ダーツ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/21 15:24 UTC 版)
基本動作
ダーツは様々なゲームが存在するが大半のゲームでは基本動作は共通している。
プレイヤーは3本のダーツを持ってスロウイングラインに立ち、ダーツをボードに向かって投じる。ダーツを投じた後、ボードに刺さらなくても投げなおしはできない。ただし、スロウイングラインに立った後、スロウイングの流れの中で腕を伸ばした状態で投じたものについては投げたものとみなされるが、腕を伸ばした状態になる前に誤って落とした場合にはこれを拾って投げなおすことができる[9]。
3本のダーツを投げ終えた後、エレクトリックボードであればそのまま引き抜き、次のプレイヤーに交代する。この際、ボタンを押すなど、何らかの操作が必要な場合が多い。ブリッスルボードなど、自動計算機能がついていないボードであれば、自分の点をコールした後、ダーツを抜かなければならない。コールするのはプレイヤー自身であることが多いが、大会などでは公正を期すため、コールを行うコーラー(レフェリー)がつく場合もある。この場合、コーラーがコールするのを待ってダーツを引き抜き、交代する。この3本のダーツを投じることを1スロウという[10][注 2]。
1ゲームは数人で行うが、全員がダーツ3本を投じ終え、1巡した時点で1ラウンドが終了する。これを規定ラウンド数、またはゲームによっては終了条件を満たすまで繰り返し、最終的に最も早く(遅く)終了条件を満たしたプレイヤーまたは最も得点が多い(少ない)プレイヤーが勝利する。
ゲーム
ダーツでは以上の基本的な動きによって得点を獲得するが、どのように得点し、どのようにすれば勝利するのかということはゲームによって違う。ゲームによっては得点に条件がついている場合もあり、同じ動作をしながらまったく別の競技となる場合もある。また、スティール・ティップ・ダーツ、ソフトダーツでゲームは分けられてはいないが、エレクトリックボードの計算機能に頼ったゲームはスティール・ティップ・ダーツでは実質的に行えないことがある。
また、ダーツのゲームは数百にも上るとされており[11]、ここに挙げたゲームはあくまで一例である。
501ゲーム/01ゲーム
自分の持ち点を得点分だけ減らしていき、最も早く0点としたプレイヤーが勝利するという、最も基本的なゲーム。スティール・ティップ・ダーツの公式大会で行われるものでは501点を持ち点とすることから一般的には501ゲーム(ファイヴ・オウ・ワン・ゲーム)と言われる。他にも301点、ソフトダーツでは最も一般的な701点など、下二桁以外を自由に設定しゲームが行われているため、それぞれ個々を百桁以上を省略した略称として、またはこれらのゲームの総称として01ゲーム(オウワンゲーム、ゼロワン)とも呼ばれる。
ゲームはまず、投げる順番を決めるために、お互いにダーツを1本ずつ投げ、センターに近い人を先攻とする。これを「ミドル・フォー・ディドル(センターコーク)」と言う。以後、ラウンド(3投ずつ交互に投げる)を繰り返して持ち点を減らしていく。終了する際にはマイナスになってはならず、ちょうど0点とした時点で終わりとなる。減らしすぎてマイナスとなった場合にはバスト(Bust)といい、そのラウンドの得点は無効となってただちに相手プレイヤーと交代する。
また、Double In、Double Outというルールが存在している場合もある。Double Inとは最初の一投はダブルリング内に投じなければならず、これが投じられるまで得点がカウントされないルールである。またDouble Outとは、最後の一投、つまり0点にする一投はダブルリング内かインナーブルに投じなければならず、そうでなければ仮に0点となっても終了せずバストとなる。また残り点数が1点になった場合もDouble Outが不可能なためバストとなる。
スティール・ティップ・ダーツでは、Double Outは一般的であり、個人的な試合から世界大会までほぼ全てのトーナメントに採用されている一方、Double Inは必ず採用されているわけではないが、Double Inが採用されている最大のトーナメントのワールド・グランプリ(PDC開催)は別格であり、テレビ中継も行われており賞金も高い。
これに似たルールとしてMaster Outというルールも存在する。これは、終了時にはシングル以外でなければならないとするルールである。スティール・ティップ・ダーツで採用されることは、少なくとも公式トーナメントではなく、ソフトダーツ用のルールと考えて良い。現在、ソフトダーツの上級者やプロトーナメントの701ゲーム(Fat Bull)において一番採用されているアウトルールであるが、01ゲームが901や501で行われる場合もFat Bullが採用されていれば、多くの場合Double OutではなくMaster Outが採用されている。
当然、理論的にフィニッシュの方法はダブルアウトに比べてマスターアウトの方が増えるが、Master Outルールが採用されるときは、多くの場合Fat Bullルールで行われるため、できる限りBULL(広義)を用いた方が有利なので、実際に用いる組み合わせはMaster Outの方が少ない場合も多い[注 3]。
なお、先攻がゼロになったらその時点でそのゲームは終了であるから、後攻は不利ということになる。そのため後攻がゲームを取る事を、テニス同様に「ブレイク」と呼ぶ。
クリケット(Cricket)
特定の数字に先にどれだけダーツを入れたかで競う、いわゆる陣取りゲームである。チェイス(Chase)、ミッキーマウス(Mickey Mouse)という別名もある。
カウント・アップ(Count Up)
自分のスロウごとに得点を加算していき、8ラウンドの合計得点を競う最も単純なゲームである。1ゲームで24本投げるので、最高得点は1440点となる。
ラウンド・ザ・クロック(Round The Clock)
まず1から順番にダーツを入れていき、早く20にダーツを入れることを競うゲームである。ローテーション・ゲーム(Rotation Game)と呼ばれることもある。派生ルールとして、20のあとにブル、或いは数字を問わずダブル、トリプルと入れたあと、ブルに入れる場合もある。
スーパー・ラウンド・ザ・クロック(Super Round The Clock)という派生ルールも有り、これはダブルやトリプルに入った場合、単純にクリアではなく、2倍あるいは3倍した数字までクリアしたものとするジャンプアップルールが追加されている[注 4]。なお、2倍あるいは3倍した数字が20を超えてしまった場合にはパンク(Punk)となり、無効となるため、ラウンド・ザ・クロックよりも次のことを考えて狙う戦略性が必要となる。なお、これにおける最短は1のダブル、3のトリプル、10のダブルによる3投である。
ハーフ・イット(Half It)
40点を持ち点として、1ラウンドごとに指定されたエリアにダーツを入れた分を持ち点に加算していき、最終的な持ち点を競うゲームである。1スロウで1本も入らなかった場合には持ち点が半減させられる[注 5]。ダブル・ダウン(Double Down)と呼ばれることもある。
基本的にエリア指定はラウンドごとに15、16、ダブル、17、18、トリプル、19、20、ブルの順番に進んでいき、1本も入れられなかった場合も2〜3本入れた場合も1ラウンド1エリアで進行する点がラウンド・ザ・クロックとの大きな違いである。そのため、ゲームは必ず9ラウンドで終了する。
得点等に関する用語
- トン(Ton[tʌn])
- 正しい発音は、「タン」に近い。01ゲームやカウントアップなどの全ナンバーが加算対象になる得点制ゲームにおいて1ラウンドでの合計得点が、スティール・ティップ・ダーツでは、狭義で100点、広義で100点以上の場合を指す。狭義での使用時に100点を超える場合、超えた分をTonに続ける。例えば、160ならば、"Ton 60"となる。ソフトダーツでは、ほとんどの場合で後述のLow Tonを指している。
- トン・エイティー(Ton 80)
- 1ラウンドで20のトリプルに3本入れることを言う。理論上の最高得点であるため、他の得点とは扱われ方がラウンド様々な面で異なる。
- ハイ・トン(High Ton)
- 1ラウンドでの合計得点が151点以上の場合を指す。
- ロウ・トン(Low Ton)
- 1ラウンドでの合計得点が100点(ソフトダーツのみ101点からとする機種もある)以上~150点以下の場合を指す。
- ハット・トリック(Hat Trick)
- 1ラウンドでブルに3本入れる事を言う。スティール・ティップ・ダーツでは、インナーブルに限定する場合もある。
- スリー・イン・ザ・ブラック(Three In The Black)
- 1ラウンドでインナーブルに3本入れる事を言う。海外/スティール・ティップ・ダーツではこの呼称はあまり使われておらず、Hat TrickやBlack Hat、Alan Evans Shotなどの呼称が好まれている。
- スリー・イン・ナ・ベッド(Three In A Bed)
- 1ラウンドで同じ点数のトリプルかダブルに3本入れる事を言う。ただしソフトダーツでは、インナーブルに3本入れた場合スリー・イン・ザ・ブラックが優先される。
- ホワイト・ホース(White Horse)
- クリケットゲームにおいて、1ラウンドで20、19、18等、それぞれのゲームで得点となるエリアのトリプルに、1本ずつ入れることを言う。
- このアワードは01ゲームでは成立しない(トリプルに入れること自体がクリケットのルールで大きな意味を持つため)。また同じエリアに2本以上入った場合や、9マークにならなかった場合(1マーク以上入っていた状態からナンバーをクローズした場合)はアワードは成立しない。
- ハイ・フィニッシュ(High finish)
- 「ハイ・オフ」とも。01ゲームにおいて1スロウで高い得点を取得し、フィニッシュした場合を指す。90点以上、91点以上、100点以上、101点以上、またはその試合のフィニッシュにおいて最も高い点数など、明確な条件が存在する場合もある。
- シャンハイ(Shanghai)
- 1スロウで同じナンバーのシングル、ダブル、トリプルに1本ずつ入れることを言う[8]。
- 9ダート・フィニッシュ( Nine-dart finish)
- 「9ダーツ(nine-darter)」とも(ただし、通常英語においてnine dartsだけでは、パーフェクトゲームを意味しない)。Double Outの501ゲームにおいて、最短手順となる9投(3ラウンド)でゲームをフィニッシュさせるパーフェクトゲームを意味する。大規模な大会になると優勝賞金とは別に達成者に対する賞金が設定されていることが多い。
注釈
- ^ さらに、二重の円全体をBULL、内側の円のみをBULLSEYEと呼ぶ用法や、内側の円をBULLSEYEと呼びその周辺の部分をBULLと呼ぶ用法もある。
- ^ もっとも、1本のダーツを投じることを1スロウ、3本投じることを1ラウンドと解説される場合もある。
- ^ 例えば150をフィニッシュするとき、Double Outの場合、定石としてT20-T20-D15、T20-BULL-D20、T20-T18-D18、T19-T19-D18があげられる。Master Outの場合、勿論Double Outのように打っても良いが、BULL-BULL-BULLという方法のみが他に比べて圧倒的に難易度が低いため、実質的にプレイヤーはこの方法しか選択しない。
- ^ 例えば4のダブルに刺さった場合は、4×2となり、8までクリアしたものとされ、次のターゲットは9となる。
- ^ 持ち点が奇数であった場合は切り上げとなり、1を足した上で半減させる。
出典
- ^ “JSFD[ダーツボード]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
- ^ “JSFD[バレル]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
- ^ a b c 村松治樹 『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、106頁。
- ^ “JSFD[フライト]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
- ^ a b 村松治樹 『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、108頁。
- ^ a b 村松治樹 『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、12頁。
- ^ a b 村松治樹 『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、14頁。
- ^ a b 村松治樹 『勝つ! ダーツ 最強のテクニックBOOK』2015年、107頁。
- ^ “JSFD[少し特殊なケース]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
- ^ “JSFD[基礎知識]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。[リンク切れ]
- ^ “JSFD[各ゲームについて]”. JSFD. 2009年9月6日閲覧。
- ^ PDC World ChampionshipDarts Database
- ^ PDC World Japan Qualifying EventDarts Database
- ^ PDC World Cup of DartsDarts Database
- ^ Betfair World Cup of Darts - Quarter-Finals (2013)Professional Darts Corporation
- ^ http://jsfd.or.jp/?page_id=101
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