棒銀 対振り飛車棒銀

棒銀

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/07 10:10 UTC 版)

対振り飛車棒銀

振り飛車対策としての棒銀は代表的な急戦策である。直接の狙いは振り飛車側の角頭であるが、実際には多種多様な変化手順があり、戦法としては高級である。振り飛車の対応により、銀はいずれ▲3七に退却して▲3六あるいは▲4六に立て直すことになるか、あるいは▲1五銀とただ捨てし、飛車を成り込む「加藤流」の強襲も含んでいる。振り飛車対策には居飛車の持久戦策が全盛期にある今でも、棒銀がなお有力戦法であることには変わりない。

対四間飛車

四間飛車においては右銀を2六へ持っていき、▲3五歩と突く。後述の斜め棒銀と異なり、振り飛車の決戦の常套手段である△4五歩が銀に当たらないのが特徴。1筋の突き合いがない場合は▲1五 - ▲2四と活用する手筋もあり、また1筋の突き合いがある場合は1筋の突き捨てを絡めて攻める変化もある。ただし変化の軸は3筋の角頭で、▲3五銀と自然に進出できたならば一般に成功。▲4五歩の突き捨てからの角成りなど、非常に複雑な変化を伴った大型定跡である。飛車は場合によって2 - 4筋に移動させる。

第5-1図の局面がよく指されており、ここから振り飛車側対策も△4五歩、△5一角、△4二角、△6五歩、△2二角など、手段が手広い。また第5-2図のように振り飛車側から角交換する場合もある。このときは先手は第5-3図のように進出した銀を▲3七銀~▲4六歩~▲4六銀とする手順や、▲6六歩~▲6七金~▲3五歩(同歩なら同銀で突破を図ることができる)で以下▲3四歩△同銀▲3五歩~▲3七銀~▲3六銀と組み替えて▲2四歩△同歩▲3七桂とする指し方が多い。

△ なし
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△ 角
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△ なし
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振り飛車側の対策が非常に進んでいるが、加藤一二三が現役時代に孤軍奮闘し、日々定跡を進化させ続けた。また、後手番では一手の差が大きく棒銀で戦うのは無理とされているが、加藤は△4一金を保留したまま戦うなど、後手番でも棒銀で勝負を挑んでいる。その結果、加藤相手には普段居飛車党の棋士が四間飛車で挑む場面もしばしば見られた。

△ なし
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△ なし
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△ 角
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また、第5-4図のように右四間飛車の構えから、9筋を相居飛車の棒銀のように端攻めする指し方もある。こうした攻撃方法は地下鉄飛車が知られているが、地下鉄飛車よりも陣形を組む手順がかからない。第5-4図以下は△同歩▲同銀△同香(△9三歩には▲7七桂~▲8五桂)▲同香△9三歩▲6六角△8四銀(△8二銀には▲9八飛)▲9九香△9五銀▲同香△1一香▲9八飛(第5-6図)と、攻撃の布陣が続く。後手は△9四歩▲同香△同香▲同飛△9一香としても、▲9三歩△同香には▲同角成△同桂▲9八香△9二歩に▲9五飛で▲9四歩を狙う、と矢倉の端攻めのような攻撃が可能。途中の▲9八香は△4五歩から△8八角打ちの反撃から9九が空なりになる仕組み。

対向かい飛車

向かい飛車の場合△5二金型ならば3筋を狙う四間飛車の場合と同様の進め方となる。

一方、△3二金型を取った場合、居飛車側が▲3七に銀または桂馬を上げて対抗することがあるが、銀を持っていった場合にそのまま棒銀の形となることもある。通常は▲3七銀~▲2六銀~▲3五歩の攻めを食らわないよう第6-1図のように▲3七銀の瞬間に△4五歩という手段(以下▲5五歩△5四歩▲4五歩△5五歩▲4六銀左などの展開)や第6-2図のように△5四銀として玉頭銀を狙う(先手は第6-2図の▲3五歩△同歩▲3八飛~▲3五銀などの展開)ことが多い。

△ 歩
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△ 歩
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対中飛車

中飛車に対する棒銀策は、大山康晴大内延介などの得意戦法の一つであるツノ銀中飛車に対して試みられていた。この対中飛車棒銀も1983年のレポートでは 7局指されている[2]

一例として第7-1図から△5一飛▲3五歩△同歩▲2六銀△4五歩(第7-2図)など。中飛車側は第7-1図のときにも△4五歩の反撃の手段があり、以下▲同歩△8八角成▲同玉△5五歩▲同歩△同飛▲4八飛の展開が常に予想されるので、先に4八飛としてから2六銀と繰り出すのもある。

△ なし
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△ 歩
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ただしその主要な変化である「振り飛車側が袖飛車に転じての7筋からの逆襲」に対し、銀が2筋に取り残される場合がある。加藤一二三も中飛車に対しては棒銀策は取らずに▲3八飛 - ▲3五歩の袖飛車戦法を愛用し、大山らと死闘を繰り広げた。

現在主流のゴキゲン中飛車に対しては、棒銀よりも「超速3七銀」のような早繰り銀が有力な対策と見られている。

対三間飛車

△ なし
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△ なし
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△ なし
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三間飛車に対する棒銀策は、四間飛車に対する棒銀策と比べて居飛車が一手損する形になるため、先手四間飛車に対して棒銀が困難なのと同様に、通常は無理とされている。

但し、三歩突き捨て急戦で第8-1図のように振り飛車側が△6三金や△7四歩を嫌って△2二飛と用心した場合に▲3七銀と棒銀を決行する順はある。先手が▲3七銀とすれば振り飛車側も△4三銀~△3二飛と戻す手順が生じるためであるが、▲3七銀以下△4三銀▲2六銀△3二飛▲3八飛△1二香▲3五歩△4五歩、あるいは▲3七銀△4三銀に▲4五歩(第8-2図)で以下△4二飛(この場合△同歩は▲3三角成△同桂▲6六角)▲4八銀~▲3七桂と、4五歩仕掛けの戦術に鞍替えるなどの指し方もある。また、先手三間飛車で同様の進行ならば振り飛車側の左金が先に4七にある場合も考えられ、第8-3図のように△7三銀と動く順もある。図から▲6七銀△8四銀▲7八飛△7二飛▲9八香△5三銀の進行では、▲6八角△7五歩▲5七角から6八金の順はないので、▲5九角△7五歩▲4八角△7六歩▲同銀△6五歩に、▲5五歩△同角▲6七銀もしくは▲5七金、また▲5九角とせずに他の手を指し△7五歩を待って▲6五歩、を振り飛車側が選択することになる。

△ なし
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△ 歩
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△ 歩
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また、第8-3図のような△5三銀型(▲5七銀型)三間飛車で、先手が4五歩の仕掛けをみせたところに△2二飛として仕掛けを封じにきた場合も3七からの棒銀にいくのが、プロでも過去に類似戦型がいくつか指されている。第8-3図以下▲3七銀△4三金▲3五歩△同歩▲2六銀△3二飛▲3八飛がひとつの進行例。第8-4図からは後手三間飛車側は△4五歩の反撃手段もあるが△1二香などと指して攻めを誘うことも可能。以下▲3五銀に△1五角と出ると、この形では通常の棒銀・3八飛戦法と違って4四の地点に2つの駒が効いているので、▲4四銀からの2枚替えは成立しないが、通常の4六銀右戦法と違って4六の歩が突いているのでそれを活かして 居飛車側は▲3四歩と抑える。これは以下△3七歩に▲同桂と取り△3四金に強く▲4五桂と跳ねだすと(第8-5図)、△4五同金と取ることができなくなっているためである。また棒銀側からも△1五角~△3七歩の筋に対して▲1六歩としてから攻めにいく手順もある。


注釈

  1. ^ 特に1997年第55期名人戦第6局が知られる。

出典

  1. ^ 飯塚 祐紀(著) 最強棒銀戦法:決定版 棒銀の必勝バイブル (スーパー将棋講座) 創元社 2008
  2. ^ 高橋道雄「緊急レポート居飛車vs振飛車プロ間における最近の序盤傾向の研究」第2回 三間飛車中飛車編(『将棋世界』1983年2月号所収)





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