ラマヌジャンの合同式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 15:03 UTC 版)
分割のランク・クランク
1944年にフリーマン・ダイソンは分割のランク(rank)と呼ばれる量を導入し、5と7を法としたときのラマヌジャンの合同式の組合せ論的解釈に関する予想を提示した[11][12]。さらにダイソンは分割のクランク(crank)と呼ばれる量が存在することを予想し、11を法としたときについても組合せ論的解釈が可能であることを予言した。ダイソンが導入したランクは分割における最大の和因子から和因子の個数(分割の長さ)を引いた差で定義される。正の整数 n のランク m の分割の個数を N(m, n) と表し、t を法としたときにランクが m と合同な分割の個数を N(m, t, n) と表す[注 2]。ダイソンは
が成り立つこと予想した。この予想が成り立てば、明らかに p(5n+4) は5で割り切れ、p(7n+5) は7で割り切れることになる。このランクに関するダイソンの予想が正しいことは、オリバー・アトキンとピーター・スウィナートン-ダイアーによって、1954年に証明された[13]。また、ダイソンが予想した性質を持つクランクは、1988年にジョージ・アンドリュースとフランク・ガーバンによって発見された[14]。
注
- ^ ラマヌジャンは1919年の論文では母関数のやや異なる方法で証明している。同論文で、ラマヌジャンは証明とは別にこの2つの関係式に言明したが、この2つの式については完全な証明を示さなかった。詳細はG. H. Hardy (1940), Lecture VIを参照。
- ^
N(m, n) と N(m, t, n) は
出典
- ^ a b G. H. Hardy (1940), Lecture VI
- ^ a b Hei-chi Chan (2011), chapter 16-20
- ^ Robert Kanigel (1991)
- ^ a b c S. Ramanujan, Proc. Cambridge Philos. Soc. (1919)
- ^ S. Ramanujan, Mathematische Zeitschrift (1921)
- ^ G .H. Hardy and S. Ramanujan (1918), 論文中のマクマホンによる表
- ^ S. Ahlgren and M. Boylan, Invent. Math. (2003)
- ^ S. Cholwa, J. London Math. Soc. (1934)
- ^ a b G. N. Watson, J. Reine. Angew. Math. (1938)
- ^ A. O. L. Atkin, Glascow Math. J. (1967)
- ^ F. Dyson, Eureka (1944)
- ^ Hei-chi Chan (2011), chapter 14
- ^ A. O. L. Atkin and H. P. F. Swinnerton-Dyer, Proc. London Math. Soc.(1954)
- ^ G. Andrews and F. Garvan, Bull. Am. Math. Soc.(1988)
- 1 ラマヌジャンの合同式とは
- 2 ラマヌジャンの合同式の概要
- 3 母関数による証明
- 4 分割のランク・クランク
- 5 参考文献
- 6 外部リンク
- ラマヌジャンの合同式のページへのリンク