テイルズ オブ アライズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/21 00:49 UTC 版)
ストーリー
自然あふれる豊かな大地に覆われた星・ダナは隣り合うもうひとつの星・レナのことを「死者が住まう地」として崇めていた。
300年前、ダナはレナから突然の侵攻を受ける。科学や魔法が発達したレナに対し、科学力はほとんどなく魔法も使えないダナは圧倒的な力の差で敗北し、ダナの人々はレナによる終わりなき隷属を強いられることになる。
ある日、ダナの青年・アルフェンは同族から追われるレナの少女・シオンと出会う。痛みを失ったダナの青年と他者に痛みをもたらすレナの少女の思いがけない邂逅は、ふたつの星の運命を揺るがす物語の始まりに過ぎなかった[6][7]。
システム
戦闘システム
従来のシリーズ作品と同様、アクション要素の高い戦闘システムとなっているが、本作では「リニアモーションバトルシステム(LMBS)」といった名称は使用されておらず、いくつかの要素を継承した新システムとなっている。
- AG(アーツゲージ)
- 術技を使用する際に消費されるゲージ。過去作のCC(チェイン・キャパ)を引き継いだシステムだが、通常攻撃では消費されず徐々にゲージが回復していくようになった他、回復手段が格段に増えた。
- CP(キュアポイント)
- 回復魔法やステータス上昇(バフ)系の魔法を使用する際に消費されるパーティ共通のポイント。規定量に足りないと回復魔法は使用不能になる。回復は宿や野営で休む他、オレンジグミなどのアイテムで回復できるが、本作では回復アイテムが高価格に設定されているため、任意での回復は難しい。非戦闘時はメニュー画面でCPを消費してパーティを回復できる他、マップ上の障害を取り除くマップアクション使用時にも消費される。
- ブーストアタック
- BG(ブーストゲージ)が最大まで貯まった状態で発動できるサポートアタック。敵を強制的にダウンさせてブレイク状態にしたり、特定の種族に対する特効や妨害効果を発揮できる。使用時には使用したキャラクターに関わらずAGが回復する。
- ボスキャラクターとの戦闘ではボスの特定の行動に対しても発動でき、専用演出と共にボスを弱体化させる。
- ブーストストライク
- 敵に表示される菱形のゲージを最大まで溜め、「STRIKE」の文字が表示されている間に入力すると発動する仲間同士の協力技。ザコ敵に対しては一撃必殺となり、ボスやギガントモンスターなどの強敵相手には大ダメージとなる。『TOV』のフェイタルストライクと『TOR』の秘奥義の複合といったシステムだが、これらとは違い敵を攻撃し続けるだけで発動できるため使用機会は大幅に増えている。
- ボスキャラクターに対するトドメにも必須となる。
- 回避
- 過去作のステップに代わる回避システム。ステップはライン移動での回避だったが、今作では360度スティックを倒した方向へ回避することができる。タイミングよく回避するとジャスト回避となる。
- カウンターレイド
- ジャスト回避やジャストガードが発動した際、すぐに攻撃ボタンを押すことで発動する反撃技。一瞬で敵の懐に飛び込み、攻撃を繰り出すことができる。さらに、この攻撃中は一定時間の無敵状態になる。
- オーバーリミッツ
- 秘奥義を使用するのに必要なシステム。今作ではOVLゲージは存在せず、ジャスト回避やダメージを受けた際に増加する内部カウンターが溜まると自動発動する『TOD2』に近いシステムになった。
その他
- スキルパネル
- 称号を獲得した際にオープンされるキャラクターの強化システム。ひとつのパネルに五つのスキルが用意されており、SP(スキルポイント)を消費して習得する。パネルのスキルを全て習得するとコンプリートボーナスでステータスが強化される。SPは戦闘に勝利した際やサブクエスト達成時に得られる。
- 野営
- フィールド上にあるキャンプ跡で宿屋と同じように休憩することができるようになった。野営時には宿屋で休んだ時と同様にHPとCPを回復し、料理を作れる他、スキットを見返したり休む前に会話して絆を深めることができる[8]。
- ファストトラベル
- 特定の地点に設定されているポイントまで瞬時に移動できるシステム。一度行った場所なら自由に移動できるようになるが、一部のイベント中など禁止される場合もある。
- セーブ
- 今作ではセーブポイントが廃止され、メニュー画面からいつでもセーブすることが可能になった。
開発
企画
企画は富澤が『テイルズ オブ』シリーズで初のプロデューサーを務めた2019年発売のHDリマスター版『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』より以前から進められていた[7]。
本作は「継承と進化」の両立を意識したゲーム作りを目指して企画された。これは、今後もブランドを継続していくにあたり、ユーザーも成長し、年代も変わっていくため、若い新規ユーザー層にも新たな『テイルズ オブ』シリーズに目を向けてもらう大きな窓口を作る必要があった。そのため、これまでの既定路線からあえて外すグラフィックやデザイン、アクションを設計している。しかし、『テイルズ オブ』シリーズの持つ根本的な魅力、継承されるべきポイントは踏まえたうえで開発が行われている[3][7]。
タイトル
タイトルは開発初期から使用されていた開発コードネーム『アライズ』より取られている。『テイルズ オブ』シリーズをこれからも継続していくために、開発に取り組む中で生まれた言葉であり、その後、数百もの案を世界中の開発・宣伝メンバーと検討した結果、新生していくという意志を伝えられるタイトルとして決定された。『アライズ』は作品のテーマにも紐づいており、抑圧された環境を覆すべく立ち上がる主人公たちの心情に『ARISE』の文字が重ねられている[3][7]。
また、『テイルズ オブ』シリーズでは、暗黙のルールとして略称に英単語の頭文字を取ってくるのが通例であった。しかし、このルールでは『テイルズ オブ アライズ』の略称は『TOA』となり、マザーシップタイトル[9]『テイルズ オブ ジ アビス』と被り区別がつけづらくなってしまう。だが、今後、タイトルを重ねていくたびに、アルファベットの残りを数えて潰していく作り方を避けるために『アライズ(ARISE)』というタイトルが選択された。また、他作品と区別を付けるために略称は『TOARISE』となった[3][7]。
グラフィック・デザイン
メインキャラクターデザインはバンダイナムコスタジオに所属する岩本が担当。加えて、アートディレクションも同時に担当している。そのため、キャラクターとフィールドを馴染ませるための調整も含めて、全体のビジュアルを管理している。メインキャラクターデザインとアートディレクションを同一人物が担当するのはマザーシップタイトルでは初となる。この試みは、世界観全体の統一性を取るために行われた。また、岩本は開発のバンダイナムコスタジオ所属のクリエイターであるため、常にゲームの中身を監修してアップデートができるという内部制作のメリットを生かせる点からも起用された[3][7]。
本作ではこれまでの『テイルズ オブ』シリーズで使用されていた専用エンジンではなく、空気感や光の表現などフォトリアルな表現が特徴の「Unreal Engine4(アンリアルエンジン4)」をベースに採用している。しかし、フォトリアルなグラフィックを目指しているのではなく、キャラクター表現に特化したシェーダーを独自で開発し、Unreal Engine4を使用しながらも『テイルズ オブ』らしいキャラクター表現を目指している[3][7]。
キャラクターモデルも従来のシリーズと比べて頭身が高くなっている。これは、これまでのシリーズ以上に没入感の高い体験を提供するため。水彩調で描かれるフィールドとキャラクターを馴染ませ、さらに、キャラクターの頭身を上げることで人間らしさをより強調している。また、モーションに関しても従来のゲームキャラクターらしい動きではなく、リアリティのあるモーションを取り入れている。そのため、キャラクターモデルだけでなく演技やアクションなども含めて、「キャラクターがこの世界で生きている」という感覚を提供できるような演出を取り入れている[7]。
キャラクターモデルの表情の変化やカメラワークなどのモーション・演技に関しては、3DCGによるテレビアニメや劇場アニメと同レベルのものを目指している。そのため、3Dのキャラクターモデルによる演技力や表現力は上がっているが、シリーズで採用されてきた従来のゲーム内2Dアニメーション(作画)は今回も採用しており、アニメーションスタジオufotableが制作する映像と併用しながら、双方でドラマがより盛り上がるよう設計している[3][7]。
デザインについては、海外市場も意識したテイストを入れることを意識した側面もあるが、『テイルズ オブ』シリーズらしいキャラクター性に基づいたデザインという点も考慮に入れながら、新しいキャラクターデザインの要素を取り入れている[7]。敵のデザインに関しては脅威感を強めており、倒し甲斐のある敵を倒すことで、より達成感を味わえるデザインとしている。また、敵デザインは基本的に世界観のトーンに沿ったデザインとなっているが、従来のシリーズと同じく可愛らしいデザインの敵も登場する[7]。
マップ・モーション
本作はオープンワールド形式ではなく、マップを踏破しながら、時折ダンジョンを踏破していく伝統的なRPGの作りを踏襲している[3]。
バトルモーションでは、新規ユーザーにも爽快感のあるバトルを体感してもらうことをテーマに、より直観的でスピード感のあるアクションを目指している。また、バトルではシリーズ従来のエンカウント形式を採用している[7]。
プロモーション
本作は、海外市場も意識して開発・プロモーションが行われている。これまでのシリーズでは宣伝の際に、日本の媒体で発表した後に海外にて1か月後遅れで発表することが多かった。しかし、富澤がプロデューサーを務めた『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』にて海外から大きな反響があったため、本作のプロモーション展開でも、海外向けの情報は海外で先行したり、日本向けの情報は日本先行で公開したりするなど、世界中でバランスをとりながら発表していく体制がとられている[3]。
ダウンロードコンテンツ
発売当初はダウンロードコンテンツ(DLC)を制作する予定はなく、本編のみで読後感の良いストーリーとなることを目標としていた。しかし、前日譚や後日談などを描ける余地は残されており、スタッフも漫画や小説などの別媒体で展開できればと考えていた。本編発売後にファンから多くの期待を寄せられたことで、ゲームとして後日談を制作することとなった。当初は短いボリュームとなる予定だったため、別タイトルではなくDLCとして制作が開始されたが、結果として当初の予定よりも大ボリュームな作品となった。プレイ時間は約20時間を想定している[5]。
戦闘時の掛け合いやスキットなどは新規のものが多数収録されている。また、BGMも30曲以上が新規に制作されている[5]。
- ^ 『2022 ゲーム産業白書』メディアクリエイト、2022年。ISBN 978-4909977199。
- ^ テイルズ オブ アライズ 【Official】/status/1519662830009856005 テイルズ オブ アライズ 【Official】のツイート(1519662830009856005)
- ^ a b c d e f g h i j k l m n "『テイルズ オブ アライズ』富澤祐介Pインタビュー。今、このブランドに必要なものとは?". 電撃オンライン. 10 July 2019. 2019年9月15日閲覧。
- ^ "『テイルズ オブ アライズ』9月9日発売決定&PS5、XSX/S版も発売。新キャラ、新PV、バトルシステムなどを公開!". ファミ通.com. 21 April 2021. 2021年4月22日閲覧。
- ^ a b c "『テイルズ オブ アライズ』大型DLC『ビヨンド ザ ドーン』について富澤Pにインタビュー。反響を受けてDLC制作を決意。新キャラクターのナザミルに迫る!". ファミ通.com. 20 September 2023. 2023年9月24日閲覧。
- ^ a b c "「テイルズ オブ アライズ」主人公&ヒロインの情報が公開。痛みを失った青年アルフェンを佐藤拓也さん,痛みをもたらす少女シオンを下地紫野さんが演じる". 4Gamer.net. 15 June 2019. 2019年9月15日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o "『Tales of ARISE (テイルズ オブ アライズ)』最速インタビュー。シリーズの継承と進化、ワケありな主人公とヒロインについて富澤Pに訊く【E3 2019】". 13 June 2019. 2019年9月15日閲覧。
- ^ 絆を深めることで、隠し奥義を解放することができる。隠し奥義は各キャラに一つずつ存在しており、アルフェンのみストーリー中で解放される。
- ^ a b 過去に使用されていたシリーズの分類名。テイルズ オブ シリーズ#ゲームタイトル一覧を参照。
- ^ a b “Tales of Arise for PC Reviews” (英語). www.metacritic.com. 2024年2月21日閲覧。
- ^ a b “Tales of Arise for PlayStation 4 Reviews” (英語). www.metacritic.com. 2024年2月21日閲覧。
- ^ a b “Tales of Arise for PlayStation 5 Reviews” (英語). www.metacritic.com. 2024年2月21日閲覧。
- ^ a b “Tales of Arise for Xbox Series X Reviews” (英語). www.metacritic.com. 2024年2月21日閲覧。
- ^ Allen, Jen (2021年9月16日). “'Tales of Arise' becomes fastest-selling game in the Tales franchise” (英語). NME. 2024年2月21日閲覧。
- ^ Yokoyama, Keiichi (2024年2月21日). “『テイルズ オブ アライズ』販売本数300万本突破。発売から約2年半でシリーズ最大級の売上に”. AUTOMATON. 2024年2月21日閲覧。
- ^ ""The Game Awards 2021"発表&受賞まとめ。『エルデンリング』新映像や『Among Us VR』などが発表。GOTYは『It Takes Two』に!". ファミ通.com. 9 December 2021. 2021年12月11日閲覧。
- ^ a b "『テイルズ オブ アライズ』主人公・アルフェンは佐藤拓也さん、ヒロイン・シオンは下地紫野さんが担当". 電撃オンライン. 15 June 2019. 2019年6月15日閲覧。
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