劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者
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制作
本作はテレビシリーズの後日談となっているが、監督の水島精二によれば最初にプロデューサーや脚本担当の會川昇と本作の打ち合わせを行った際にはどのような形でも良かったという。その後、改めて本作についての打ち合わせが行われた際にはオーソドックスなアニメ映画を本作でする必要性がないと判断されたことから「番外編」が選択肢から外された。水島は「錬金術世界に科学者が存在する」という話はどうかと提案したものの、結局ありがちな番外編になってしまうのではという懸念もあり没となった。そして、その日の帰りがけに會川が水島に「ふたつの世界を股にかける話ならば、キャラクターも全部出てくるし、水島さんが言ってた科学と科学者と錬金術師の話もできるよね」と言ったことで水島も納得し、結果的には會川の案が本作の雛形として採用された[25]。
「兄弟の絆」がテーマだったテレビシリーズとは異なり、劇場版となる本作では「世界と自分とは無関係でいる事はできない」というテーマとなっている[9]。これについて水島は以下のように述べている。
今はテレビやインターネットなどで、日々のニュースや世の中の動きは常に見えているわけじゃないですが。それなのに、自分が日々生活している世界の出来事を他人事のように受け止めている。自分たちを取り巻いている身近な状況だけが世界で、その外の現実に対して、フィクションのような感じかたをしている気がするんです。それに対して、映画の中でみなさんの気持ちに伝わるようなメッセージを描きたかった。 — 水島精二[9]
「現実世界」の世界観は1920年代のドイツがナチス・ドイツへと向っていく時代背景が根底に存在するが、水島によれば第三者からみた「狂気」としてではなく、ドイツ人から見た「日常」として描いているという[9]。
會川はテレビシリーズや原作漫画しか読んでない人にも楽しんでもらいたいと考えており、なるべく「映画らしい映画」にしたかったと述べている[26]。例えば、冒頭でロマたちが「KELAS」を歌唱するシーンがあるが、これは本来必要性のないシーンであるものの「KELAS」からオープニングの「LINK」に繋がることで映画らしい気分が醸し出されるという[27]。
キャラクターデザインを担当する伊藤嘉之はデザインをする上で「錬金術世界」と「現実世界」で落差を付けることを意識しており、「錬金術世界」は漫画っぽさを出していたが、「現実世界」ではリアルな絵になるようにしているという[28][注 2]。色彩設計の中山しほ子も「錬金術世界」と「現実世界」で色の違いを出すことを意識しており、「現実世界」は「錬金術世界」よりも色の彩度を低く設定しているという[29]。
劇伴担当の大島ミチルは本作の持つ独特な世界観や匂いを視聴者に伝えたいと考え、民族楽器(マンドリンやブズーキなど)を取り入れた[30]。大島曰く、民族楽器には「哀愁や郷愁といった味わい深くて、まるで生きている『人の思い』のようなものが含まれている」とのこと[30]。
本作ではハイデリヒ、ノーア、エッカルトの3キャラクターにそれぞれ実力派俳優が声優として起用されている[9]。
- 小栗旬(アルフォンス・ハイデリヒ 役) - 本職の声優陣で適役が見つからない中で、水島はハイデリヒの実年齢に近い若手俳優の方が新鮮味があると考えた。そして小栗を偶然紹介してもらう機会を得たこともあり、水島は小栗にハイデリヒ役を依頼したことで起用に至った。なお、当初はアルフォンス・エルリック役の釘宮理恵による一人二役も選択肢として存在していた[31]。
- 沢井美優(ノーア 役) - ノーア役の適任者がなかなか決まらない中で製作スタッフの一人が沢井のファンだったことがきっかけで起用に至った[9]。
- かとうかずこ(デートリンデ・エッカルト 役) - エッカルトを「まだ若そうだが、年齢不詳な感じ」で描くことが決まった時に、脚本担当の會川昇がかとうの話を持ち出したことがきっかけで起用に至った[9]。
注釈
出典
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