戦象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 09:37 UTC 版)
問題点
戦象には上記の突撃時以外にもいくつかの致命的な弱点があった。
- 騎乗者がいないと暴走する
- 高所に位置するために、騎乗するものが狙われやすく、象使いが殺されると戦象は制御を失って暴走した。その為、戦象の周囲には護衛として軽装歩兵が配された。
- 大音響に弱い
- また、銃声や鉦のような大音響にも弱かった。ただし、これは訓練である程度克服することが可能だった。ムガル帝国では、火器の発する轟音に慣らすため、幼い頃から耳元で銃声を聞かせる訓練が施された。このため、ムガル軍では戦象に銃兵を乗せることも可能だったし、タイのように大砲を載せた例すらある。なお大音響の問題とそれに慣らす必要性は、軍馬など他の動物兵器にも共通して言える事である。
- 火を恐れ、悪臭が苦手
- さらに象は火も恐れ(これも他の動物にも言える)、嗅覚が敏感なために悪臭も苦手であったので、ローマ軍は豚に火をつけて戦場に放つ事で戦象に対処したこともあった。
こうした弱点をつかれ象の行動が制御できなくなると象使いは味方の被害を防ぐために急所を刺して象を殺した。そのため象の急所部分には予め大きな釘が取り付けられており、象使いがそれを鎚で叩く事により致命傷が与えられるように備えられていた。
- 足の付け根が弱点
- また、象の皮膚は一般に分厚いため原始的な矢や鉄砲などの飛び道具に強かったが、一方で足の付け根などの皮膚の柔らかい部分が弱点となることが多かった。そのため東南アジアなどでは象の足下に護衛用の兵を置くこともあった。他にも象に鎧を着せる場合もあったが、その場合は大抵ラメラーアーマーや鎖帷子だったので鎧の作成には大変な時間と労力がかかった。
- 調教と維持にコストがかかる
- また、象の調教・維持には多くの時間と金がかかるという欠点もあった。しかしながら象はかなり長命であったので、一旦調教すればその後は長きに渡って使用できるという利点もあった。
- ^ 井筒俊彦『コーラン(下)』岩波書店、1958年、355頁。ISBN 4-00-338133-5。
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