ラ・カンパネラ 『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』

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ラ・カンパネラ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 13:25 UTC 版)

『パガニーニの「ラ・カンパネラ」の主題による華麗なる大幻想曲』

(Grande fantaisie de bravoure sur "La clochette" de Paganini, S. 420)

『パガニーニの「鐘」によるブラヴーラ風大幻想曲』とも呼ばれる。1831年から1832年にかけて作曲され、1834年に出版された。「ラ・カンパネラ」を扱った最初の作品である。ニコロ・パガニーニのヴァイオリンの演奏を聴き、大きな衝撃を受けたリストが「僕はピアノのパガニーニになる!」と決意し、自らの技術を磨き上げて作り上げたと伝えられる。

『パガニーニによる超絶技巧練習曲』第3番 変イ短調

(Études d'exécution transcendante d'apres Paganini, S. 140)

1838年に作曲された、全6曲からなるパガニーニによる超絶技巧練習曲の第3番。録音を行っているピアニストは、作曲から170年以上経っている現在においても僅か6名のみである。この版ではパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番第3楽章のロンドの主題(4分の4拍子)も用いており、後半はこの主題が中心になって変イ長調で終結する。なお、2014年8月に出版された『リスト/パガニーニ大練習曲集(原典版)』(全音楽譜出版社)では、巻末に本曲の初版が収録されているが、日本国内での出版はこれが初である。

『パガニーニの「ラ・カンパネラ」と「ヴェニスの謝肉祭」の主題による大幻想曲』

(Grande fantaisie (variations) sur des themes de Paganini: La clochette et le carnaval de Venise, S. 700i)

作曲は1845年で、改作版の『パガニーニの主題群による大幻想曲(Grande fantaisie (variations) sur des themes de Paganini)』S. 700ⅱが同年に作曲されている。どちらも演奏の機会は無いに等しく、レスリー・ハワードのリスト全集にのみ収録されている。1989年にムジカ・ブダペスト出版社(Editio Musica Budapest Zeneműkiadó)から初めて出版された[1]

『パガニーニの「ラ・カンパネラ」によるブラヴーラ風大幻想曲(以下S.420と表記する)』と同じくイ短調で始まり、「ラ・カンパネラ」の主題と「ヴェニスの謝肉祭」の主題が交代で現れる。「ラ・カンパネラ」の主題を扱った部分は、S.420と共通したものと新たに作曲された部分がともに含まれる[1]。リストはS.700a(未完)で「ヴェニスの謝肉祭」を単独で扱っている。

この作品は未完の作品であり、演奏する際は、出版社などの加筆よって完成された譜面を使うのが一般的である。以下の解説はムジカ・ブダペスト社の楽譜を参照にしたものである。

リストが残した自筆譜の29小節目では、第9音の後は楽譜が途切れて「etc.」と書かれており、空白が空いて30小節目に移っている。29小節目の前半はS.420の59小節目の始まりと一致しており、この部分について、リストはS.420の59〜67小節目を参考にしたと推測されている。ムジカ・ブダペスト社の楽譜では、29小節目から30小節目にかけて、S.420の該当部分を参考にした譜面が書かれており、一般的に、演奏する際もそのように演奏される。

また、リストのS.700iの自筆譜では、終盤(ムジカ・ブダペスト社の楽譜だと293〜319小節目)で譜面に取り消し線が引かれている。しかし、ムジカ・ブダペスト社の楽譜では注訳とともに取り消し線が引かれていた箇所も書かれており、演奏する際は、該当部分も演奏されるのが一般的である。

さらに、S.700iiの最終変奏(ムジカ・ブダペスト社の楽譜だと471小節目〜)では、変奏が始まった直後に譜面が途切れている。譜面が途切れている476小節目の始まりは、276〜284小節目と似た変奏であることを示唆しており、この作品を最初に出版したメズ・イムレ(Mező Imre) は、276〜284小節目を参考にし、最終変奏を書き足した。

コーダも譜面が途中で途切れており、空白になっている。この部分は一般的に、レスリー・ハワードによって作られた締め方が使われる。

『パガニーニによる大練習曲』第3番 嬰ト短調

(Grandes études de Paganini, S. 141)

1851年に作曲された、最も有名な版(パガニーニの原曲はこの年になって初めて出版されている)。『パガニーニによる超絶技巧練習曲』を改訂した『パガニーニによる大練習曲』の第3曲にあたり、異名同音の嬰ト短調で書かれている。今日「ラ・カンパネラ」として演奏されるほぼ全てがこの作品となる。

ラ・カンパネラの左手の跳躍の例。一気に約3オクターブも下がり、二音の鍵盤の距離は46cmに達する

リストは曲全体の構成を洗練し、ピアノの高音による鐘の音色を全面に押し出した。 全体として、器用さ、大きい跳躍における正確さ、弱い指の機敏さを鍛える練習曲として使うことができる。最大で15度の跳躍があり、この跳躍を16分音符で演奏した後に演奏者に手を移動する時間を与える休止がないまま2オクターブ上で同じ音符が演奏される。ほかにも薬指と小指のトリルなどの難しい技巧を含む。

A(嬰ト短調)-B(ロ長調)-A-B-A-B-A-コーダの簡単なロンド形式で書かれている。用いられる楽想はこれまでの「ラ・カンパネラ」やパガニーニの原曲と比較しても限定されているが、主題が登場する度に様々な装飾を加えることによって単調さを避けている。

冒頭

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  1. ^ a b Leslie Howard "The complete music for solo piano, Vol. 55" 解説書、pp. 9-10.
  2. ^ 福田弥『作曲家◎人と作品 リスト』p.185。音楽之友社、2005。


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