol.24 No.8 pp877-884 文光堂
  6. ^ 深山正久:1.外科病理学の過去,現在、そして近未来,病理と臨床 臨時増刊号 2008, 26:7
  7. ^ 病理学と社会 第1部 医療の中の病理学. 病理と臨床 臨時増刊号 Vol.27 2009年4月22日発行
  8. ^ http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20081203_1.pdf 医師確保のための実態調査 定例記者会見 2008年12月3日 社団法人日本医師会
  9. ^ http://pathology.or.jp/news/pdf/surveyPA2_070227.pdf 日本病理学会「「病理検査技師との関係に関する小委員会」主催の病理検査士(PA)に関するアンケートの総括」
  10. ^ 佐々木毅:病理診断報酬の変遷と今後の展望。病理と臨床2014. 32:1172
  11. ^ http://plaza.umin.ac.jp/~csp/document/20060515PA.html 病理検査士(仮称)制度導入に反対する意見書
  12. ^ 佐々木毅:病理診療報酬の変遷と今後の展望。病理と臨床 2014,32:1172
  13. ^ 特集 病理学の教育・人材育成. 病理と臨床 2010 Vol.28 No.1
  14. ^ http://pathology.or.jp/news/pdf/mhlw_pc_mhlw_c_050627.pdf 病院における検体検査業務の受託要件の緩和(案)に対して寄せられた意見について
  15. ^ http://shahojsp.umin.jp/q&a%20combined.htm 日本病理学会・社会保険小委員会 Q&A/質問
  16. ^ https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/01/dl/s0130-11j.pdf
  17. ^ 「診療所開設許可に関する疑義について」(昭和23.8.12 医312)
  18. ^ http://www.medis.or.jp/2_kaihatu/denshi/index.html





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