ジョーカー (映画) 製作

ジョーカー (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/03 03:33 UTC 版)

製作

背景

監督を務めたトッド・フィリップスは本作がアメリカの社会格差を風刺する作品として話題を集めたのを認めつつ、映画の超目標はあくまでもアーサー・フレックという個人がいかにしてジョーカーという悪役へ変遷するかを描く人物研究めいた作品であるとコメントしている。この構想を立てたフィリップスはスコット・シルヴァーと共におよそ1年をかけて脚本を執筆した。脚本は「タクシードライバー」「キング・オブ・コメディ」などマーティン・スコセッシ監督・ロバート・デ・ニーロ主演の作品群に影響を受け、原作コミックから大きく逸脱する内容に完成したが、配給のワーナー・ブラザースは特別な指摘を示さなかった。作品の舞台は原作コミックに共通するゴッサム・シティであり、時代背景は70年代から80年代を彷彿とさせる様相を見せているが明確な定義づけはなされず、フィリップス、マーク・フリードバーグ、エドウィン・リベラらによって1981年のニューヨークをモチーフに創造された架空の都市である[13]

キャスティング

ジョーカーことアーサー・フレックには個性派俳優として知られるホアキン・フェニックスがキャスティングされた。当初はスコセッシが監督し、彼の盟友であるレオナルド・ディカプリオがキャスティングされる構想もあったが、実際にメガホンを取ったフィリップスは脚本の執筆段階からフェニックスを意識してジョーカーのイメージを手がけ、彼以外起用は考えられないとコメントしている[14]。ジョーカーに次いで重要な役どころとなるマレー・フランクリンにはロバート・デ・ニーロが起用された。トーマス・ウェイン役にはドナルド・トランプの物真似で有名なアレック・ボールドウィンが検討されたが、最終的にブレット・カレンに決まった。

新たなジョーカーの創造

本作の主人公であるジョーカーDCコミックスアメリカンコミックバットマン」に登場するスーパーヴィランで、主人公のバットマンブルース・ウェイン)の対極に位置づけられる最悪の悪役として、ビル・フィンガー、ボブ・ケイン、ジェリー・ロビンソンによって創造された。彼に関する明確なオリジンは確立されておらず、またジョーカー自身が狂人であるため語る度に変化していると設定されている。最も有名なエピソードとして「元々は売れないコメディアンで、強盗を犯したところをバットマンから逃げる途中に化学薬品の溶液に落下し、白い肌、赤い唇、緑の髪、常に笑みをたたえる裂けた口の姿に変貌した」がパブリックイメージとして浸透している。本作ではこのオリジンないし、原作コミックや他のメディアミックス作品などとの関連性は撤廃され、一部を踏襲しながらも、脚本を手がけたトッド・フィリップススコット・シルヴァーによって、ゴッサム・シティで母と暮らす「アーサー・フレック」というまったく新たなオリジンが定義されたが、同時に本作のジョーカーを「信用できない語り部」とする事で、このオリジンが真実であるかどうかは全くの不明というコミックの設定も踏襲している。

ジョーカーの姿は原作コミックや映像作品が有する「白い肌」「緑の髪」「赤く笑ったように裂けた唇」といった特徴が本作の彼にも踏襲されているが、先述のオリジンでは意図せず発現したこれらはすべて、コメディアンを志すジョーカーことアーサーが自ら手がけたメイクとして描かれている。衣装は原作やこれまで幾多の俳優が演じたジョーカーのスーツ姿が踏襲されたが、カラーリングは一新され、赤系統色のジャケットが特徴的なファッションが定着した。ジョーカーを演じるにあたってフェニックスは撮影開始3ヶ月前には80kg以上あった体重を「1日をりんご1個と少量の野菜のみで過ごす」過酷な食量制限によって58kgまで減量した[15]

撮影

2018年9月より、ニューヨーク市内で撮影がスタートした[16]。ロケ地となったのはブルックリンチャーチ・アベニュー駅ブロンクスベッドフォード・パーク・ブールバード駅。ブルックリンの9番街駅の廃プラットホームでは暴力シーンの撮影も行われた。クイーンズのアストリアにあるファースト・セントラル・セービングス・バンクなどである。ニュージャージー州ジャージーシティでも撮影が行われ、ニューアーク・アベニューが一時閉鎖されてのロケが行われた。10月にはニューアーク、11月には郡道501号での撮影が行われた[17][18]

公開

当初、日本での公開は11月の予定だったが、後に10月4日に日米同時公開に変更となった[3]。日本でのキャッチコピーは「本当の悪は笑顔の中にある」[19]


  1. ^ Hildur Gudnadottir to Score Todd Phillips’ ‘Joker’ Origin Movie”. Film Music Reporter. 2018年9月20日閲覧。
  2. ^ McClintock, Pamela; Kit, Borys (2018年6月18日). “'Joker' Origin Movie Lands Fall 2019 Release Date”. The Hollywood Reporter. https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/joker-origin-pic-lands-fall-2019-release-date-1128203 2018年7月18日閲覧。 
  3. ^ a b “俺の人生は悲劇? いや、喜劇だ「ジョーカー」日米同時公開! ポスター&特報も披露”. 映画.com. (2019年5月10日). https://eiga.com/news/20190510/3/ 2019年5月10日閲覧。 
  4. ^ “DC新作『ジョーカー』10.4日米同時公開!”. シネマトゥデイ. (2019年5月10日). https://www.cinematoday.jp/news/N0108541 2019年5月10日閲覧。 
  5. ^ Kit, Borys (2018年6月13日). “Warner Bros. Shifts DC Strategy Amid Executive Change-Up” (英語). The Hollywood Reporter. https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/joker-batman-suicide-squad-movie-plans-making-sense-dcs-moves-1119489 2018年6月15日閲覧。 
  6. ^ 2019年後半の成功作・失敗作”. シネマトゥデイ. 2020年6月4日閲覧。
  7. ^ Joker (2019)” (英語). Box Office Mojo. 2020年1月31日閲覧。
  8. ^ Joker (2019)” (英語). Box Office Mojo. 2020年1月31日閲覧。
  9. ^ 2019年 (令和元年) 全国映画概況” (PDF). 日本映画製作者連盟. 2020年1月31日閲覧。
  10. ^ 狂気の連続!DC新作『ジョーカー』予告編&ポスター公開”. シネマトゥデイ (2019年8月29日). 2020年2月1日閲覧。
  11. ^ a b c d “『ジョーカー』来年1月ソフト発売!日本語吹替版は平田広明がアーサー役”. シネマトゥデイ. (2019年12月6日). https://www.cinematoday.jp/news/N0112792 2019年12月6日閲覧。 
  12. ^ a b c d e f g h i j k l “ジョーカー”. ふきカエル大作戦!!. (2019年12月23日). https://www.fukikaeru.com/?p=13026 2019年12月23日閲覧。 
  13. ^ Jr, Mike Fleming (2017年8月22日). “The Joker Origin Story On Deck: Todd Phillips, Scott Silver, Martin Scorsese Aboard WB/DC Film”. Deadline. https://deadline.com/2017/08/the-joker-origin-movie-todd-phillips-martin-scorsese-scott-silver-batman-dc-universe-1202154053/ 2017年8月23日閲覧。 
  14. ^ Masters, Kim; Kit, Borys (2017年9月1日). “The Joker Movie: Warner Bros. Wants Class, Cachet and Maybe Leonardo DiCaprio” (英語). The Hollywood Reporter. https://www.hollywoodreporter.com/heat-vision/leonardo-dicaprio-joker-movie-warner-bros-wants-actor-role-1034392 2017年9月5日閲覧。 
  15. ^ “「脚本通りに撮るだけでは、生きた『ジョーカー』はできなかった」ホアキン・フェニックス ロングインタビュー【前編】”. Movie Walker (MOVIE WALKER). (2019年10月5日). https://moviewalker.jp/news/article/207579/ 2020年2月26日閲覧。 
  16. ^ D'Alessandro, Anthony (2018年8月27日). “Alec Baldwin Joins Todd Phillips’ ‘Joker’”. Deadline. https://deadline.com/2018/08/joker-movie-todd-phillips-alec-baldwin-thomas-wayne-batman-father-1202452962/ 2018年8月28日閲覧。 
  17. ^ McNary, Dave (2018年10月10日). “'Joker' Movie Extras Reportedly Denied Break, Locked in Subway Cars”. Variety. 2018年10月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月23日閲覧。
  18. ^ MacDonald, Terrence T. (2018年9月21日). “'Joker,' Joaquin Phoenix film about Batman nemesis, to film in N.J. locations”. NJ.com. 2018年9月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年9月21日閲覧。
  19. ^ 狂気の連続!DC新作『ジョーカー』予告編&ポスター公開”. シネマトゥデイ (2019年8月29日). 2020年2月1日閲覧。
  20. ^ Weekend Box Office Results for October 4-6, 2019” (英語). Box Office Mojo. 2019年10月13日閲覧。
  21. ^ a b 『ジョーカー』1月9日に劇場公開終了へ ─ 国内興収50億円突破、世界ランキング第3位に”. THE RIVER (2019年12月17日). 2019年12月18日閲覧。
  22. ^ “「ジョーカー」の興行成績、R指定作品として歴代1位に”. CNN.co.jp. (2019年10月28日). https://www.cnn.co.jp/showbiz/35144496.html 2020年7月10日閲覧。 
  23. ^ “【国内映画ランキング】「ジョーカー」大ヒットスタートで首位”. 映画.com. (2019年10月8日). https://eiga.com/news/20191008/8/ 2019年10月8日閲覧。 
  24. ^ “『ジョーカー』1位スタート!ハイロー新作は3位!”. シネマトゥデイ. (2019年10月7日). https://www.cinematoday.jp/news/N0111575 2019年10月7日閲覧。 
  25. ^ “『ジョーカー』が1位を獲得!『HiGH&LOW 〜』が3位、『蜜蜂と遠雷』が4位、『ジョン・ウィック〜』が5位に初登場(10月5日-10月6日)”. CINEMAランキング通信. (2019年10月7日). http://www.kogyotsushin.com/archives/topics/t8/201910/07172747.php 2019年10月7日閲覧。 
  26. ^ 『ジョーカー』快進撃、国内興収10億円を5日間で突破 ─ 米国でも連日記録更新中、監督も感謝のコメント、THE RIVER (2019年10月10日) 2019年10月13日閲覧。
  27. ^ Joker (2019)” (英語). Rotten Tomatoes. 2019年11月4日閲覧。
  28. ^ Joker Reviews” (英語). Metacritic. 2019年10月16日閲覧。
  29. ^ “放送映画批評家協会賞映画部門は「アイリッシュマン」が最多14ノミネート”. エイガドットコム (eiga.com). (2019年12月11日). https://eiga.com/news/20191211/14/ 2020年2月3日閲覧。 
  30. ^ “放送映画批評家協会賞作品賞は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」”. エイガドットコム (eiga.com). (2020年1月13日). https://eiga.com/news/20200113/7/ 2020年2月3日閲覧。 





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