片仮名 歴史

片仮名

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 19:26 UTC 版)

歴史

平安時代~明治時代

明恵上人歌集 ACE1248

吉備真備(695 - 775年)が片仮名を作ったという説があるが、これは俗説に過ぎない[注釈 1][1]。漢字の一部を使いその文字の代わりとして用いることは7世紀中頃から見られるが[2]、片仮名の起源は9世紀初めの奈良の古宗派の学僧たちの間で漢文を和読するために、訓点として借字(万葉仮名)の一部の字画を省略し付記したものに始まると考えられている。この借字は当初、経典の行間の余白などにヲコト点とともに使われていた。それが小さく素早く記す必要から字形の省略・簡化が進んだ結果、現在見る片仮名の原型となり、ヲコト点に成り代わって盛んに訓読に利用されるようになった。片仮名はその発生の由来から、僧侶や博士家などによって漢字の音や和訓を注記するために使われることが多く、ごく初期から漢字仮名交り文に用いた例も見られる。後には歌集や物語をはじめ、一般社会の日常の筆記にも使用範囲が広がったが、平仮名で書かれたものが美的な価値をもって鑑賞されるに至ったのと比べると、記号的・符号的性格が強い。当初は字体に個人差・集団差が大きく、10世紀中頃までは異体字が多く見られ、時代を経るに従って字体の整理が進み、12世紀には現在のそれと近いものになった。

平安時代中期に成立した『うつほ物語』の「国譲」の巻において「書の手本」の中に片仮名があげられており[3]、これにより平安時代中期には、片仮名がひとつの文字体系であると認識されていたことがわかる[4]。なお江戸時代の学者伴信友は、平安時代後期に成立したと見られる『堤中納言物語』の「虫めづる姫君」に、虫愛づる姫君が男から送られた恋文に対して「仮名(平仮名)はまだ書き給はざりければ、かたかんな(片仮名)に」返事を書いたという記述があることから、当時の文字の習得が片仮名から始めて平仮名に進んでいったとしている。しかし小松英雄はこの説明について、「虫めづる姫君」に見られる記述は虚構である物語における特殊な例であり、実際には初めから仮名(平仮名)を美しく書けるように習得するのが、当時の女性にとっては一般的であったとして退けている[5]

明治初期のころの字体はJ・C・ヘボン著『和英語林集成』の付表などにもみられる[6]。平仮名に比べ学問的傾向が強いので、戦前の日本ではより正式な文字とみなされ、法令全書その他の公文書で用いられ、教育面でも平仮名に先行して教えられた。また、[v]の発音を表記するため、福澤諭吉によって「////」が考案された。

異体字の抑圧

明治33年(1900年)、平安時代から続く片仮名のうち、「小学校令施行規則」の「第一号表」に「48種の字体」だけが示され、以後これらが公教育において教授され一般に普及するようになり、現在に至っている。規則制定の理由は一音一字の原則に従ったためである。これにより「」と「」が用いられなくなった。

仮名遣いの改変

第二次世界大戦後、現代仮名遣いが制定された。これにより、特殊な場合を除いて「」と「」が用いられなくなった。


注釈

  1. ^ 古くは南北朝から室町時代にかけての人物明魏(花山院長親)の著『倭片仮字反切義解』の序文に、「…天平勝宝年中に到りて、右丞相吉備真備公、我が邦に通用する所の仮字(仮名)四十五字を取り、偏旁点画を省きて片仮字(片仮名)を作る」とあり、1940年代の一部の書物においても片仮名の起源は諸説あるとし、片仮名は漢字の一部から吉備真備が工夫して創作したのではないかとの記載が見られる。

出典

  1. ^ 『国語学大系』第四巻(厚生閣、1938年)および『新しき図案文字の描き方 初心者の為に』(国民書院、1940年)「片仮名の起源」(10頁)[1]参照。
  2. ^ 正倉院文書 御野国大宝二年戸籍(702年)、石神遺跡出土木簡(665年)における「牟」字の「ム」表記など。
  3. ^ 『三省堂大辞林』「平仮名」の項
  4. ^ 『三省堂大辞林』「片仮名」の項
  5. ^ 小松英雄 『徒然草抜書』〈『講談社学術文庫』947〉 講談社、1990年 ※第二章「うしのつの文字」
  6. ^ J・C・ヘボン 『和英語林集成』〈『講談社学術文庫』477〉 松村明解説 1989年 巻頭・付表
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 國語學大系 P.166-171 福井久蔵 1940年
  8. ^ a b c d 國語學大系 P.100 福井久蔵 1940年
  9. ^ a b c d e f g h i j k l 新井白石同文通考 中之三
  10. ^ 國語史: 文字篇 P.248 山田孝雄 1937年






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