古代ギリシアの彫刻 偶像

古代ギリシアの彫刻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/18 07:20 UTC 版)

偶像

テネシー州パルテノン神殿 (ナッシュビル)にある、元の大きさの「アテーナー・パルテノス英語版」像の再現。

全ての古代ギリシア・ローマにおける神殿は通常、小広間(Cella)に偶像があった。小広間へ行くのは様々だったが、司祭とは別方向からで、少なくとも一般的崇拝者の一部は時おり小広間に行くことが可能だった。けれども神への犠牲は通常、神殿の境内の外側にある祭壇(ギリシャ語でTemenos)で行われた。偶像の中には見るのが簡単で、主要観光スポットと呼ばれたものもあった。像は通常だと神の立像で、元々は実物サイズよりも小さな形だったが、典型的にはおおむね実物大である。中には実物の何倍もの大きさで、大理石やブロンズで作られ、特に高名なクリセラファンティーネ英語版彫像は目に見える体の部分には象牙を使い、衣服や木製の枠組みの周囲にはを使用している(横の写真参照)。

最も有名なギリシアの偶像もこのタイプで、オリンピアのゼウス像ペイディアスが作ったアテネのパルテノン神殿のアテーナー・パルテノス像があるが、どちらの巨大な彫像も完全に失われてしまった。デルポイからは2つのクリセラファンティーネ像の断片が発掘された。一般に偶像は、識別できる象徴物を保持または身に付けており、これは神殿と他の場所における別の多くの彫像とを区別する方法の1つである。

アクロリス英語版は別の複合型で、こちらは木製の体を持つコスト節約型のものである。ゾアノン英語版は原始的かつ象徴的な木製の像で、恐らくヒンドゥー教リンガlingam)に匹敵する。これらの多くは古代より保管され、崇められていた。 ローマの大理石の複製品からよく知られているギリシア彫像の多くはもともと神殿の偶像だったもので、バルベリーニのアポローン英語版など一部の例は確実に識別されている。ごく僅かに実際のオリジナルが現存し、例えばブロンズ像でピレウスのアテーナー英語版(高さ2.35m、ヘルメット含む)がある。

ギリシア神話やローマ神話において、「パラディウム」は都市の安全に関わると言われていた非常に古代の像であり、特にオデュッセウスディオメーデーストロイ城塞から盗んだ木製の像については、後にアイネイアースによってローマに運ばれた(ローマの物語は、ウェルギリウスの『アエネーイス』や他の作品に関連が見られる)。


注釈

  1. ^ ギリシア彫刻で、頭や露出する手足部分を大理石で、胴など衣服の部分は他の材質(木材や革など)で作った彫像をアクロリス(acrolith)と言う。
  2. ^ 古代ギリシアの古代木製の偶像は、現在「ゾアノン(Xoanon)」という名称で呼ばれている。
  3. ^ ダイダロス様式とは、ギリシア彫刻史上の最古の様式で、硬直かつ量塊的な彫像を特徴とする[14]

出典

  1. ^ Cook, 19
  2. ^ Cook, 74-75
  3. ^ Cook, 74-76
  4. ^ Cook, 75-76
  5. ^ a b c d Brinkmann, Vinzenz (2008). “The Polychromy of Ancient Greek Sculpture”. In Panzanelli, Roberta; Schmidt, Eike D.; Lapatin, Kenneth. The Color of Life: Polychromy in Sculpture from Antiquity to the Present. Los Angeles, California: The J. Paul Getty Museum and the Getty Research Institute. pp. 18-39. ISBN 978-0-89-236-918-8. https://books.google.com/books?id=2gQesgryr8oC&printsec=frontcover&dq=ancient+Greek+sculptures+were+actually+brightly+painted&hl=en&sa=X&ved=0ahUKEwiZgcXvwYjbAhVK5YMKHW2XA20Q6AEIQjAF#v=onepage&q=ancient%20Greek%20sculptures%20were%20actually%20brightly%20painted&f=false 
  6. ^ a b c d True Colors: Archaeologist Vinzenz Brinkmann insists his eye-popping reproductions of ancient Greek sculptures are right on target”. Smithsonian.com. Smithsonian Institute (2008年7月). 2018年5月15日閲覧。
  7. ^ a b c Prisco, Jacopo (2017年11月30日). “'Gods in Color' returns antiquities to their original, colorful grandeur”. CNN style. Cable News Network (CNN). https://www.cnn.com/style/article/gods-in-color-ancient-world-polychromy/index.html 2018年5月15日閲覧。 
  8. ^ Museum admits 'scandal' of Elgin Marbles
  9. ^ Gurewitsch, Matthew (July 2008). “True Colors”. Smithsonian: 66?71. http://www.smithsonianmag.com/arts-culture/true-colors.html. 
  10. ^ October 2007, Colorizing classic statues returns them to antiquity: What was really on that Grecian Urn? Harvard University Gazette.
  11. ^ Brinkmann, Vinzenz (2008). “The Polychromy of Ancient Greek Sculpture”. In Panzanelli, Roberta; Schmidt, Eike D.; Lapatin, Kenneth. The Color of Life: Polychromy in Sculpture from Antiquity to the Present. Los Angeles, California: The J. Paul Getty Museum and the Getty Research Institute. pp. 18-39. ISBN 978-0-89-236-918-8. https://books.google.com/books?id=2gQesgryr8oC&pg=PA18 
  12. ^ The term xoanon and the ascriptions are both highly problematic. A.A. Donohue's Xoana and the origins of Greek sculpture, 1988, details how the term had a variety of meanings in the ancient world not necessarily to do with the cult objects
  13. ^ [1] Archived February 27, 2005, at the Wayback Machine.
  14. ^ ダイダロス様式とは」コトバンク、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説より
  15. ^ The debt of archaic Greek sculpture to Egyptian canons was recognized in Antiquity: see Diodorus Siculus, i.98.5-9.
  16. ^ Gagarin, 403
  17. ^ Stele, R. Web. 24 November 2013. <http://www.ancientgreece.com/s/Sculpture/>
  18. ^ Gazetteer of the Union Territory Goa, Daman and Diu: district gazetteer, Volume 1. panajim Goa: Gazetteer Dept., Govt. of the Union Territory of Goa, Daman and Diu, 1979. (1979). pp. (see page 70) 
  19. ^ (see Pius Melkandathil,Martitime activities of Goa and the Indian ocean.)
  20. ^ a b なぜ昔の彫像のペニスはあんなに小さいのか? - GIGAZINE”. gigazine.net (2016年5月11日). 2023年12月18日閲覧。
  21. ^ なぜギリシャ彫刻の男性像はペニスの大きさが「控えめ」なのか…その理由を英国の歴史学者が解説する 巨根を持つ人間は馬鹿だと思われていた”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2023年7月6日). 2023年12月18日閲覧。





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