有機質肥料 微生物由来

有機質肥料

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/15 08:32 UTC 版)

微生物由来

酵母由来の肥料
酵母由来の核酸細胞壁が登録有効期間6年の普通肥料(副産植物質肥料)として販売されている。酵母の核酸は、ウイスキー蒸留廃液、廃糖蜜アルコール発酵廃液、酵母の抽出液から精製分離して得られる。この廃液を濃縮して乾燥したものが酵母核酸肥料となる[29]
菌体乾燥肥料
培養によって得られた菌体、または菌体から抽出された脂質や核酸を乾燥させたもの。あるいは、食品工業、パルプ工業、発酵工業またはゼラチン工業(なめし皮革屑を原料として使用しないものに限る)の廃水を活性スラッジ法により浄化する際に得られる菌体を加熱乾燥したもの。肥料取締法では登録有効期間が3年の普通肥料に指定されている[86]。窒素全量5.5%以上または(リン酸または加里を含有する場合)4.0以上を含む[29]。菌体乾燥肥料の利用には、食品工業や浄水場で生じる汚泥を有効活用するとともに、汚泥が環境に放出されて汚染源となる危険をなくすという利点がある[87]。2010年時点での生産量は26,234トンであった[88]

生物肥料

いわゆる生物肥料(biofertilizer)とは、ある種の生きた微生物を内包する有機質肥料である。この微生物は植物成長促進根圏微生物(plant-growth promoting rhizobacteria:PGPR)と呼ばれ、種子、植物表面、または土壌に与えられた場合、根圏または植物内部に定着する。そして、宿主植物への主要栄養素の供給量や利用可能性を増大させ、それによって宿主植物の成長を促進させる[89]。生物肥料中のRGPRは窒素固定で栄養素を付加し、リンを可溶化し、更に、成長促進物質の合成によって植物の生長を刺激する。

生物肥料は化学肥料や農薬の使用を減らすことが期待されている。生物肥料は、土壌中における自然の栄養素循環を活性化させ、土壌有機物の蓄積を促す。生物肥料の使用は、持続可能性と土壌の健康を向上させながら、植物を健康的に生育させることができる。RGPRは、植物の栄養素の要求を満たすことと土壌肥沃度を高めることにおいて非常に有益であるとされる。したがって、RGPRの生育を阻害する化学物質を生物肥料は含んでいない[90]

リゾビウム属アゾトバクター、アゾスピリラム属および藍藻類などの生物肥料は長期間使用されてきた。リゾビウム属細菌はマメ科植物に使用されている。アゾトバクターは小麦、トウモロコシ、マスタード、綿、ジャガイモ、およびそのほかの野菜類に有効な可能性がある。アゾスピリラム属細菌の投入は主にモロコシ雑穀、トウモロコシ、サトウキビ、および小麦で推奨されている。藍藻類は一般的なシアノバクテリアNostoc属、Anabaena属あるいはAulosira属である。空気中の窒素を固定し、植物に供給する。低地と高地ともに水田での作物の生育を助ける。Anabaena属はAzolla属の窒素量を60 kg/ha/期だけ増加させ、土壌有機物を豊かにする[91]


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