カールハインツ・シュトックハウゼン
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作品の演奏
作品に関った演奏家
1950年代から60年代にかけてのシュトックハウゼンの作品は、ピエール・ブーレーズやブルーノ・マデルナ、ハンス・ロスバウトといった指揮者によって指揮され、自身もオーケストラを伴う「カレ」や「祈り」を指揮している[33][34]。そのほか、コンタルスキー兄弟、ディヴィッド・チューダーといったピアニスト、打楽器奏者のクリストフ・カスケルらの演奏家が、シュトックハウゼンの作品に関った[35][36][37]。
シュトックハウゼン・グループ
1960年代にシュトックハウゼンが結成したアンサンブルには、ピアノのアロイス・コンタルスキーやヴィオラのヨハネス・フリッチュ、そのほか、ハラルド・ボイエやロルフ・ゲールハール、アルフレート・アーリングスといった演奏者が参加している[37]。彼らはシュトックハウゼン・グループと呼ばれ、彼らによって「プロツェッシオーン」や「クルツヴェレン」、ソリストを伴う「ヒュムネン」、「7つの日より」などが演奏された[37]。短波ラジオを伴う独奏者のための「シュピラール」の世界初演は、ハインツ・ホリガーのオーボエによって行われた[38]。
「光」制作の関係者
1970年代以降、特に「光」以降の作品は、クラリネット奏者のスザンヌ・スティーブンス、フルート奏者のカティンカ・パスフェーア、長男でトランペット奏者のマルクス・シュトックハウゼン、次男でシンセサイザー奏者のジーモン・シュトックハウゼンや娘のピアニスト、マイエラ・シュトックハウゼンらの協力のもと作曲が進められた[39]。鍵盤楽器の演奏には、ガウデアムス現代音楽演奏コンクールでシュトックハウゼンのスカウトを受けたハラルド・ボイエーが参加している[40]。このほか、トロンボーンのマイケル・スボヴォータも、「光から月曜日」でトロンボーンパートを担当している[41]。また、マウリツィオ・ポリーニは1970年代から初期のピアノ曲を手がけ、自身が審査員を務める「ウンベルト・ミケーリ記念ピアノ演奏コンクール」のために「ピアノ曲XVI」を委嘱した[42]。
演奏と録音
シュトックハウゼンはほとんどの作品において音をマイクを使って増幅することが指定されており、演奏される音響は「サウンド・プロジェクショニスト」と呼ばれる音響技師によって管理され、音色と音量のバランスが整えられる[43]。また、自らの出版社「シュトックハウゼン出版社」から自身の監修によるCD作品集を出版し、自作の正統な解釈、演奏法を録音の形で残そうと努めていた[44]。シュトックハウゼン没後は監修方針がやや変わり、生前に認めなかった録音もCD化された。
著作と出版
シュトックハウゼンは7年おきに、自身の音楽論「Texte zur Musik」をDuMont社から出版し、1990年代以降はシュトックハウゼン出版社に移行したが、音楽について書くという行為は、没年の11月までやめなかった。2014年に全17巻の音楽論が完結し、公式サイトから入手が可能となっている[45]。
なお、第1巻のみ日本語訳が出版されている。日本語訳を行った清水穣はExMusica上の書評で、「なぜモメンテの楽譜だけが一向に出版されないか、多分それが失敗作であることを、彼がどこかで分かっているからである」[46]と述べたが、彼の予想は外れ、オリジナルヴァージョンとヨーロッパヴァージョンが別々に丁重な装丁で生前に出版された。
また同年より、自身の作品を収録させたCDを自費出版を始め、これらは「シュトックハウゼン全集」として、2018年時点で106巻まで発表されている[44]。また講義録やリハーサルもCD化されている。
注釈
- ^ 「光」の7作はそれぞれ1週間の各曜日を冠した作品名からなるが、制作順は必ずしも月曜、火曜、水曜...といった1週間の曜日順で制作されたわけではなく、「光から火曜日から制作が始まり、各曜日がそれぞれバラバラの年代で制作され、最終的に光から水曜日が2003年に完成し、7作全てが完成した[10]。ちなみに光から日曜日も、水曜日が完成した同年の2003年に完成している[11]。
- ^ 長木誠司によると「1980年代半ばのドイツでのシュトックハウゼンの文献をあさりますと、「現代のワーグナーみたいで非常に誇大妄想的だ」という人はドイツにもいて、それが日本には倍増されて伝わってくるような、さらに言うなら、日本ではそういう妄想の部分が広がるような感じ」だという(『ベルク年報』第13号所収のシンポジウム「シュトックハウゼン再考〜1周忌を前に」より)。
- ^ 「シリウス」に関して、近藤譲は「犬の星の垂訓」(『音楽の種子』朝日出版社、1983年所収)と題する文章を執筆し、主に演出面に対し批判を加えている。「歴年」に関しては、委嘱者の木戸敏郎によると、初演後の音楽家批評は「すべて悪評ばかり」で「この作品をトータルセリエリズムの理論で分析し、その是非を論じた解説は皆無」であり、さらに、木戸が少しでもこの作品を擁護する記事を書こうとすると、編集者から削除を要求されたという(『ベルク年報』第13号所収「一九七七年 東京で」を参照)。彼の作品や音楽理論の受容が停滞するようになる長木誠司は「音楽雑誌を引きますと、大体1970年代の前半までは、シュトックハウゼンという名前がたくさん出てくるのですが、その後の10年間はほぼ皆無なのです」と述べている(『ベルク年報』第13号所収のシンポジウム「シュトックハウゼン再考〜1周忌を前に」より)。
- ^ 清水穣は、「シュトックハウゼンを追悼する文には毀誉褒貶に一定の型があり、それはよく知らないことを語るとき人が見せる恥ずかしい症候である。そのいちいちを挙げつらう趣味はないが、初期作品を誉めるにせよ連作《光》以降を貶すにせよ批評家の何パーセントが、ヘリコプターや9.11をめぐるゴシップではなく、マルチチャンネルの優れた演奏でシュトックハウゼンの音楽自体を聴き、複数のセリーやフォルメルで柔軟に織り上げられたスコアを見たことがあるのだろう」(『音楽の友』2008年2月号所収「NACH・KLANG―シュトックハウゼン追悼」より)、「60年代までの『理知主義的』作品は評価するが、70年代以降、ことに77年《光》以降の『神秘主義的』で『誇大妄想的』な後期作品を否定するという二分法は、シュトックハウゼンをめぐる鄙びた言説の一つである。追悼文の多くがいまだにこういう二分法に拠っているのを見ると、この国の音楽批評においては時が止まっているかのようで、自ずと『評価』のレベルも知られる」(『Inter communication』64、2008年所収「セリー、フォルメル、メディア」より)と述べている。
- ^ 彼のオペラ「光」に登場する悪魔。
出典
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- ^ 公式サイトのプレスリリース (英文)
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- ^ a b c d 松平 2019, p. 12.
- ^ a b c d 松平 2019, p. 16.
- ^ 清水穣「パリのシュトックハウゼン 1952.1.16〜1953.3.27」(『ベルク年報』第13号所収)参照。
- ^ シュトックハウゼン 1999, p. 64-80.
- ^ 沼野 2021, p. 153.
- ^ 松平 2019, p. 15.
- ^ 沼野 2021, p. 161.
- ^ 『ラルース世界音楽事典』(福武書店、1989年)、「シュティムング」の項目を参照。
- ^ 松平 2019, p. 17-18.
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- ^ 松平 2019, p. 145-163.
- ^ 松平 2019, p. 168-170.
- ^ Texte zur Musik Vol.15参照
- ^ 松平 2019, p. 66,90,97.
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- ^ Stockhausen Edition no.80, Version 1998
- ^ 松平 2019, p. 294.
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- ^ “Stockhausen | Books”. www.stockhausen-verlag.net. 2021年7月9日閲覧。
- ^ 『ExMusica』プレ創刊号、180頁。
- ^ 松平敬「シュトックハウゼン《宇宙の脈動》について」『ベルク年報』第13号所収より。
- ^ 清水穣「NACH・KLANG―シュトックハウゼン追悼」『音楽の友』2008年2月号。
- ^ 松平敬「シュトックハウゼン来日公演レポート」
- ^ 松平敬「シュトックハウゼン講習会2001レポート」
- ^ メッツマッハー『新しい音を恐れるな』小山田豊・訳、春秋社、2010年、144ページ。
- ^ “巨星シュトックハウゼンを知る(上)”. 2021年7月9日閲覧。
- ^ Stockhausen and the Beatles
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- ^ Ars Electronica 2017.
- ^ Deutscher Musikeditionspreis 2004–2007.
- ^ Deutscher Musikeditionspreis 2009.
- ^ Bäumer 2008.
- ^ Freckmann 2014.
- ^ Zamboni 2020.
- ^ Landschoof 2010.
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