ビュリダンのロバ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/01 14:49 UTC 版)
解説
この場合、ロバには、
- 右の道を進み干草を食べる
- 左の道を進み干草を食べる
- 立ち止まったままで餓死する
の3つの選択肢が考えられる。3つ目の選択肢は他者に比べて明らかに痛みが大きいはずであるが、最初の2つにはいわゆる「選択の壁」があり、その壁が餓死という痛みよりも大きかったため、ロバは3つ目を選んだと想定される。その意味で本件はこの「選択の壁」がいかに大きいか(時に「餓死」よりも大きい)を論ずるためのたとえ話であると想定される。「選択の壁」の正体としてはいろいろ考えられる所であるが、例えば以下の2つが挙げられる。
- 選択を誤ったという痛み
- 動物(時に人間。以下「人間」と記述)は、選択を行った場合、かなりの確率で「別の道が良かったのではないか」という、後悔・不安の念に駆られ、時にそれは大きな「痛み」となる。本件の場合、優劣を判定する因子が全くなかったのであるから、どちらかを選択した場合、このような痛みが生じる可能性が高いことが想定される。
- 選択する因子の不在
- 例えば、システムの場合、
- Aの場合⇒甲
- Bの場合⇒乙
- それ以外の場合⇒甲
- 等と、必ず”それ以外の場合”を設けるが、人間の場合、生物学的にそれが欠如していたり弱かったりする場合が多い。「いかなる場合でも、必ず選択の因子を探し出して選択せよ」という生きるための本能かもしれない。本件の場合、選択の因子を見つけられず、デッドロック状態に陥った、と想定される。この因子は何でも良い。例えば、えさ台の色が右の方が好き、とか、一般に「左」よりも「右」の方が好き、とかでも構わないが、それらが一切ない場合に起こりうるケースである。
- 例えば、システムの場合、
これらの壁を克服するために人間が編み出した方策としては、棒倒しや鉛筆ころがし等がある。「棒がこちらに倒れたから」とか「神のお告げがあったから」などにより、1の痛みを和らげ、2の因子を作り出し、いわゆる「餓死」を避けるための方策であるが、ロバにはこの様な方策を編み出す能力がないため、というたとえ話になっている、と想定される。
また、3つ目の選択肢には、最初の2つの選択肢と異なる点として「不作為」であることも特徴である。もし、仮に、3つ目の選択肢にも大きな壁があれば、ロバは最初の2つの選択肢のどちらかを選択する事もあっただろうが、「不作為」には大きな壁はなく選択しやすい、という特徴がある。
ただし、本件はあくまで「不作為」が餓死という大きな痛みを伴う場合のたとえ話であり、場合によっては、結果的に「不作為」が一番痛みの少ない場合も存在するので、注意が必要である。
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