ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル 作品に対する後世の評価

ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 05:34 UTC 版)

作品に対する後世の評価

わいせつ性をめぐる司法上の判断

ドイツでは『ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル』はドイツ連邦青少年有害メディア審査会により青少年有害文書リストに登録されている。1978年にローヴォールト出版が、本の賛辞と俗語に関する注釈をつけて新訂版を発行したが、1982年に同書が有害指定されたため行政裁判所に提訴した。連邦行政裁判所が有害指定は合法であるとの判決を下すと、ローヴォールト出版は連邦憲法裁判所に提訴した。連邦憲法裁判所は1990年、いわゆる「ムッツェンバッヒェル判決 (BVerfGE 83,130)」により、審査会の決定はドイツ憲法第5条の芸術の自由に関する基本権についての審理を欠いているとして、これを無効とする判断を下した。

この判決を受け、審査会があらためて審理しなおした結果、『ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル』をふたたび青少年有害文書リストに登録した。ローヴォールト出版は再度提訴したが、ミュンスター高等行政裁判所は、『ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル』は児童ポルノであり、審査会の審議に対する不服を認めることはできず、決定に問題はないとする判断を示した。この判決に対し、ローヴォールト出版は連邦行政裁判所に上告したが、棄却された。その後2017年11月9日に、審査会は『ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル』を青少年有害文書リストから外した。

類本・続編

Meine 365 Liebhaber (1925年刊)の扉

『ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェル』にはのちに続編が2種類登場している。タイトルはそれぞれ、"Meine 365 Liebhaber" (私の365人の愛人)、および "Peperl Mutzenbacher - Tochter der Josefine Mutzenbacher" (ヨゼフィーネ・ムッツェンバッヒェルの娘ペーペルル・ムッツェンバッヒェル)であるが、どちらも作者は知られておらず、本編作者と同一、ないしはフェーリクス・ザルテンの手になることを示す証拠もない。なお、本編を「ドイツ語の官能小説で世界水準に達したおそらく唯一のもの」と評したオスヴァルト・ヴィーナー(Oswald Wiener)は、"Meine 365 Liebhaber" については「相当に質が落ちている」、"Peperl Mutzenbacher" は「(少なくとも文学好きにとっては)つまらない」とコメントしている[4]

このほか、ヘルムート・クヴァルティンガー(Helmut Qualtinger)の朗読によるオーディオCD "Fifi Mutzenbacher" (フィーフィ・ムッツェンバッヒェル)が知られている。作者とされるヴォルフガング・ベルトラント(Wolfgang Bertrand)はヴォルフガング・クドルノフスキー(Wolfgang Kudrnofsky)の変名である。

2000年には、オーストリアの作家・フランツォーベル(Franzobel)が、本編の登場人物と出来事を基に、舞台設定を現代に移した小説"Scala Santa, oder, Josefine Wurznbachers Höhepunkt" (聖階段 - ヨゼフィーネ・ヴルツンバッヒェルの絶頂)を書いている。

日本語訳

日本では、『ペピの体験』の題で、1977年富士見書房(富士見ロマン文庫)から日本語版(「作者不詳」、足利光彦訳)が出版された[1]。この文庫本のカバーイラストは、同文庫の多くの作品と同様金子國義が手がけている[2]

※この項目で紹介している本作品のあらすじ、登場人物名の表記等は、この日本語版に基づいている。

  1. ^ 「ムッツェンバッヒェル」は後述の日本語版(足利光彦訳)で用いられた表記で、他に原音に近い表記として「ムッツェンバッヘル」(舞台ドイツ語による)、「ムッツェンバッハー」等がある。
  2. ^ 日本語版の、訳者足利光彦による解説には、本作品の出版年は1908年とある。
  3. ^ 日本語版の解説では、作者と推定されている人物として、ザルテンの他にアルトゥル・シュニッツラーとする説も紹介されている。
  4. ^ Philipp Charwath『Wen ist anders - Ist Wien anders?』2012


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